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2024年04月19日  - No.4 - 1

変更後初のグランドナショナル、アイアムマキシマスが優勝(イギリス)【開催・運営】


 グランドナショナルは予測できないことで有名であり、最も有力な馬主や調教師にとっても勝つのが一番難しいレースである。

 1839年に創設されたこの古いレースの第1回目は、打ってつけの名をもつ馬"ロトリー(宝くじ)"が優勝してレースの性格を定めた。それ以来、グランドナショナルは明晰な頭脳もお財布事情も惑わすパズルとなってきた。

 障害競馬界きっての名伯楽、ウィリー・マリンズ調教師が今年のレースに挑む前に1勝しか挙げていなかったことは、グランドナショナルの神々しいほど不可思議な性格を際立たせるのに役立った。

 もうすぐ18回目のアイルランドのリーディングトレーナーに輝くマリンズ調教師は、チェルトナムやほかのどこでも、自らが長く運に見放されるような人間ではないことを証明してきた。そしてヘッジハンターでグランドナショナルの暗号を解いて初優勝を果たしてから19年を経て、アイアムマキシマスで最も有名なレースをふたたび制したのだ。

 昨年の覇者コーラックランブラーとともに単勝オッズ8倍の1番人気を背負ったアイアムマキシマスは、ポール・タウネンド騎手にとって初めての、マリンズ調教師にとって2回目の、伝説的な馬主J・P・マクマナス氏にとって3回目のグランドナショナル優勝を、「1、2、3」とたやすく数えるようにもたらした。この勝利はマリンズ調教師を英国の障害トレーナーズランキングの首位に押し上げ、さらにはマリンズ調教師とタウネンド騎手を同一シーズンに障害三大レース、チャンピオンハードル(G1)、チェルトナムゴールドカップ(G1)、グランドナショナルを総なめにした初めてのコンビにした。

 最終障害に差し掛かるころには多くの馬に栄光をつかむチャンスがあった。女性ジョッキーとして唯一グランドナショナル優勝の経験があるレイチェル・ブラックモア騎手が一瞬、ミネラインドーでこのレースの2勝目を挙げるかのように思われた(訳注:ブラックモア騎手は2021年にミネラタイムズでグランドナショナル初優勝を果たしている)。

 2021年チェルトナムゴールドカップ優勝馬ミネラインドーは最終障害を飛越して先頭で着地して、後続に数馬身差をつけていた。ところがタウネンド騎手がその動きをすばやくふさぎ込み、アイアムマキシマスが見事に押し切り勝利をもぎ取ったのだ。

 タウネンド騎手はこう語った。「信じられないようなレースですが、彼も信じられないような馬なのですよ。ゴールドカップはG1だけに勝ちにくいものですが、グランドナショナルは少し違うものがありますね。信じられません。ちょっとシュールです」。

 「1号障害を先頭で飛越したのですが、後退しだしたために、見事なスタートは帳消しになってしまいました。2周目は少しばかり注意深く走っていましたので、できるだけ多くのエネルギーを温存しようとしました。しかしクリアな走りはできませんでしたね」。

 「先頭に抜け出したとき、彼はすいすい走っていました。先行していた集団は私たちが迫っていることなど目にも留めていなかったと思いますが、彼は思っていたような反応してくれましたね」。

 コーラックランブラーにとっては最悪のスタートとなった。鞍上のデレク・フォックス騎手が1号障害で落馬してしまったのだ。このレースで騎手の落馬は4件あり、競走中止となったのは7頭だったが、転倒した馬は1頭もいなかった。

 アイアムマキシマムが先頭でゴールし、デルタワーク、ミネラインドー、ガルヴィンが続いたことで、1着~4着をいずれもG1馬であるアイルランド勢が占めることになった。5着に入ったキティズライトが英国勢の中での最先着。完走馬21頭は2005年に同じ頭数が完走して以来の最多である。

 アイアムマキシマスは英国のニッキー・ヘンダーソン厩舎でレースキャリアを始めた。その後、馬主の故マイク・グレッチ氏が所有馬をアイルランドの厩舎に移籍させることになる。昨シーズンのチェルトナムフェスティバルのブラウンアドバイザリーノヴィースチェイス(G1)でアイアムマキシマスが4着に健闘して将来を有望視されたことで、マクマナス氏はこの馬を購買した。絶妙のタイミングだったことは、翌月にこの馬がアイリッシュグランドナショナル(フェアリーハウス)を制したことで証明される。

 マリンズ厩舎からの出走馬8頭のうちの1頭であるアイアムマキシマス(8歳)は今シーズン、フェアリーハウス競馬場でさらに2勝を挙げている。12月にドリンモアノヴィースチェイス(G1)、2月にボビージョーチェイス(G3)を制したのだ。

 マリンズ調教師はこう語った。「驚くべき経緯で彼を手に入れました。ニッキーが"できることならあの馬を絶対に手に入れるんだ"と言ってくれたのです。だから彼のおかげですね。すべての取引をまとめてくれたヘンリエッタ・ナイト調教師にも感謝しています。そんなわけで、私たちは今日ウィナーズサークルにいるのです」。

 「調教中にはチャンピオンたる気配のようなものをまったく見せない馬ですね。ありきたりな馬なのです。目立たないですね。調教場で見かけたなら、何の特徴も見つけられないでしょう。だけど、見るからにエンジンはありますね」。

 「グランドナショナルのおそらく最高のトライアルの1つ、ボビージョーチェイスでもこんなふうに勝ちました。後続をぐいぐい引き離していったのです。驚異的でしたね。そのとき、すごくチャンスがあるのではないかと思うようになったのです」。

