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2024年06月20日  - No.6 - 3

アスコットの強豪馬の勧誘、賞金格差のため難航(イギリス)【開催・運営】


 アスコット競馬場の競走担当理事であるニック・スミス氏は「賞金格差の拡大により、英国競馬界は欧州外から出走馬を勧誘するのにますます苦戦している」と述べ、競馬界にとって深刻な問題だと評した。

 今年のロイヤルアスコット開催(6月18日~22日)は賞金総額が初めて1,000万ポンド(約20億円)を超えるが、日本や香港から強豪馬を呼び込むことができなかった。

 スミス氏は、中東で高額賞金を提供する競馬祭典が盛り上がっていることが要因だと考えている。そして海外からの出走馬が不足している状況は、英国最高級のミドルディスタンス競走が国際的競争力を維持するために"資金注入"を受ける必要性に光を当てるものだと主張する。

 「日本と香港について私たちが毎年直面している現実は、年々賞金格差が拡大しているということです。欧州の中で英国は賞金を大幅に引き上げましたが、その額はアジアのホースマンの心に響くものではありません。今後もロイヤルアスコットに挑戦する馬は時おり現れるのでしょうが、頻度は減っていくでしょう」。

 「中東のプログラムが充実しつつあることが主な理由です。以前はロイヤルアスコットを目指すような優良馬にとって春に参戦できる競馬祭典はドバイだけでした。しかし今ではサウジもあります。日本や香港の調教師はそれらの祭典に多数の馬を送り込んでいます」。

 「ロイヤルアスコットや欧州で勝利を挙げるには、最高級の馬を送り込まなければなりません。春に遠征させた馬や、自国のもっと魅力的な賞金のレースを目指す馬は、関係者にとって遠征させる妙味がないのです」。

 2003年以来、ロイヤルアスコットには欧州外から220頭が参戦し、うち25頭は日本か香港の調教馬だった。昨年は日本からの参戦はなく、香港からの2016年以来の遠征馬ウェリントンはクイーンエリザベス2世ジュビリーS(G1)で10着となった。

 スミス氏はこう語った。「賞金格差の拡大がトップエンドにかなりの影響を及ぼし始めていることで、懸念が深まっています。真夏にそれぞれの距離で行われるキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)・英インターナショナルS(G1)・サセックスS(G1)の三大レースなどに資金注入を行い、アジアの関係者に売り込む必要があります。

 「英国のビッグレースを助力なしに実施していくことは不可能です。ドバイやサウジ、ブリーダーズカップのような世界に通用する古馬王者決定戦を創設するのに、どこから資金を調達するかは深刻な問題です。私たちはそのようなレベルでプレーする必要があるのです」。

 「英国は一番少ない賞金で最高級のレースを維持してきました。コロネーションS(G1 牝馬限定)やセントジェームズパレスS(G1 牡馬限定)に目を向けると、それぞれにギニー競走の優勝馬が2頭ずつ出走するかもしれません。米国でターフ馬を手掛ける調教師はそのレベルではとても戦えないと思うかもしれませんし、勝ちに行くには賞金が十分ではないと思うかもしれません」(訳注:両レースはいずれも6月の3歳最強マイラー決定戦で各国のギニー競走優勝馬が参戦する)。

 欧州外からロイヤルアスコットに遠征する頭数では、豪州は米国に次いで多いが、今年はそれほど多くない。しかし、スミス氏はロイヤルアスコットにおいて3歳戦が盤石であることと、海外からの参戦馬の全体像に満足している。今年は米国人調教師5人が注目すべき馬を出走させ、フランスからも記録的な頭数が参戦する。

 「このような競馬祭典はつねに浮き沈みがありますね。ここ2~3年は、ネイチャーストリップやクーランガッタが豪州からやってきて素晴らしい開催になりました。今年も悪くはありません。米国からたくさんの馬が遠征してきますし、強そうなフランス馬も登録しているので勇気づけられています」。

