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2024年05月20日  - No.5 - 3

芝初出走のノータブルスピーチが英2000ギニーを制覇(イギリス)【開催・運営】


 1月最後の土曜日にチェルトナムフェスティバル(障害競走最大の祭典)のトライアルレースを観戦して帰路につく人々の中に、まさかその夜に英2000ギニー(G1)に向けての試運転が行われているのを知っていた人はいなかっただろう。

 その時点でノータブルスピーチが英2000ギニーに出走するとは考えられていなかった。というのも、ほとんど誰も彼のことを知らなかったのだ。シティオブトロイ(父ジャスティファイ)がデューハーストS(G1 10月14日)で圧勝を収め、2000ギニーでのオッズが1倍台になってから3ヵ月が経過していた。1月27日夜、ノータブルスピーチ(父ドバウィ)は遅ればせながらケンプトンの未勝利戦でデビューした。そして午後6時をやや回ったとき、凄く驚異的な将来への道のりを歩み始めた。

 ノータブルスピーチがいなければ、とりわけチャーリー・アップルビー調教師からの依頼がなければ、ウィリアム・ビュイック騎手は今年の英国での初騎乗を2月まで遅らせていただろう。1月26日(金)、彼はメイダンで騎乗しゴドルフィンブルーの勝負服で今年のG1初勝利を含む3勝を挙げていた。ケンプトンは寒気がきびしく、賞金はそれほど豪華でなかったが、その夜騎乗することになった2頭のうちの1頭は、メイダンで騎乗したどの馬よりもはるかに優秀だった。

 14回目の挑戦で初めて2000ギニーを制したビュイック騎手はこう語った。「こことドバイを往復していたのですが、チャーリーが"ケンプトンである馬に乗れないか?"と聞いてきたのです。"厩舎でその馬はとても期待されている"と言うので、"もちろんケンプトンに行くよ"と答えました。チャーリーはあまりそういうことを言わないたちなのです」。

 「あの夜、ノータブルスピーチは完成していないようでしたし未熟でしたね。しかし自らのストライドを把握すると、驚くべき走りっぷりを見せました。デビュー戦の夜に彼がどういう馬になるかなんて言えないものでしょうが、路線を選ばなければなりませんし、いろいろな意味で、馬に今後どうしたいのか決断させなければなりません。この馬は窓の外をじっと見て2000ギニーに向かうべく立候補してくれたのです。自ら買って出てくれたのですから、嬉しかったですね」。

 ノータブルスピーチがケンプトンで成し遂げたこと、そして同じ場所でさらに2勝したことは人目を引いた。ビュイック騎手は1月も2月も4月も後方でレースを進め、懸命に追い込むように促した。この馬は3戦とも破壊力抜群の末脚を見せつけ、最後の直線をかなり進んだところでライバルたちをなぎ倒した。幸先が良かったのかもしれないが、1938年以来、2000ギニー優勝馬には2歳で未出走だった馬も、それまでオールウェザーしか経験していなかった馬もいなかった。ここで勝利を挙げるには、異質である必要があった。ノータブルスピーチが無敗を守った勝ちっぷりには、彼が実に異質な存在であることを裏づけるものがあった。

 アップルビー調教師とビュイック騎手は4月末、ニューマーケット競馬場の調教走路でのノータブルスピーチの姿に"言葉を失い"、希望を抱くようになった。しかしシティオブトロイ陣営から明らかな自信の欠如というものは感じられず、リーディングトレーナーのエイダン・オブライエン調教師はこの馬のことをこれまで手掛けた中で最も優秀な2歳馬であり、疲れを知らずのアスリートだと表現していた。ただ、すべてものには"初めて"がある。

 ライアン・ムーア騎手は陣営に対し、単勝1.67倍の1番人気を背負ったシティオブトロイが発馬機内で落ち着きを失っていたと語ったが、ゲート入りが最後だったため、それ自体はもっともらしい言い訳にならないだろう。現実は辛辣なもので、シティオブトロイは残り2ハロンで消耗しつくしていた。ムーア騎手が茂み(The Bushes 残り2ハロンの地点)を過ぎたあたりで右鞭を入れている最中に、ノータブルスピーチがその横をいとも簡単に通り過ぎ、ビュイック騎手は悠々と持ったままの状態だった。決勝線ではノータブルスピーチと9着に沈んだシティオブトロイのあいだには17馬身もの差があった。英ダービー(G1)でのシティオブトロイの勝利を信じる者に希望を持たせる要素は、同厩舎の傑出馬オーギュストロダンが1年前に同じ舞台で22馬身差で敗れたという事実である。

 ウィナーズサークルではつとめてアップルビー調教師の勝利を称えていたクールモアのM・V・マグニア氏はこう語った。「もちろんシティオブトロイがダービー馬になる可能性はまだあります。去年オーギュストロダンがどうなったかをご覧になったでしょう。確かにがっかりしていますね。ライアンは今日この馬が不発に終わったと感じていました。でも馬は無事で元気です。それが大事なことです。彼らは機械ではない。凡走することだってあります」。

 オーギュストロダンは、その後さらに2度失態を演じた。しかし"2歳でナンバーワンだった馬が3歳で百獣の王にある保証はない"と指摘されると、マグニア氏は"予測不可能なことにも長所だってある"と述べた。

 「それこそが競馬の一番いいところです。このスポーツがそんなに単純だったら、誰も参加しないでしょう」。

 いずれにせよ、シティオブトロイが英ダービーでノータブルスピーチと対戦する可能性はない。しかしアップルビー調教師、ゴドルフィン、ビュイック騎手にはアラビアンクラウンというダービーの大本命がいる。この馬は最近サンダウンのクラシックトライアルを制している。2023年に期待を大きく下回る活躍しかできなかった調教師にとって、2024年のすべりだしは好調である。これからますますよくなることが約束されている。彼にとって2頭目の2000ギニー優勝馬が別格のマイラーになりそうだからなおさらだ(訳注:1頭目は2022年のコロエバス)。

 「ゴドルフィンのチームは、1月27日(土)の夜にデビューして慣例を打ち砕いたこの馬に何を期待していたのでしょうか?」と聞かれて、ビュイック騎手は「私たちは皆、彼のことを心から信じていました。ただ、そのレベルよく知らなかったのです」と答えた。

 2025年のチェルトナムフェスティバルのトライアルデーには、ケンプトンで何が起こるか注目しておくのが賢明かもしれない。

By Lee Mottershead

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[Racing Post 2024年5月4日「Coolmore see another juvenile champion humbled as William Buick's winter warmer becomes an unconventional Guineas hero」]


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