 マリンズ調教師は今年まで、ヘッジハンター以来、グランドナショナルに48頭を出走させてきて勝てなかった。しかし総賞金100万ポンド(約1億9,000万円)のレースを制した今では、英国のリーディングタイトルを獲得する可能性がかなり高くなっている。障害シーズンは残すところあと2週間だが、マリンズ調教師はダン・スケルトン調教師やポール・ニコルズ調教師を抑えて首位に立っている。

By Andrew Dietz

変更により素晴らしい光景のグランドナショナルが実現

 エイントリー競馬場を担当するジョッキークラブのディコン・ホワイト氏は4月13日(土)、仕事がうまく成し遂げられたことに胸を張った。革新的な見直しが行われてから初めてのグランドナショナルは"素晴らしい"結果となったのだ。出走馬のほとんどが2周目でもしのぎを削り合い、転倒馬も重傷を負った馬もなかったのだ。

 2023年に1号障害で5頭が転倒し、そのうちの1頭、ヒルシックスティーンが予後不良となり、3年間で4頭目の死亡馬となった。これをうけ、馬場取締委員であるスレカ・ヴァルマ氏はグランドナショナルについて詳細な検証を主導した。

 その結果、出走頭数を減らし、1号障害をスタート地点に近づけ、発走時刻を17時15分ではなく16時に定めるなどの変更がなされた。

 ジョッキークラブの北西部地域担当理事であるホワイト氏はこう語った。「異議を唱える声は尽きませんでしたが、スレカは信念を守り続けたのです。彼女をサポートし、すごく前向きな結果を導きだすことができました。とても誇りに思います」。

 「まだ1年目です。再度スレカとそのチームとじっくり話し合い、変更が必要かどうかを検討します。ただ、これまで見聞きした反応はとても好意的なものです。見直しを主導したスレカの功績が大きいですね。かなりの時間をかけて、すべてのデータと分析を考察しました」。

 変更の多くは、馬を落ち着かせ、これまでのように1号障害まで突っ走ってしまうことを防ぐために導入された。

 ホワイト氏はこう続けた。「レースに向けてのウォーミングアップは静かなもので、馬は落ち着いていました。まったく騎手、調教師、厩舎スタッフのおかげですよね」。

 「見ていてワクワクするようなレースでした。昨年は大半の観戦者にとって見るのがつらいものでしたが、今年はまさにプロフェッショナルなやり方で運営されているように見えました。そして勝ち目のある馬がぞくぞくとメリングロードに到達するのは素晴らしい光景でしたね」。

 このレースでは騎手の落馬が4件あり、7頭が競走を中止したが、ホワイト氏は転倒馬が1頭もいなかったことをについて何らかの判断を下すのは時期尚早だと考えている。

 ホワイト氏はこう述べた。「"5年後に判断しましょう"というのが私の見解です。出走した32頭が質の高い馬であることは分かっていました。転倒馬がなかったことにはあまり驚きませんでしたが、それでも素晴らしく見ごたえのあるレースでした」。

 ホワイト氏はグランドナショナル開催全体をこう振り返った。「この数ヵ月、競馬について否定的な意見がしきりに囁かれていました。グランドナショナルはそれを好意的なものに転じさせる絶好の機会であり、エイントリーはそれをうまく成し遂げました」。

 「私にとっては25年以上携わってきたエイントリーで経験した中で最高の3日間でした。この3日間でチームが成し遂げたことに、とてつもなく大きな誇りを抱いています。準備段階では厳しいものを感じていました。天気は良くありませんでしたが、大半の騎手や調教師はコースがよく雨に耐えてくれことに感激していました」。

 ダン・スケルトン調教師は管理馬のガリアデリトーがアイアムマキシマスの8着となるも、グランドナショナルが素晴らしい光景であったという意見に共鳴し、レース翌日にこう語った。

 「これからグランドナショナルの見直しは簡単なものになるでしょう。来年も今年と同じようにやればいいのです」。

 「最も大切なことは、変更を行って、正しいものにできたのだと発言することです。みだりに手を加える必要はありません。安全が第一ですし、昨日のレースを振り返ると目を見張るものがありますね。何も悪いことは起こりませんでした。素晴らしいことです」。

 2012年にネプチューンコロンジスでグランドナショナルを制したポール・ニコルズ調教師はこう続けた。「素晴らしいレースだったと思います。負傷はなく、落馬もほとんどありませんでした。競馬という観点からスペクタクルとして見たとき、そして一般の人々の観点から見ても、これ以上見事なレースはないでしょう」。

 「多くの馬が2周目まで到達し勝ち目がありました。最後までとても素晴らしいレースでした」。

 BHA(英国競馬統括機構)のCEOジュリー・ハリントン氏はこう語った。「今年のグランドナショナルは長く記憶に残るものとなるでしょう。このレースを実施するにあたり懸命に取り組んだジョッキークラブの皆さん、そしてBHAの皆さんに感謝しています」。

 エイントリー競馬場の入場者数は、初日と3日間全体では増加したが、金曜日(2日目)は減少した。ホワイト氏はこう語った。

 「3日間を通しての入場者数に満足しています。金曜日は地元の人々が来場し、若年層が少し多いのが目立ちました。若い観客の中には厳しい経済状況の影響を受けている人もいます。しかしチケットの売れ行きは後半になって急上昇し、私たちはレディースデーに特別イベントを企画し、それは見逃してしまうととても惜しいようなものでした」。

By David Carr

(1ポンド=約190円)

(関連記事)海外競馬情報 2023年No.10「グランドナショナルの変更をレジェンドたちが支持(イギリス)

[Racing Post 2024年4月13日「'Unbelievable' I Am Maximus storms to 2024 Grand National glory for Willie Mullins and Paul Townend」、4月14日「Aintree chief 'very proud' of positive Grand National changes as top trainers provide their backing」]


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