 「最悪なシナリオというわけではありません。米国からは8~9頭、フランスから何頭か出走すれば、多くのレースは着順を競って白熱したものとなるでしょう。とても良い状況ではありますが、豪州から1頭しか遠征してこず日本からの参戦がゼロということで、少し輝きに欠けます。しかし、それによって開催が盛りあがらなかったり、楽しめないものになったりするわけではありません」。

 今年はレース中継がITV1とITV4で分担されるため、ロイヤルアスコットのレースの発走順はわずかに異なる。また木曜日の開催(全7レース)は、午後5時に開始されるサッカー欧州選手権・EURO2024のデンマーク対イングランドの試合と重なる。キックオフはゴールドカップ(G1)の発走の35分後で、第5レースの発走5分前である。

 スミス氏はこう続けた。「EURO2024は場内のあちこちに設置された大型スクリーンに映し出されます。人々はほかのイベントに参加していても、メジャースポーツを見たいと思っています。ロイヤルアスコットが開催されるなか、サッカーの大決戦で代表チームが熾烈な戦いをくり広げることで、熱狂的な雰囲気が醸し出されるでしょう。観衆はそういうのが大好きです。さらに盛り上がる日になりそうです」。

By Jonathan Harding

賞金と地理的条件ゆえに英国のミドルディスタンスレースの売込みは難航

 ロイヤルアスコットは、欧州の強豪馬と競うべくベストホースを参戦させるよう日本や香港などの馬主や調教師を説得するのに苦戦していることを認めている。驚くべきことだ。というのも、英国のトップクラスの競馬祭典とそれらの国々とのあいだに賞金格差があるのは新事実ではないからだ。

 香港の賞金額の高さを考えると、馬主のピーター・ラウ氏とダニー・シャム調教師はすでに昨年10月、大冒険家であることを証明していた。豪州で最も偉大な馬齢重量戦、コックスプレート(G1)に挑戦して優勝したのだ。

 しかしふたたび遠征したくなったとき、彼らの興味をひいたのはロイヤルアスコットのどのレースでもなく、6月2日(日)の1着賞金1億8,000万円の安田記念(G1 東京)だった。

 賞金だけでなく、地理的条件も重要な要素である。香港と日本は飛行機でわずか4時間半ほどしかかからないという事実は変わらない。一方、中東で賞金が急伸しているため、欧州に夏が訪れるころには、すでに多くの馬が海外遠征で活躍しているのだ。

 アスコットの最高賞金レースのひとつ、プリンスオブウェールズS(G1)とライバルレースを比較すると分かるように、ドバイやサウジが熱心に売り込むミドルディスタンス競走では最も激しい有力馬の取り合いが繰り広げられている。それに比べ、強豪スプリンターは比較的安い賞金でも勧誘することができる。

 またアスコットは、日本と香港の調教馬にとって実力を発揮するのが難しい場所である。とはいえ、挑戦した馬はほとんどいないのが実情だ。

 強豪馬が参戦するのであれば、香港での関心が高まり、ワールドプールの発売金は増加するだろう。またJRA(日本中央競馬会)は現在のところワールドプールに参加していないが、自国のプールで馬券を発売すれば、開催競馬場に配当が支払われる。このような海外馬券発売は、日本調教馬が出走しなければ政府によって許可されないものだ。

 そして、アスコットは英国に世界一のレースをもたらすという目標を掲げていることも重要である。これはヨーク競馬場、グッドウッド競馬場、ジョッキークラブが所有する競馬場も同じである。

 ニック・スミス氏は競馬国際化の偉大な提唱者のひとりと考えられている。また英国の主要競馬場の役員たちも世界各地でホースマンたちに会い、英国最高級のレースに馬を出走させるというアイデアを売り込むことに努力を惜しまない。しかし、賞金格差の拡大は彼らの任務をより困難なものにしている。

By Scott Burton

(1ポンド=約200円)

[Racing Post 2024年6月4日「Prize gulf hits efforts to attract global stars to Ascot」、「Prize-money and geography make middle-distance races a tough sell」]


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