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2024年10月21日  - No.10 - 4

フォートエリー競馬場、プエルトリコへの馬輸送禁止(カナダ・アメリカ)【開催・運営】


 フォートエリー競馬場(カナダ・オンタリオ州)は最近、ある施策を導入した。それは調教師たちに対して、「フォートエリー競馬場に滞在した馬を馬主や調教師がプエルトリコの団体に売却した場合、馬房を失う可能性がある」と注意喚起するものだ。

 フォートエリー競馬場、オンタリオ州ホースメン共済協会、ロングラン・サラブレッド引退馬協会は10月10日、ホースマンに宛てた共同書簡で、競走生活を終えた馬は引退させ、プエルトリコに売却してはならないと伝えた。プエルトリコでは、負傷馬が鎮痛剤や抗炎症剤を投与されカマレロ競馬場で定期的に出走しているという報告が増えている。

 書簡にはこう記されている。「フォートエリー競馬場はプエルトリコへの馬売却に断固として反対します。最後にフォートエリーで出走した馬を後にプエルトリコに送った調教師や馬主は、厩舎の使用権利を失う可能性があります」。

 「フォートエリーで引退した馬の多くが新たな拠点に移り、セカンドキャリアで成功を収めています。競走生活を終えた馬はジョッキークラブをつうじて引退手続きを行う必要があることにご留意ください。このような方法で引退させた場合、カナダ、米国、プエルトリコでレースに出走させる資格はありません」。

 フォートエリー競馬場の今回の施策は、4月にファーストレーシング(1/ST Racing)が取った措置に続くものだ。(ファーストレーシングの傘下にある)メリーランドジョッキークラブ(MJC)が発表した声明にはこう記されていた。

 「最近、MJCの競馬場で最後に出走した馬が後にプエルトリコに売却されていることについて懸念を抱く人々からファーストレーシングは連絡を受けました。ご存じのとおり、プエルトリコで競走生活を終えたサラブレッド競走馬のアフターケアについて大きな懸念があります。MJCはそれらの人々が抱く懸念を共有しており、過去には米国本土のアフターケアプログラムを受けられるように一部の馬が戻ってくるための輸送費を負担しました。しかしとりわけ怪我・高齢・成績不振のために競走生活を終えた馬のプエルトリコへの輸送を防止するほうが、馬の幸福にかなっており、私たち全員にとって納得のいくものです」。

 「MJCを拠点とする調教師や馬主がプエルトリコに送り込む馬の頭数を、私たちは毎年確認します。それらの馬が米国本土に戻ってこないとしても、MJCとファーストレーシングは調教師や馬主に対して、各馬をサラブレッド・アフターケア同盟(TAA)認定の施設に送り込むための寄付を義務付ける権利を保持しています。さらに、負傷または病気のためにプエルトリコ行きとなった馬の調教師や所有者は、ファーストレーシングの競馬場で馬房を失う対象となる可能性があります」。

 ファーストレーシングはピムリコ競馬場とローレルパーク競馬場のほか、ガルフストリームパーク競馬場とサンタアニタパーク競馬場も運営している。この書簡にはファーストレーシングのCVO(最高獣医責任者)ディオンヌ・ベンソン博士とMJCの暫定会長であるマイク・ロジャーズ氏が署名した。

 本誌(ブラッドホース誌)はここ数年、馬を回復させるために奮闘した馬主や調教師からの話を聞いている。彼らは、以前関わった馬がカマレロ競馬場で劣悪なコンディションで出走させられていることや、何度か所有者が変わった末にプエルトリコにたどり着いたことを知ったのだ。

 さらに最近では、長年フロリダを拠点とする調教師でありコンサイナーのライアン・デーヴィス氏が、2023年にOBSの3月2歳トレーニングセールにおいて4万5,000ドル(約675万円)で売却したミスターカソリックという名の牡駒の話を伝えた。購買者はプエルトリコ馬術連盟(Confederación Hípica of Puerto Rico)。デーヴィス氏によると、この馬は健康な状態でプエルトリコに輸送されたが、14ヵ月後には300ポンド(約136㎏)以上も体重を減らし、膝に注射が繰り返されたことでひどい歩行不全に陥っていたという。

 デーヴィス氏は出走登録や競走結果をつうじてミスターカソリックを追跡し、競走成績の悪化を確認したのち、この馬を買い戻すために馬主に連絡した。そして長期にわたる交渉の末、買戻しに成功した。彼女はカマレロ競馬場の獣医師から、現在は去勢されているこの馬がひどく肢を引きずっていると事前に警告されていた。

 デーヴィス氏は、「彼は脱水状態で全身傷だらけでした。無口頭絡がとてもきつく締められ、その下の皮膚が剥がれ、膝には複数の骨折がありました」と振り返った。

 ミスターカソリックがフロリダに戻ってくると、デーヴィス氏は6週間をかけて抗炎症剤・水分療法・栄養療法による治療に努めた。それはただ、アメフトのボールのように大きく膨れ上がった膝の外科手術に耐えられるようにするためだった。

 デーヴィス氏はこう語った。「実は、この馬が数百頭のうちの一頭だということが大問題なのです。すべての競馬場がこれに賛同し、プエルトリコが私たちと同じ検査や薬物に関するルールを順守するまで、米国本土の馬の輸送を一時停止してほしいと思います。彼らがこのままプログラムを遂行しないようにするための圧力になります。米国本土が介入すべき問題です。透明性があり、尊敬に値する競馬運営が行われるよう、現地で監視する人員が必要です」。

By Eric Mitchell

(1ドル=約150円)

[bloodhorse.com 2024年10月11日「Fort Erie Bans Sending Horses to Puerto Rico」]


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