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No.12 - 5
ジョン・スチュワート氏の口だけでなく資金も出す馬主活動(国際)【その他】
2024年12月24日

 ジョン・スチュワート氏は馬を購買するにも、メディアからの質問に答えるにも、中途半端なことをしない。

 スチュワート氏のようなやり方で競馬界に参入した馬主はほとんどいない。12月7日(土)、彼はフランスのドーヴィルを初めて訪れ、アルカナ社繁殖セールでG3勝馬エクセレントトゥルースを160万ユーロ(約2億5,600万円)で購買した。

 スチュワート氏は売買契約書にサインしたあと、サラブレッド市場の動向に関する自らの見解と、サラブレッドを評価する際にとっている型破りなアプローチについて語った。

 「競馬産業について気づいたのは、一握りですが、市場最高価格の馬を買う購買者がいるということです。この市場は常に勢いがあります。しかし私は投資を生業にしていて、未公開株式投資会社を所有しています。投資にはいつもお金がかかりますが、質の高い資産を購入するほうがリスクは少ないのです」。

 「かなり多くの馬を購買しているので、一頭一頭の価格については無関心です。ポートフォリオ、つまり株のように見ています。一頭を購買するのに希望よりも50万ユーロ(約8,000万円)多く支払うことになるかもしれません。しかしその一方では、別の馬を20万ユーロ(約3,200万円)安く買うこともあります。全体をとおして、いくら費やし、そこから何を得たかを検討します。ちょっと違う考え方をしているにすぎません」。

 この戦略は、所有馬を国際舞台で競わせるという決定に結びついており、2024年にスチュワート氏はサラブレッド業界全体に大きなインパクトを与えた。

 スチュワート氏の1歳馬購買ミッションは世界的な取組みだ。イングリス社イースター1歳セールでは544万豪ドル(約5億1,680万円)を支出したが、ウィンクスの牝駒をめぐって競り負けたことは有名だ。その牝駒は最終的に1,000万豪ドル(約9億5,000万円)で落札され、豪州記録を塗り替えた。また、スチュワート氏はファシグ・ティプトン社のサラトガセールで11頭を908万5,000ドル(約14億818万円)で購買し、彼のエージェント、ギャヴィン・オコーナー氏はキーンランド9月セールで13頭を手に入れるために842万5,000ドル(約13億588万円)を支出した。さらにスチュワート氏は8月のアルカナ社1歳セールで3頭を217万ユーロ(約3億4,720万円)で購買した。

 選りすぐりの現役馬も獲得している。イングリス社チェアマンズセールでは豪州のG1・2着馬トゥッタラヴィータを320万豪ドル(約3億400万円)で手に入れ、非公開取引でキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)優勝馬ゴリアットの所有権も75%取得した。

 12月前半の欧州開催の繁殖セールで、スチュワート氏は競走馬としての活躍が期待される牝馬に注目している。12月3日(火)にはタタソールズ社のセプターセッション(最高級の競走牝馬・繁殖牝馬が上場されるセッション)で5頭を626万5,000ギニー(約12億8,276万円)で購買した。その中にはマルセルブサック賞(G1)優勝馬ヴァーティカルブルー[320万ギニー(約6億5,520万円)]も含まれる。

 スチュワート氏は最近多くの馬が7桁(100万ドル以上)で購買されているのを目の当たりにしてこう語った。

 「競馬産業にとって素晴らしいことです。生産者や1歳馬購買者であれば、馬がレースでなかなかの成績を収めたなら、いつの日か高額賞金を獲得することを望むでしょう。なぜなら、収入の範囲内でやりくりするのはとても難しいからです。牝馬の場合は特にそうです。種牡馬は大当たりしたら大金をもたらしますが、牝馬の価格を引き上げることは、サプライチェーン全体に還元することになるので、業界にとって本当に良いことです。誰もが得をするのです」。

 セリで散財しているだけではない。スチュワート氏のレゾリュート・レーシングの服色で出走したパウンス(Pounce)はG3勝利を収めている。また彼はメリーベルステーブルと共同でニューヨークS(G1)優勝馬ディディア(Didia)を所有している。

