BHA会長ジョー・ソーマレズ-スミス氏、健康上の理由で辞任(イギリス)【その他】
英国競馬統括機関(BHA)の1月30日(木)の発表によると、会長のジョー・ソーマレズ-スミス氏が、健康状態の悪化のために同日付けで会長職を辞任した。
2023年に肺がんと診断されたソーマレズ-スミス氏(53)は、2014年に初めてBHA理事会に加わり、2022年に会長に任命された。
6月1日にチャールズ・アレン卿が会長職に就くまでの間、BHAの上級独立理事デビッド・ジョーンズ氏が暫定的に会長を務める。
BHAによると、ソーマレズ-スミス氏は病状が悪化したとの診断を受けて辞任を決断した。彼は、当面の間、後任者への引継ぎをサポートする予定である。
ソーマレズ-スミス氏は次のように述べた。「BHAの会長を辞任するのは非常に残念ですが、癌が脳に転移し、残された時間もかなり限られていると告げられた今、すぐに次の方に手綱を渡さなければ競馬界にとり道義に反することになると感じています」
「BHAの理事を10年間務め、会長職を3年近く務めたことは、私にとって大きな喜びでした。8歳のときから愛してやまないこのスポーツで、このような重要な職を務めることができたのは、この上ない光栄でした」
「このまま留まり、がんによって私の能力が損なわれているのではないかという疑問が提起されて、後で問題となるような決断はしたくなかったのです。デビッド・ジョーンズ氏が中継ぎとして素晴らしい仕事をしてくれるでしょうし、チャールズ・アレン卿も、その申し分ない実績とこのスポーツに対する熱意で、素晴らしい仕事をしてくれると思います」。
BHAのブラント・ダンシェア最高経営責任者代理は、ソーマレズ-スミス氏が突然の辞任を余儀なくされたことは、BHAにとって大きな悲しみであると述べた。
また、次のように続けた。「彼は10年以上にわたって、BHAの会長、理事として素晴らしいリーダーシップを発揮されました。しかしそれ以上に、彼は情熱的で、献身的で、競馬というスポーツの力強いアンバサダーであり、英国競馬は彼に多大な恩義を感じています」
「ジョーとは10年以上一緒に仕事をしてきましたが、彼の賢明な助言、個人的なサポート、そしてこのスポーツへの純粋な愛情は深く惜しまれるでしょう」。
競馬場協会(RCA)は、BHA会長としてのソーマレズ-スミス氏の「在任期間の献身的で熟練した仕事ぶり」に賛辞を贈った。
RCA最高責任者のデイビッド・アームストロングは次のように述べた。「私は競馬界でのキャリアを通じて、BHAの理事会でジョーとともに働くことができ幸運でした。ジョーの競馬に関する知識と経験、特にこのスポーツとギャンブルとの関係についての知見では、彼の右に出るものはいません。会長としての彼のリーダーシップがなくなるのを大変寂しく思っています」
「ほかの重要業務の関係でも、ジョーは現在進行中の賦課金改革運動でその先頭に立っていますし、特にアフォーダビリティチェック(経済力チェック)の実施に対しては断固として反対の立場を貫いています。私個人としてもジョーの継続的な支援と友情に感謝しており、非常に困難な時期を過ごされている彼と彼のご家族には心よりお見舞い申し上げたいと思います」。
賭事評議会のマイケル・デュガー議長は、このニュースを聞いて残念に思うと述べ、ソーマレズ-スミス氏を「才能があり、素晴らしく、素敵な人物」と評した。
そして、Xに次のように投稿した。「聖人のような忍耐力で、彼は非常に困難な仕事を見事にやり遂げた。あふれんばかりの品格と誠実さ。選ばれし王子。競馬界にとっての損失。多くの愛情と幸運を彼に祈る」。
アリーナ・レーシング・カンパニーのマーティン・クラッダース氏もまた、ソーマレズ-スミス氏に賛辞を送った。「ジョーの退任を知り、信じられないほど残念に思います。BHAの理事や会長として、彼は情熱を注いできたこのスポーツが花開くための確固たる土台の構築に尽力してきました。私はこの間、ジョーとは緊密な協力関係にありました。彼が英国競馬界に果たしてきた多大なる貢献を鑑み、どうか自らを誇りに思ってもらいたいです」。
追記:英国競馬はジョー・ソーマレズ-スミス氏に感謝しなければならない
ジョー・ソーマレズ-スミス氏が直面している健康問題の深刻さは、2023年に彼が癌と診断されて以来周知の事実であったが、突然の辞任を余儀なくされたことに、いまだに衝撃が広がっている。
その理由は、この1年半の間、彼がBHA会長の職に注いできた熱量と努力、そして献身にある。つい2週間ほど前、ウェストミンスターで開催された議会のレセプションで、英国競馬のために先頭に立ってスピーチを行ったばかりだった。
ソーマレズ-スミス会長の任期が5月に終了するのに伴い、昨年6月にBHA会長職の公募が行われた際、候補者には週2日の勤務が求められた。ソーマレズ-スミス氏は大小さまざまなレースやイベントに常に出席しており、彼が週5日に満たない勤務をしたことがあったとすれば、それは驚きである。
ソーマレズ-スミス氏は2022年にBHAの会長に就任したが、競馬界は数々の重要課題に直面しており、その中には存続の危機をもたらすものもあった。ビジネスパーソンとして賭事業界に精通し、馬券購入者としての経験も持つ彼は、アフォーダビリティチェック(経済力チェック)が競馬にもたらす脅威を十分に認識し、それに力強く反論した。
ソーマレズ-スミス氏はまた、ベッティング業界との話し合いの後、英国競馬が賦課金改革を実現しようとする試みにも深く関わっていた。プレスリリースの草案も準備されていたと報じられた。しかし、合意寸前までいったにもかかわらず、昨年リシ・スナク首相が総選挙を宣言したことで、頓挫したことは非常に残念だ。
BHAのジュリー・ハリントン氏、ジョッキークラブのネヴィン・トゥルースデール氏、グレート・ブリティッシュ・レーシングのロッド・ストリート氏など、多くの役員級が退任するという混乱もまた英国競馬界を揺るがした。
こうした移行期において、自身の健康状態が悪化し残された時間が大変貴重なものとなる中で、ソーマレズ-スミス氏は必要とされる安定性とリーダーシップを我々にもたらした。
英国競馬は、彼に感謝しなければならない。
By Bill Barber
[Racing Post 2025年1月30日「BHA chair Joe Saumarez Smith to step down with immediate effect due to ill health」]