メリーランド州でゲーム機ヒストリカル・ホースレーシング関連法案が審議(アメリカ)【開催・運営】
メリーランド州上院予算税制委員会は3月5日、メリーランド州内のスポーツ賭事指定場所に最大4,000台の「ヒストリカル・ホースレーシング(HHR)」の端末機を設置することを認める法案について、賛成派と反対派による討論を行った。
この端末は、スポーツ賭事を行っているロングショットやティモニアムのような場外馬券発売所(OTB)と競馬場に設置されることになる。ついで実店舗型のスポーツ賭事施設でもあるスタンダードブレッドのローズクロフト競馬場にも設置される予定である。なお、現時点ではローレルパーク競馬場とピムリコ競馬場はスポーツ賭事を提供していない。
カジノ関係者の反対に直面しているため、上院法案982と同様の法案である下院法案1048は、たとえ有利な報告を受けて委員会を通過したとしても、法案が可決される可能性は低いと思われる。
サラブレッド・ホースメン協会(Thoroughbred Horsemen's Association)の会長兼CEOのアラン・フォアマン氏は、委員会後の電話インタビューで次のように語った。「この法案は、競馬業界が推進する法案ではありませんし、率直に言って、この法案の書き方では、競馬業界にまったく利益をもたらさないでしょう」。
上院法案982は、スポンサーであるポール・コーダーマン上院議員によって委員会に提案された。馬券の売上減少、州外での競合、場内でのスポーツ賭事の制限によってマイナスの影響を受けているメリーランド州のOTBを支援するためのものである。スポーツギャンブルの参加者のほとんどはモバイルプラットフォームを使っての賭事を好んでいる。
HHRはスロットマシーンに似ているが、ゲームの結果は過去に行われた競走データに基づいて作られている。HHR装置を導入する背景には、顧客を施設に誘致し、レストランやホテルを支援する狙いがある。
3月5日(水)の会議では、競馬場経営者や競馬関係者の発言はなかったが、OTB数社の代表と、カジノを代表する2人の広報担当者が出席した。法案の支持者は、州への税収とOTBでの雇用創出の可能性について言及した。
「OTBのスポーツ賭事は大失敗でした。その結果、運営コストの上昇と収益の減少により、メリーランド州の店舗型OTBは維持できなくなっています。私たちは生き残り、さらに繁栄したいのです」と、ロングショットのオーナー、アリス・コーエン氏は発言した。
OTBにおける馬券売上の減少には様々な要因があるものの、そのうちのひとつには馬券購入者がモバイルや自宅での賭事にシフトしていることが挙げられる。
「しかし、OTBにおける売上減少がHHRを設置してよいという理由にはなりえません。間違ったやり方をとれば、業界全体にネガティブな影響を及ぼしうるものなのです」とフォアマン氏は述べた。
カジノ側は、新たなゲーミング形態の出現による競争激化を望んではいない。また、ゲーミング収入のシフトは、必ずしもメリーランド州のサラブレッド産業に対し利益をもたらすとは限らない。2022年、メリーランド州のサラブレッド競走の賞金に対して、ビデオ宝くじ端末(スロット)などのゲーミング端末が貢献した額は、全体の81.9%を占める約5,540万ドル(約83億1,000万円)であった。フォアマン氏によれば、現在ではカジノからの恩恵は更に高くなり、6,000万ドル(約90億円)から7,000万ドル(約100億5,000万円)に達しているという。
By Byron King
(1ドル=約150円)
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