ブレスゲス氏、英国の賭事プールの分裂を懸念(国際)【開催・運営】
香港ジョッキークラブ(HKJC)のCEOとして事実上ワールドプールを統率するウィンフリート・エンゲルブレヒト⁼ブレスゲス氏は、英国で賭事プールが別々に運営されることにより生じる分裂は競馬にダメージを与えると注意喚起した。
「競馬の公正確保」をテーマにパリで開催された第58回IFHA(国際競馬統括機関連盟)年次総会(通称:パリ会議)の終了後、ブレスゲス氏は本紙(レーシングポスト紙)の取材に応じた。
UKトート社が英国の55競馬場と交わした7年間の共同賭事プール運営の契約が2025年に終了することで生じうる難題が、ブレスゲス氏の心配の種になっている。香港政府との話合いが成功裏に終われば、近い将来ワールドプールの提供日数の増加を発表できると、彼は見込んでいる。
コロッサスベッツ社(Colossus Bets)は、アリーナレーシング社、ジョッキークラブ、ラージ・インディペンデンツ競馬場グループ(LIGR 6つの独立競馬場からなるグループ)に共同賭事プール運営の提案を行っている。しかしUKトート社は2018年に競馬場と締結した当初の契約を延長する交渉を継続中であり、正式な会合は持たれていない模様である。
ブレスゲス氏は8月に札幌で開催されたアジア競馬会議(ARC)で英国競馬界のガバナンスの分裂の問題に言及し、競馬界が一丸となることは「まったくのミッション・インポッシブルではない」と訴えた。ワールドプールが英国のトート運営の抜本的な改革に対応しなければならない可能性について尋ねられ、ブレスゲス氏はこのテーマに立ち返り、こう語った。
「だからこそ、『ミッション・インポッシブル』について話したのです。分裂は英国競馬を傷めつけています。私からのアドバイスは、賭事プールをさらに分裂させようとするなら、それは現在抱える問題に焦点を合わせたり、それを潜在的に解決したりするのではなく、競馬にダメージを与えてしまうというものです」。
「結局、競馬にとっての利益は何かを見極める必要があります。はるかに短期的な視点をもつことの多い1社か2社の賭事業者だけに利益をもたらすものであってはなりません。これは懸念すべきことです」。
ブレスゲス氏はこう付け加えた。「テクノロジーに関しては、分裂など筋が通りません。個人的見解ですが、英国で一般的に利用できるテクノロジーは、アジアで見られるものよりもおそらく5~8年遅れていると思います。達成したい目標のビジョンを的確に描くほうがはるかに望ましいのですが、それは一夜にして実現するものではありません」。
「しかし英国競馬界にとって必要なことだと考えますが、明確な道筋が一本あれば、最終的にさまざまなプレイヤーたちは理解してくれるでしょう。Xから何かを取ってYに再分配しようとするのではなく、英国の全体的な賭事プールを成長させようとしているのです」。
「私は質の高さゆえに英国競馬を高く評価しています。英国競馬は最高と言わないまでも、最高級のレースを提供しています。しかし分裂により、このスポーツの根底にある質を徹底的に生かすことができないのです」。
ブレスゲス氏は、ふたつの異なる国から最高のレースを集めるハイブリッドのワールドプールカードを今年開発できたことを誇りに思うと述べた。
マカイビーディーヴァS(フレミントン)のカードから3レースが、愛チャンピオンズフェスティバル(レパーズタウン)の初日に組み込まれた。このコンセプトは英チャンピオンズデーでもふたたび採用され、アスコットの開催全体にコーフィールド競馬場のレースが加わることになる。
ブレスゲス氏はこう語った。「ワールドプールが欧州で成し遂げたことを考えれば、次のステップはアジア、欧州、そして米国からいくつかのレースを定期的に組み込む日程となるでしょう」。
「来年はワールドプールがさらに拡大すると見ています。香港政府を説得してワールドプールに参加する回数を増加できるようになると信じています。香港は賭事プールに多くの賭金をもたらしているので、大いに関連性があると考えます」。
ブレスゲス氏はIFHA会長としてパリ会議の開会の挨拶を行ったとき、違法であり規制のない海外ギャンブルの拡大を、競馬のクリーンな運営に対する4つの主な脅威のひとつとして挙げた。賭事客への経済力チェック(affordability check)の義務づけにより、英国を標的とする闇市場のブックメーカーが増加していることについて尋ねられたとき、彼はふたたびこのテーマを取り上げた。
パリ会議では世界中から集まった多くの公正性担当官が、ダニー・ブロック、ルーク・コマー、ホルヘ・ナヴァロなどが関与した事件がどのように起訴されたかについて説明した。またテニスや陸上競技、ほかのプロスポーツのゲートキーパーの見解も示された。
さらに、汚職やギャンブルに関わる事件に関しては、文書足跡を辿れることや、賭事業者とスポーツの統括機関のあいだで覚書を取り交わすことの重要性を全員が強調した。
英国の賭事市場は定評があり、しっかり管理されているが、これに対する闇市場の脅威について、ブレスゲス氏はこう語った。「正直に言うと、英国やアイルランドの賭事業者と話すとき、経済力チェックについての深刻な懸念を耳にします。違法市場に顧客を追いやることに、疑いの余地はありません」。
「これは各国の政策決定にかかっています。IFHAができるのは意識を高めることです。多くの場合、政府も競馬統括機関もとてもドメスティックな見方をするものですが、私たちはいっそう国際的な視点を提示し、これらの違法市場がどのよう結びついているかを示すことができます」。
パリ会議での重要な発表のひとつは、アジア競馬連盟(ARF)の違法賭事及び関連金融犯罪対策協議会(闇市場ギャンブルの法的および学術的研究の主要リソース)がよりグローバルな影響力をもてるように、今後はIFHAの支援を受けるというものである。
またこの会議では、IFHAの最初の「公正確保ハンドブック(integrity handbook)」が発表された。
By Scott Burton
[Racing Post 2024年10月9日「'You'll damage the sport' - World Pool chief sounds warning of fragmentation amid uncertainty over future of UK Tote」]