ジョッキークラブ、賞金への支出額を削減(イギリス)【開催・運営】
4月8日、英国競馬界にさらに悪いニュースが飛び込んできた。ジョッキークラブ(訳注:英国の15競馬場を所有)が今年の賞金への支出を削減することを発表したのだ。チェルトナムフェスティバル(3月12日~15日)の入場者数が減少し、アフォーダビリティチェック(経済力チェック)の影響が続いていることが、収益に影を落としている。
ジョッキークラブのCEOネヴィン・トゥルーズデール氏は、この決定は競馬界が"とてつもなく大きな経済的逆風"に直面していることの表れであると語った。この決定により、賞金額は5月から年末にかけて全体でおよそ150万ポンド(約2億8,500万円)削減される。
また、ジョッキークラブの競馬場で実施される5つの開催が"プレミアム開催"のステータスを失うことになる。
サラブレッドグループ(Thoroughbred Group:TG 馬主・生産者・調教師・騎手・厩務員を代表する包括的組織)はこの決定に不満を募らせている。賞金削減によって追い詰められた事業を営む中で、メンバーはコストアップ圧力に直面しているという。
TGの競馬・分析担当理事であるジャック・コナー氏はこう語った。「2024年の賞金に関するジョッキークラブの発表に、TGは言うまでもなく失望しています。メンバーは競馬を運営するのに厳しい環境であることを理解しています。ただメンバーの多くは自ら事業を営んでおり、コストアップ圧力に直面しているときに賞金が減額されることに間違いなく不満を募らせるでしょう。それでも競馬を成長させ、より順調な軌道に乗せるために、競馬界と協力しつづけていきたいと思っています」。
ジョッキークラブは1月、今年の賞金に過去最高の3,180万ポンド(約60億4,200万円)を支出して、全体的な賞金総額を6,010万ポンド(約114億1,900万円)に引き上げると述べていた。ところが、その支出額はおよそ75万ポンド(約1億4,250万円)削減されて2023年の水準の3,110万ポンド(約59億900万円)にまで下げられる。その結果、賦課金収入や出走登録料収入が減少するため、全体的な賞金総額は5,860万ポンド(約111億3,400万円)にまで減少することになる。
利害関係者にこの決定について通知する中で、ジョッキークラブは「これらの決定を下すにあたり、競馬界のあらゆるレベルの参加者の重要性を考慮し、それを踏まえつつ賞金レベルを見直しました」と述べている。
チェルトナムフェスティバルはジョッキークラブの事業年度できわめて重要なイベントだが、その入場者数は1万600人減少した。
ジョッキークラブがグランドナショナル開催(エイントリー 4月11日~13日)に向けて準備を進める中で、トゥルーズデール氏は本紙(レーシングポスト紙)に対してこう語った。「私たちは依然として、とてつもなく大きな経済的逆風に直面しています。2024年も続いています。明らかに、オンライン投票の収入をめぐって不確実性を抱えつづけています」。
「依然として生活費の高騰に大きな打撃を受けています。それにチェルトナムがグランドナショナルと同様に毎年大きな商業的けん引力となっているのは、誰もがわかっています」。
「またチェルトナムの入場者数を発表しましたが、最初の3日間がずっと減少していたことは周知の事実です。3日間で1万2,000人の減少だったと思いますが、これが大きな連鎖反応を引き起こしています。ほかの分野でもいくつかの不確実性がうかがえます」。
宿泊費などチェルトナムフェスティバルを現地で観戦するための費用の高騰が、入場者数減少の原因になっていた。さらにトゥルーズデール氏は、賞金に関するジョッキークラブの決定の原因はチェルトナムフェスティバルの残念な結果だけではなかったと述べる。オンライン賭事業者からの放映権収入の減少もまた一因になったという。
By Bill Barber/Racing Post
(1ポンド=約190円)
[bloodhorse.com 2024年4月8日「British Jockey Club Plans to Cut Purse Contribution」]