競馬場の賞金への貢献度の低さを指摘(イギリス)【開催・運営】
アスコット競馬場とアリーナレーシング社(Arc)そして英ジョッキークラブに管理されている競馬場は、プロフェッショナルレーシング協会(PRA)がまとめた容赦ない報告書の中で、彼らの収益から賞金に十分貢献していないと非難されている。
PRAは、BHB(英国競馬公社、BHAの前身団体)の元会長ピーター・サヴィル氏によって設立され、英国の競走馬関係者の半数以上を代表する「熱心な競馬専門家たち」から構成されている。PRAは政府に介入を求め、BHA(英国競馬統括機関)が競馬収益を公正に分配するための仲裁者として行動するよう主張している。
あるいは、BHAの所有構造を、競馬場と馬関係者の共有によるものではなく、政府が自ら関与すべきであると提案している。
「抜本的な対策が必要である。なぜなら、英国競馬の現在の構造は破綻しており、無策と麻痺を招いている。この混乱を収拾できるのは政府だけだ」と報告書は述べている。
4,000ワードに及ぶこの報告書は、PRAへの情報提供に同意した競馬場のデータと、企業登記局の財務報告書を組み合わせて作成した「非常に正確なモデル」というものに基づいており、英国の競馬場による経済貢献の詳細を説明しようとしている。
この報告書の中心は、PRAがすべての競馬場に対して、目標として競馬収入の最低3分の1を賞金に拠出するように求めている点だ。これにより競馬界に1,500万~2,000万ポンド(約28億5,000万円~約38億円)の追加収入が見込めると主張している。3分の1の基準を満たしていない競馬場は、コスト管理ができていないか、利益を過剰に得ている、もしくは所有者/管理者への支払いが多すぎるのだという。
Arcの場合、利益の最大化を目的として「非常に堅実な経営」を行っていると報告書は述べている。
「このローグレードで大量の賭事を主導する収益モデルでは諸経費も少なく、Arcは余裕をもって400万~500万ポンド(約7億6,000万円~約9億5,000万円)を賞金に追加することができ、少なくとも競馬収入の3分の1を賞金に充てることができるはずだ」と付け加えている。
アスコット競馬場の場合、1レースあたり少なくとも1万5,000ポンド(約285万円)の賞金があるにもかかわらず、競馬収入に占める賞金の割合では「3番目に貢献度の低い」競馬場だった。
PRAの報告書は、アスコット競馬場による「2005年に仮設構造物、賃料、競馬場の改築に多額の費用がかかり、現在もその支払いを続けている」という説明に異議を唱えている。
さらに、「PRAの見解では、アスコット競馬場の賞金への貢献度の低さは、直接費用と間接費の管理不足に起因しているにほかならない」と付け加えた。
アスコット競馬場は2023年に590万ポンド(約11億2,100万円)の税引前利益を計上した。
2023年の営業利益が37%減の1,270万ポンド(約24億1,300万円)となった英ジョッキークラブも、収益の多くが「肥大化したコスト構造」に費やされているとされ同様の批判に直面している。
しかし、報告書では新たなリーダーシップの下で「進歩」が期待できると主張し、「コストが抑制されれば、英ジョッキークラブは少なくとも賞金にさらに500万ポンド(約9億5,000万円)を拠出できるはずだ」と付言している。
アスコット競馬場、Arcと英ジョッキークラブは報告書に対する回答を求められたが、いずれもこれを拒否した。
報告書の攻撃的な論調は、冒頭の主張に集約されている。「もしエルトン・ジョンがO2アリーナでパフォーマンスを行うとして、彼が自分のギャラについて発言権を持たず、出演を承諾した後になってその額を知らされることなどありえるだろうか?」
説明として、報告書は、馬主および馬の出走で生計を立てる関係者は、「競馬場が好きなように使い、好きなだけ利益を得た後に残った額を受け取っている」と述べている。
報告書は、BHAの50%の株主である競馬場協会(RCA)の承認なしには動くことができないため、BHAは「傍観する」こと以外に何もできていないと強調している。
また、ウェザビー競馬場に対しては先月、ストラトフォード競馬場に対しては今月、「選択的措置」を講じる計画が立てられたものの、その後棚上げされたことも明らかになった。ウェザビー競馬場のケースについては、報告書には次のように記載されている。「同競馬場の2つのレースは最低額で実施される予定だったが、その直後に突然、他のレースの賞金が削減される一方で、これらのレースの賞金が引き上げられた」
報告書で批判された他の競馬場には、インターナショナルレーシングマネジメント(キャタリック、ウェザビー、サースク、レッドカー競馬場を運営)やチェスター競馬場などが含まれているが、後者の最高経営責任者であるルイーズ・スチュワート氏の下では「正しい方向への明確な一歩」があったとも述べられている。 また、59競馬場の中で最も貢献度が低い競馬場としてカートメル競馬場が挙げられた。
更に、2023年にPRAの基準を満たした17の競馬場についても言及され、ヨーク競馬場が「際立って素晴らしい」と評された。
PRAはニューベリー競馬場が「最も改善された」競馬場であるとし、また、以前よりも開催数が減っているのは「茶番」だとしながらも、オールウェザーコースではチェルムスフォード競馬場が最も優れていると評された。
報告書では、馬主、調教師、生産者、騎手、厩務員を代表する包括的組織サラブレッドグループ(TG)が商業パートナーシップについて競馬場と協議中であるにもかかわらず、TGからの支援が不足していることに対するPRAのフラストレーションが強調されている。
PRAは、「今後数ヶ月、業界はTGが単なる合意に関する言い訳ではなく、意味のある合意を得ることができるのかどうかを見守っていくこととなるが、その間は脇で見ているほかに選択肢がなくなってしまったのだ」と述べた。
しかし、唯一の望みは政府が介入し、「BHAに競馬収益の公平な分配の仲裁者となるよう命じること、またはBHAの競馬場と競馬関係者の50:50の所有構造を撤廃する形で政府がBHAを再編すること」であると主張した。
報告書には次のように付け加えられている。「TGもしくはBHAが、馬関係者と競馬場の間で適切な財務上のパートナーシップを実現できない可能性が高い場合、政府が介入することを求めることになる」。
By Bill Barber
(1ポンド=約190円)
[Racing Post 2025年3月25日
「Ascot, Arc and the Jockey Club in the firing line as PRA report on prize-money calls for government intervention」]