第40回アジア競馬会議の第2日目(8月29日)に参加した各国代表者は、アジア競馬連盟(ARF)加盟国の競馬の現状について寄せられた意見を耳にした。そのほとんどが前向きな内容だった。
800人以上の代表者たちは数々の競馬国からの活気に溢れる報告に聞き入った。それには競馬の国際舞台で台頭しつつあるサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、悩みを抱えながらも、比較的小さいが重要な一歩を踏み出した南アフリカやニュージーランドなど小規模な競馬国が含まれる。
しかし、それらの報告に賛辞が送られた背景には元メンバー国であるマカオとシンガポールの競馬終焉があり、競馬の「ソーシャルライセンス」の確保という会議のテーマを生みだした。
一日をつうじてアジア競馬連盟(ARF)の加盟国のあいだでの連携という暗黙のテーマがあった。
エミレーツレーシングオーソリティ(ERA)の社長、モハメド・サイード・アル・シェヒ殿下はドバイにおける競馬の発展の概要を説明し、ドバイの「馬の輸出入における地域最大のハブ」としての地位をアピールした。
その役割は重要である。世界市場において中東競馬の地位は過去10年に急上昇し、馬輸送のインフラの大きな変更が求められている。
サウジアラビア・ジョッキークラブ(JCSA)の戦略担当理事、トム・ライアン氏もその点を強調した。「サウジカップ(G1)創設以来、16ヵ国から350頭以上がリヤドに遠征しています。サウジカップのプログラムの国際的な魅力を最大限に高めることを目標としています。香港や豪州からの参戦も望んでいます」と彼は述べた。
ライアン氏はJCSAのビッグレースデーであるサウジインターナショナルH開催日に、国際格付けにおいて低い地位の競馬国からの馬に限定したレースを含むことも宣伝した。それらの国の多くはARF加盟国である。
ライアン氏は「それらの国がビッグデーの舞台で輝く機会をもたらすでしょう」と述べた。
小さい国の小さいステップも会議の舞台で輝くチャンスを得た。
競馬統括機関ニュージーランドサラブレッドレーシング(New Zealand Thoroughbred Racing)のCEOブルース・シャロック氏は、「ニュージーランド競馬界はさまざまな理由からここ数年にわたって業績不振でした」と述べた。
2023年に賭事業者であり制作会社でもあるエンテイン社と25年間の提携契約を締結したことで希望が見えてきた。シャロック氏によると、1年足らずで賞金額は30%増加し、存在感が高まり、競馬日程が最適化されたと述べた。
2025年には「NZBキーウィ」が初めて実施されることでさらに盛り上がるだろう。このレースは豪州のジ・エベレストと同様に出走枠を販売することで、南半球で最も高額の賞金を提供する3歳限定レースになると予想されている。
シャロック氏は「NZ産の優秀な3歳馬がいるなら、ぜひご連絡ください」と語った。
南アフリカは最高に輝かしい笑顔を見せた。というのも、南アフリカ馬衛生・協定局(South African Equine Health and Protocols:SAEHP)の社長であるエイドリアン・トッド氏が、国際市場から南アフリカを10年以上締め出してきた欧州連合の煩わしい輸出規制が今年初めに緩和されたことについて説明したのだ。
トッド氏は「本日ここに立って、『南アから馬を輸出するつもりです』ではなく、『南アから馬を輸出しています』と言えるのを大変光栄に思います」と述べた。そして、市場の開放が南アの生産界と競馬界への投資に拍車をかけることになるだろうと予測した。
トッド氏は、ARFの中心的存在である香港ジョッキークラブ(HKJC)が輸出規制を変更するキャンペーンのために進んで資金提供したことを指摘した。そして「今回達成したことがほかの市場にも拡大するのを願っています」と付け加えた。
代表者たちは午前中のセッションの一部で、違法賭事市場の拡大とそのテクノロジーの技量、それが正当な馬券収入を浸食していることについてゾッとするような報告に耳を傾けた。
ARF違法賭事及び関連金融犯罪対策協議会のジェームズ・ポーティアス氏は、「テクノロジーが違法賭事を加速させています。違法賭事業者は何の抵抗もなくテクノロジーを駆使します」と述べた。
ポーティアス氏によると、違法賭事組織は納税せず、規制順守のための費用も支払うことなく運営されているため、ギャンブラーに多額の払戻金を提供できるという。また若者をターゲットしたものを含め、無数のインターネットチャンネルをつうじて新規顧客を獲得するためにテクノロジーを駆使しているようだ。
なぜ政府はそのようなウェブサイトをブロックできないのかと聞かれ、ポーティアス氏は、「実際にブロックしているところもあります。ただ基本的にモグラたたきのような挑戦なのです。『ABCBet.com』をブロックしたら、すべての顧客はただちに『123Bet.com』に乗り換えます。サイトをブロックすることの有効性には疑問の余地があります」と述べた。
国連薬物犯罪事務所からの専門家を含め、パネルに出席した専門家の誰ひとりとして、この脅威に立ち向かうための提案を出さなかった。違法賭事市場で活動するフィクサーになりうる人々からの脅威に対して、競馬の公正を確保するためにテクノロジーを駆使するべきだと何人かが提案した。
By Bob Kieckhefer
[bloodhorse.com 2024年8月30日「Asian Racing Conference Hears Members' Positive News」]