"ブラックマーケット"アクセス急増への強い懸念(イギリス)【開催・運営】
英国の競馬賭事客による無認可ブックメーカーへのアクセス数が大幅に増加していることを受け、英国競馬統括機関(BHA)はブラックマーケットの脅威が現実のものになりつつあるとの声明を発表した。
国際競馬統括機関連盟(IFHA)によって発表された違法賭事とそれに関連した犯罪についての報告書によると、英国競馬を取り扱う22の無認可ブックメーカーのサイトへのユニーク顧客数(重複を除いた正味のアクセス数)は、2021年8月から2024年9月の間で実に522%も増加したという。
これに対して、競馬を取り扱う10の合法ブックメーカーサイトへのユニーク顧客数は、同じ期間で49%の増加に留まった。
違法サイトへの英国内からの総アクセス数は、2021年8月から2024年9月の間で131%増加しているのに対し、合法ブックメーカーへの総アクセス数の増加率は25%だった。
また同報告書は、これらの22のサイトは英国賭事客がアクセスする違法賭事マーケットの中では決して多数派というわけではなく、上述の数字はあくまで氷山の一角としている。
そして英国競馬を取り扱う無認可サイトへの英国からのアクセスは「小さな規模からではあるものの著しく拡大し、合法の市場よりも速いスピードで成長している」と付け加えた。
競馬界の指導層やブックメーカーらは、前政権がギャンブル政策見直しの一環として提案し、2023年白書で打ち出したアフォーダビリティチェック(経済力チェック)が顧客をブラックマーケットに駆り立てる恐れがあるとして警鐘を鳴らしてきた。すでに実施されているチェックも大きな影響を及ぼしている。
政府と賭事委員会(訳注:英国における賭事の規制と賭事法の監督を行う非省庁的な公的機関)が昨年12月に発表した数字によれば、英国における馬券発売金は過去2年間で16億ポンド(約3,040億円)下落しており、インフレ率を考慮に入れればその下落幅は30億ポンド(約5,700億円)にも及ぶ。また、BHAが2023年10月に14,000人以上の競馬賭事客を対象に実施した「"賭事の権利"(Right to Bet)調査」では、その10人に1人がすでにブラックマーケットを通じて賭けを行ったことがあると判明している。
IFHAの報告は、英国における直近の規制動向との直接的な因果関係は認められないとする一方で、「無認可マーケットというオプションへの英国の賭事客の需要が明らかに増加している。このことは、合法的な市場を過剰に規制することが消費者を無認可の市場に向かわせる可能性があるという他の調査結果とも呼応する。これは善意の規制当局が目指した方向とは全く逆の効果を生んでいると言える」とした。
BHAのブラント・ダンシェア最高経営責任者代理は次のようにコメントした。
「賭事法の見直しが始まった当初から、英国競馬界は善意の政策決定が我々のスポーツに及ぼす意図しない結果について繰り返し警告してきました。その中には、無許可市場の活動を意図せず拡大させてしまうことも含みます。今回の調査は、その強く懸念される脅威が現実となりつつあることを、確かに示しています」
「合法マーケットから無認可のマーケットへ移行する全ての競馬賭事客は、自ら消費者の権利とその保護を縮小させ、リスクを高めています。無認可の業者は、英国競馬に関わる人々や国庫に貢献することもありません」。
ダンシェア氏は、BHAは賭事委員会による取り締まり強化を注視していると述べた一方で、「ブラックマーケットへの顧客流出が増加していることに鑑み、これらの調査結果を政府と共有した上で、顧客が合法な市場にとどまることを奨励するよう政府からの協力を望んでいます」と述べた。
「この調査結果は、顧客が安全に干渉されずに競馬を楽しんでもらうためには、偏りがなくバランスの取れた規制がきわめて重要だということを改めて教えてくれます」と同氏は続けた。
IFHAの報告書によれば、2024年4月頃に無認可市場における活動が急増した主な原因は、ほぼある一つの業者に起因するものだったという。利用した顧客達は、英国のガムストップ自己排除スキーム (Gamstop self-exclusion scheme / 訳注:オンライン賭事利用を抑制したい顧客自らが利用制限を登録するスキーム)に登録された者であっても利用できる賭事業者を宣伝するサイトから、大量の紹介トラフィックを受けたのである。
2024年2月から7月の間に違法賭事業者のページにアクセスしたユーザーの16.75%が、そのようなサイトを介してのものだった。
「つまりこのアクセス急増のうち多くを占めていたのは、ガムストップにブロックされないウェブサイトを探していた顧客達だったということだ。これは、無認可の賭事業者がしばしば最も脆弱な顧客―すなわち、合法的な賭事へのアクセスを自発的に遮断するよう求めた人々を積極的にターゲットにしているという事実を浮き彫りにするものだ」と、同報告書は付言している。
賭事・ゲーミング協議会(Betting and Gaming Council: BGC)のCEOを務めるグラニア・ハースト氏は、これらの数字について「実に懸念すべきデータ」と表現し、「私たちが長きに渡って警告してきた憂慮すべき傾向が現実となっています」と述べた。
「違法賭事のブラックマーケットが拡大し、もはや合法の市場を凌ぐ勢いであることは明らかです」と同氏は続けた。
「直近BGCが資金援助を行って実施した画期的な調査によれば、およそ150万人の英国人が約43億ポンド(約8,170億円)をブラックマーケットでのギャンブルに費やしていることが分かっています。これらの違法業者が安全なギャンブルを奨励することはなく、スポーツとしての競馬を支援することもなければ、国庫に1ペニーたりとも納めることもないのです」
「我々はもうはっきりと分かっています。バランスの取れた規制と安定した税制が、ブラックマーケットに対する最良の防御策です。それが実現しない場合、数字は悪化の一途をたどり、私たちの業界や競馬をはじめとしたスポーツに対し、広範囲にわたる悪影響を及ぼすことになるでしょう」。
By Bill Barber
(1ポンド=約190円)
[Racing Post 2025年2月12日
「Explosion in black market gambling as unregulated betting site traffic surges 522 per cent」]