BHA、競馬界のいじめと性的嫌がらせへの取組みを誓う(イギリス)【開催・運営】
BHA(英国競馬統括機構)のセーフガーディング部門が2018年以降に通報を受けて調査した350件以上の事件のうちほぼ半数が"性的嫌がらせ"か"いじめ"に関するものであったことが、12月13日(水)に判明した。
BHAのジョー・ソーマレズ-スミス会長とCEOのジュリー・ハリントン氏は競馬界を代表して謝罪した。そしてハリントン氏は、「いじめや性的嫌がらせ、場合によってはひどい性的虐待に関する話を聞き、本当に申し訳なく思っています。このようなことは英国競馬界でも、より広い社会においても、あってはならないことなのです。私たちは是正する決意を固めています」と述べた。
これは、BHAがセーフガーディングと人間の福祉に関する最新戦略を発表したさいのコメントである。またこれと同時に、ダラム大学のエレノア・ボーデン博士が競馬界の女性軽視に関する博士論文を発表した。
通報された350件以上の事件のうち、いじめが22%、性的嫌がらせが26%だった。性的嫌がらせに関する事件や申立てのうち、性的暴力・暴行・暴行未遂が41%だった。BHAはまた、このうち14件の事件に免許保持者が関わっており、彼らへの暫定的な業務停止処分は、犯罪捜査やセーフガーディング委員会の調査の結果が出るのを待っている状況であることを明らかにした。
ハリントン氏はこう語った。「英国競馬界の文化の多くの部分、とりわけ人々が互いに守り合い、支え合い、気を配り合うことを、たいへん誇りに思っています。競馬界で働くすべての人が威厳と尊敬をもって扱われ、全員が最高の行動規範を保ち続けることが不可欠です」。
「しかし、本日発表されたBHAのセーフガーディング・チームとエレノア・ボーデン博士の競馬界の女性の経験に関する調査から得られたエビデンスは、常にそのような行動規範が保たれていたわけではないことを示しています」。
「私たちはこのことを本当に申し訳なく思っており、これを是正する決意です」。
BHAは2018年、マット・マンシーニ氏のもとで初めてセーフガーディング・ユニットを設置した。12月13日(水)に発表された最新戦略は、このユニットが収集したデータのほか、ロビー・ダン騎手のブライオニー・フロスト騎手に対するいじめや2021年のセーフガーディングルール違反6件によるジョニー・ファレリー調教師の競馬界からの追放など世間の耳目を集めた案件に関する情報に基づいている。
最新戦略の中には次が含まれる。(1)雇用主と雇用者の双方に対するセーフガーディングや福祉教育の強化、(2)性的虐待や性的嫌がらせに関する特別研修の実施、(3)通報ラインの簡素化、(4)性的嫌がらせとは何かについて理解を深めるための意識向上キャンペーン。
ハリントン氏はこう続けた。「英国競馬界の多くの人々はいじめや性的嫌がらせ、そのほかの差別行為を意識することはないでしょう。しかし、それが存在していないということを意味するわけではありません。BHAはこれからセーフガーディング戦略の実施を主導していきますが、競馬産業全体の仲間とともに取り組んでいく所存です」。
「競馬産業の成功は従事する人々の健康と幸福によって決まります。それゆえ、評価や能力の高い働き手を惹きつけ、そして大事なことですが、彼らを業界に引きとめ育てていきたいのであれば、いじめやセクハラのような問題に正面から立ち向かわなければなりません。英国競馬界の長期的な繁栄にとってきわめて重要なことなのです」。
BHAは、"新たなリスクと傾向"にうまく対応するためにデータと研究を活用すると述べてきた。そして深刻な性的嫌がらせの通報件数は急増していることを認めた。
公正確保・規制担当理事であるティム・ネイラー氏はこう述べた。「通報件数は年々増加しています。それは避けられないことであり、ある意味、私たちが通報できるという意識を高めているという点で良い兆候だと言えるでしょう」。
「2023年以降においては、より複雑で深刻な性的暴力や性的暴行の増加が見られます。この種類の事件に関する通報の3分の1は2023年以降に寄せられています」。
ハリントン氏は、警察も2023年における社会全体での深刻な性犯罪に関する通報が同様に増加しているのを把握していることを指摘した。一方、ネイラー氏は競馬界で従事する人々のBHAのセーフガーディング体制の改善に対する意識が高まり信頼度が増す中で、通報件数はさらに急増するだろうと語った。
ネイラー氏はこう語った。「通報件数は増加するでしょうし、そうなることを期待しています。2018年にセーフガーディング方針を初めて発表したとき、通報が増加するのを目の当たりにしました」。
「ロビー・ダン騎手が起こしたような事件の後や、行動規範を実施した後にも、増加傾向が見られました。だから私としましてはこの最初の段階では、悲しいかな、対処することになる事件が増加することを願っているのです。なぜなら、それは人々がより気軽にかつ安全にBHAに心配事を伝えられると感じていることを示しているからです」。
競馬財団(Racing Foundation)により一部助成されているボーデン博士の研究論文のタイトルは、「競馬産業におけるジェンダー・教育・仕事(Gender, Education and Work in the Horseracing Industry)」である。この論文は業界で女性が活躍するにあたり障害になっていることに関して、いくつかの重要なテーマを特定している。
ボーデン博士は2015年~2020年に競馬界で活躍した女性たちの実体験にもとづく研究を行い、インタビューに応じてくれた多くの人々がセクハラの被害に遭ったり目撃したりしていることに気づいた。そして競馬界の多くの労働現場にはびこる文化がさまざまな"不適切な性的行動"を常態化させていることを発見した。
またこの調査は、競馬界でうまくやっていくためにはそこの全体的な文化に"合わせるふりをしなければならない"というプレッシャーを感じている女性がいることも浮き彫りにしている。そして、競馬界のある種のアイデンティティに適合できない(あるいは適合しようとしない)女性たちは虐待を受ける可能性があり、最終的には適合するのは無理だと感じて競馬界を去る可能性があることも強調されている。
ボーデン博士はBHAの最新戦略に含まれる追加措置を歓迎した。「研究論文でこれらのテーマが浮かび上がってきて以来、競馬界と緊密に取り組んできました。それにより、競馬界は堅実な行動計画を策定して合意に漕ぎつくことができました。私たちはすでにこの行動計画を実行に移し始めていますが、今日発表された最新戦略に応じて加速していくでしょう」。
「一言でいえば、歓迎すべき進展です。当たり前とされている文化とそれにまつわる行動に優先的に向き合う必要があったのです。これは競馬に従事する人々と競馬界全体が成長するのに寄与することになるでしょう」。
BHAの最新のセーフガーディング戦略
改善すべきであるとされた主要分野
・ 競馬界全体に対する性的嫌がらせに関する研修。
・ 通報ラインの簡素化と信頼度向上。
・ より有効性が高く被害者に配慮した通報への対処方法。
・ 被害者への支援を強化するためのネットワーク"セーフガーディング・チャンピオン"の構築。
・ 何が性的嫌がらせにあたるかについての意識を高めるためのキャンペーンの開始。
・ 新たなリスクを突き止めるためのデータ主導のアプローチ。
By Scott Burton
[Racing Post 2023年12月13日「Julie Harrington says 'we're sorry' as BHA vows to tackle bullying and sexual misconduct in racing」]