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No.12 - 1
発売金の大幅減少を受け賭事委員会が非難の的(イギリス)【開催・運営】
2024年12月24日

 英国競馬界の有力者たちはいっせいに、発売金が予測値を30億ポンド(約5,850億円)下回った責任は、"説明責任を果たさず統制が取れていない"賭事委員会(Gambling Commission 英国における賭事の規制と賭事法の監督を行う非省庁的な公的機関)にあるとした。

 3月末までの1年間の公式統計が発表されたことを受け、このような非難の声があがった。統計によると、オンライン発売金は2年前の100億ポンド(約1兆9,500億円)前後から83億7,000万ポンド(約1兆6,322億円)に減少していた。この時期の物価上昇率に合わせた発売金予測値115億ポンド(約2兆2,425億円)からは30億ポンド(約5,850億円)あるいは25%以上下回る。

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 全国調教師連合会(NTF)、馬主協会(ROA)、競馬場協会(RCA)などは共同で声明を出した。アリーナレーシング社(ARC)のCEOマーティン・クラッダス氏はその中で、賭事委員会が経済力チェック(アフォーダビリティチェック)を義務づけたことで始まった発売金の急減に対する"重大な懸念"を説明する書簡を、もうすぐキア・スターマー首相とリサ・ナンディ文化・メディア・スポーツ相に送付するつもりだと述べた。

 クラッダス氏はこう語った。「率直に言えば、賭事委員会はますます説明責任を果たさず、制御不能になっているように見えます。さらに、現在の経済力チェックが賭事依存症率に歯止めをかける効果があるという証拠を示せていません」。

 「賭事委員会が、マクドナルドのハッピーセット(お子さまセット)や映画のチケットなどさまざまな日常的な出費に相当する一日当たりの最低馬券購入額への経済力チェックを導入したいと考えているのは確かです」。

 「前政権は賭事委員会および賭事業界と、より良識ある一連の暫定措置について合意していました。しかしマネーロンダリング対策を理由にそれらを実行に移していませんでした」。

 競馬賭事賦課公社(Levy Board)とBHA(英国競馬統括機構)は、競馬界の財政は圧迫されるばかりだという。また、賭事委員会の統計の対象期間が終わった後も発売金の減少傾向は続いていると注意喚起した。BHAは今年に入ってから8月末までに発売金が9.5%減少したと明らかにしている。

 これは統計の対象期間である過去2年間(2024年3月まで)の平均減少率8.5%と比較すると、実質的に馬券購入活動がますます減退している可能性があることを示唆している。

 賭事委員会の統計の分析によれば、毎年8.5%ずつ減少すれば2年以内に発売金は70億ポンド(約1兆3,650億円)まで落ち込む。一方、ブックメーカーの現在の収益性を維持するために必要なマージン(利鞘)は2021-22年には7.3%だったが、11%にも達するだろう。

 また、賭事業界の経済力チェックとほかの規制強化が、グレイハウンドレース、サッカー、オンラインスロットなどの賭事よりも、馬券発売にいっそう不均衡な影響を及ぼしていることが示されている。クラッダス氏はこの規制環境が英国競馬界の国際競争力を低下させると考えている。

 クラッダス氏はこう続けた。「世界中のあらゆる競馬開催国には経済力チェックという概念がありません。彼らは当惑しながら英国を見て、英国政府が競馬の衰退をどのように監督できるのか不思議に思っていることでしょう。このスポーツは社会のあらゆる部分に喜びを与えると同時に、英国に数十億ポンドもの経済効果をもたらしているのです」。

 発売金の急激な減少は放映権や賦課金などの収入源に連鎖的な影響を及ぼし、賞金額にもダメージを与えている。調教師は利益減少に加え、物価上昇や賃金引上げ、そして競馬界全体に影響を及ぼすことになる雇用主負担の国民保険料の大幅増加とも闘わなければならない。

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 NTFのCEOポール・ジョンソン氏は発売金の減少を受けてこう語った。「多くの調教師の事業にとって政府が発表した予算案がどうしようもないものであることは事実です。ただ少なくとも政府は特定の予算問題の解決に努めていて、全般的に私たちが直面するプレッシャーについて競馬界の意見を聞く用意があることは認識できます」。

 「しかし賭事委員会については同様には語れません。私の見解では、説明責任を果たさず運営されている組織であり、競馬界とこのスポーツに依存するすべての事業に取り返しのつかない損害を与えつつあるのです」。

 また、ジョンソン氏は経済力チェックの規制対象となっている賭事から多くの顧客が遠ざかっていることは、"競馬のプレミアム化(訳注:競馬というスポーツのトップレベルを披露する試み。強豪馬が競い合う最高級レースの提供を目指す)"のような取組みをつうじて不運を逆転させようとする競馬界の努力を土台から壊すようなものだと考える。

 ジョンソン氏はこう続けた。「競馬界はいくぶんリーダーシップが分散していて、将来を守るために一丸となることが必要だという認識はあります。私は変化のペースが遅すぎるという意見を表明してきましたが、少なくとも競馬界が自助のために協力しようとしていることを強調するのが大切です」。

 「しかし、賭事委員会が賭事活動への規制を強化したことで、多くの顧客が遠ざかりました。この影響を相殺するために私たちにできることはほとんどありません。その規制は皮肉にも、比較的少数の顧客を保護することを目的としたものです」。

 クラッダス氏は政府に、RCA、ROA、NTF、ジョッキークラブ、サラブレッド生産者協会(TBA)、騎手協会(PJA)、英国厩務員協会(NARS)の連名で書簡を送付する予定だと述べた。

By Jonathan Harding

(1ポンド=約195円)

[Racing Post 2024年12月4日「British racing lays blame for £3bn black hole at door of 'out of control and unaccountable' Gambling Commission」]



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