 さらにケンタッキー州ミッドウェイに1,000エーカーのレゾリュート・ファームも所有している。ここはかつてシャドウェル帝国の一部だった。繁殖牝馬群にはブリーダーズカップ競走で勝利を挙げたキャラベルやグッドナイトオリーブがおり、傑出馬のフォルテ(2022年エクリプス賞最優秀2歳牡馬)やメイジ(2023年ケンタッキーダービー優勝馬)の母もいる。

 スチュワート氏の馬主としての活動には利他的な面もある。サラブレッドのアフターケアに多大な貢献をしており、日頃から競馬ファンとの関係性の強化を盛んに主張している。そして両方の分野について口だけでなく資金も出している。

 彼はブリーダーズカップ開催のボックス席に120人のファンを招待した。また最近ではゴリアットのジャパンカップ(G1)挑戦に先立ち、無料グッズを配布するとSNSで呼びかけ1,000人以上のファンが殺到し、あやうく暴動に発展しそうになった。

 スチュワート氏はこう続けた。「まだ始めたばかりです。大きな計画があります。2024年に私が多くのことを成し遂げたと考える人がいるなら、2025年に何をするかは想像もつかないでしょう。世界中で競馬に注目してもらおうとしているだけです。何をやろうとしているかについて多くの発言をしています。ただそれは傲慢な態度ではなく、多くの人が競馬産業は衰退しつつあると言うなかで、業界に投資する人がいることや、新しいファンが参入して多額の投資を行っていることに気づいてもらいたいだけなのです。私は競馬が衰退しているとは思いませんが」。

 ミドルグランドキャピタル社の創設者兼マネージングパートナーであるスチュワート氏は、競馬への関心と職業生活を比較し、他者の懐疑心を目標達成の動機としてきたと述べる。

 「私が金融学の学位を取得していないので、誰もが『未公開株式投資会社を立ち上げるなんて無理だ。きみには金融学の学位がないので、誰も投資しようとは思わないだろう』と言っていました。それでも350回も会議を重ね、最初のファンドに22人の賛同者を集めました。"無理だ"という人々の声をバネにしたのです。否定的な意見が多いほど、決意を固めるのです」。

 しかし、スチュワート氏のSNSでの無遠慮な物言いや自己主張の激しい性格、セリでの浪費戦略に、競馬界の誰もが好意的なわけではない。

 12月上旬の彼のセリでの購買ぶりも、X(旧ツイッター)で有名馬主のマイク・リポール氏やLNJフォックスウッズ社のジェイミー・ロス氏の嘲笑を買った。

 「今日アルカナ社のセリで起こったことを受け、実際、これからやろうしていたことへの意欲が倍増しました。今後実践するやり方は、馬に競馬場で実力を証明してもらうというものです。つまりレースで勝ってもらうのです」。

 スチュワート氏は、批判に屈することなく自分のやり方を貫いた過去の例を挙げた。

 「昨年、ある馬主に呼び出され、あなたは自分のやっていることを分かっていないと言われました。『それなら、競馬場に来たときにウィナーズサークルに連れて行ってあげますよ』と言いました。彼は知らなかったようですが、私は昨年、ファシグ・ティプトン社のデジタルセールでパウンスを購買していました。10日後のG3競走でパウンスは彼の馬を負かしました。それからG1のニューヨークSではディディアが彼の馬を破りました。私の馬は彼の馬と対戦するたびに勝つのです」。

 「ファシグ・ティプトン社のサラトガセールでは、私は故意に彼のすぐ後ろに陣取りました。それで彼が何をしているかしっかり観察できました。彼は私に競り勝つと豪語するような人でしたが、実際そんなことはできません。ポートフォリオの観点から、私は買うと決めたら、ちょうどこの馬のように、その場で買うのです。200万ユーロ(約3億2,000万円)までは行けたかもしれませんね」。

 彼はこう付言した。「160万ドルの馬と200万ドルの馬の違いは分かりません。160万ユーロで良い馬なら、200万ユーロでも良い馬です。そういうことなのです」。

By James Thomas

(1ドル=約155円、1ユーロ=約160円、1豪ドル=約95円、1ポンド=約195円)

[Racing Post 2024年12月8日「'If anybody thinks I did a lot in 2024, they've no idea what I'm doing in 2025!' - John Stewart on spending strategy and proving doubters wrong」]



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