本紙は本日、英国競馬場のいくつかの検量室がひどい状態にあることを白日の下に晒す。極端な事例では、騎手がトイレの小便器の真横でエアロバイクを漕いで減量を行わざるを得ないというような状況もみられた。
合意された許容水準まで検量室を改善することがあまりにも遅れているため我慢の限界に達した騎手たちは、特定の競馬場で彼らが直面している深刻な問題を本紙に語った。
その中には、湿気やカビの問題、お湯の使用量が限られていること、危険な器具の配置、窮屈で不十分な女性騎手用の設備などが含まれる。ある騎手は、それらの施設の水準は「我々をプロのアスリートのように扱わない」この国の競馬というスポーツを反映していると語った。
その結果、プロ騎手協会(PJA)は現在BHA(英国競馬統括機関)に対し、来年末までに検量室の設備が合意水準を満たすことを競馬開催の許可条件にするよう要請している。
障害騎手のコナー・オファレル氏は、G1競走のチャンピオンハードルを制したローカン・ウィリアムズ騎手がバンガー競馬場の検量室で、小便器の横に置かれたエアロバイクでウォーミングアップをしているショッキングな写真の背景について説明した。
「小便器と個室の間にある、尿の臭いのする場所です。ギリギリまで体重を落として、汗をかいて喉が渇いているのに、臭いのことしか考えられないのです。品位を落とすという言葉が適切かどうかはわかりませんが、競馬場がその状態を許可しているのは、プロ意識に欠けるとしか言いようがないです」。
「バンガー競馬場にはエアロバイクが2台あるのですが、もう1台は検量エリアへつながる狭いS字型の通路に置かれています。そのバイクを使っていると、常に人が横を行き交い話しかけてきます。汗をかいて体重を減らそうとしているときは、自分ひとりで集中したいものです。トイレでエアロバイクを漕いでいるときも、トイレを使用しに人が入ってきますから、常にひとりでいられるわけではありません」。
「競馬場からは他にバイクを置く場所がないと言われましたが、検量室の裏にはプレハブ小屋か密閉式のテントを置くのに十分なスペースがあります」。
ジョッキーたちは他にも、荒廃したあるいは不適切な状態にある施設について数多くの不満を本紙に寄せている:
● 女性騎手は、男性騎手と同じようにバレットを利用するためには、今でも定期的に男子更衣室に入る必要がある
● カビや塗装の剥がれなどの問題が複数あり、PJAが指摘した際に一度対処されたのみである
● シャワーの隣に洗濯機が設置されており、感電や火災の危険性がある
● お湯の出が断続的、あるいは限られた量しか出ない。その一方である競馬場では夏に「やけどするほど熱い」お湯が出る
● 女性騎手の更衣室は、ほうき箱ほどの大きさしかない
先週末に引退した女性騎手ヘイリー・ターナー氏は、騎手たちが今になって検量室の設備について苦情を公にしなければならないのは「恥ずべきこと」と感じていながらも、もっと早く公表していればよかったと思っている。
彼女は本紙にこう語った。「私は20年間ジョッキーとして騎乗し、その間にたくさんの愚痴をこぼしましたが、何も改善されませんでした。競馬場はどうしてこんな状態を放置できるのでしょうか。私はBHAに何度も手紙を書いて変化を訴えました。いまだにこれほど状況が悪いのはBHAにも責任があると思っています。騎手は調教師と同様、ライセンスを取得するために多くのことをクリアする必要がありますが、競馬場は信じられないほど低い基準を満たしただけでライセンスが付与されているように感じます」。
「競馬場は問題を放置したままにしているのは、BHAがそうさせているからなのです。競馬場が、今よりも高い基準を満たしているべきで、そうでないならば開催を許可されるべきではありません」。
「公に訴えて競馬場に恥をかかせることになったのは残念です。しかし、今思えば、もっと早くそうしていればよかったです。私はキャリアを通じて競馬を守り、宣伝することに努めてきました。常に正しい行動と発言を心がけてきましたが、こういう事態になっていることに対して競馬場側もサポートしてくれなければ、私としてはかばいきれません」。
PJAの競走担当理事であるデール・ギブソン氏もターナー元騎手の懸念に同調した。
「競馬場と競馬関係者にはそれぞれ異なるルールが適用されているようです。騎手や調教師はライセンスを取得するために数多くのハードルを越えなければなりません。一方で競馬場は、商業的な見返りがないからという理由で検量室の設備をアップグレードしなくても、ライセンスを取得できます」。
2021年11月、競馬界の経営層たちは、英国競馬場の騎手施設を許容可能な水準に引き上げるために必要な作業を完了させる期限を2024年10月とすることで合意した。具体的には、更衣室、共有リラックススペース、ウォームアップ施設の改善、および各競馬場に男女共有のバレットエリアを設けることが含まれていた。15の競馬場がこの施設の近代化を完了しているものの、大半が期限に間に合わず、2030年まで完了しない見込みの競馬場もある。
ギブソン氏は、これはまったく不十分であると考え、BHAのライセンス発行権限を行使して、すべての競馬場が合意された施設のアップグレードを2026年末までに完了することを義務付けるよう要請した。これでも当初の期限より2年2ヶ月遅いことになる。
「我々は十分に辛抱強く待ってきたと思います。ジョッキークラブ、アリーナレーシング社(Arc)、そしてその他のすべての関係者に対して、残りのすべての競馬場で遅れている作業を早めるよう強く要請します。BHAによる年間ライセンス発行に関連付けて期限を設けるべきだという我々の固い信念は、理不尽なものではないと思います。2026年1月1日以降は、2026年末までにすべての競馬場が要求水準を完全に達成することをライセンス付与の要件とすべきです」と、ギブソン氏は述べた。
更に、作業をすでに完了した競馬場を手放しに称賛した。ビバリー、ブライトン、フェイクナム、レスター、マッセルバラ、ニューマーケット(ジュライコースのみ)、ニュートンアボット、ポンテフラクト、サウスウェル、ストラトフォード、リポン、トーントン、ウォリック、ウスター、そしてヨーク競馬場はいずれも必要なアップグレードを高い水準で完了した。
ジョッキークラブとアリーナレーシング社が保有する競馬場は修繕完了リストにも含まれる一方で、この英競馬界2大グループの多くの競馬場は2024年の期限に間に合わなかった。実際、ジョッキークラブの競馬場であるハンティンドン、マーケットラセン、ウィンカントンの3場では、作業が完了するのは2030年になると予測されており、その頃には多くの現役ジョッキーが騎手としてのキャリアを終えているだろう。
BHAの開催委員長であるキャシー・オメーラ氏は、業界横断的な検量室プロジェクトの監督を行ってきた立場から次のように述べた。
「すでに検量室がアップグレードされた場所では、新しいレイアウトがうまく機能しており、フィードバックもポジティブなものであることがわかっています。これは、英国全土で迅速に展開する必要があります。そして、プロジェクトに関わるすべての人が、この取り組みを支援する上で積極的な役割を果たす必要があります」。
「競馬賭事賦課公社(Levy Board)の融資制度により、競馬場を支援するためのローンが提供されています。一方で、検量室に関する承認チームは2週間に一度のペースで会合を続けています。その間、BHA、PJA、競馬場協会は、アップグレード作業が完了していない検量室に対する暫定的要件について合意しました。この合意により、性別を問わずすべての騎手が、バレット、医療室、食堂、休憩室などの必要なサービスを利用できるようになります」。
「もし、これらの暫定措置が要件に沿って実施されていない事例に気づかれましたら、迅速に対応するためにも現場にいるBHA裁決委員またはメールで直接ご報告いただくようお願いいたします」。
チェスター、マッセルバラ、バンガー競馬場の運営会社であるチェスター・レース・カンパニーのCEOルイーズ・スチュワート氏は、ウィリアムズ騎手がトイレでエアロバイクに乗っている写真について、経営陣に正式な苦情は寄せられていない、また、スペース不足のためにトイレで使用されたのだと主張した。
「エアロバイクは本来トイレに置くものではなく、その意図があって設置されたものではありません。私たちはバイクを更衣室に置くようにしていましたが、バンガー競馬場ではスペースが不足しているため、ジョッキーが時々バイクをトイレに移動させています。また、特に混雑しているときは、更衣室でバイクを使用するのは理想的ではないことも認識しています」。
「誰もアスリートがトイレでバイクを使うことが理想だとは思っていないので、代替案を考えていますが、スペースがないため館内には置けないという理解が必要です」。
「私たちは、PJAが迅速な前進を望んでいることを全面的に支持しており、マッセルバラ競馬場ではすでに作業を完了しています。アスリートに水準以下の施設を提供したいとは思っていないですし、私たちは検量室の問題を真剣に受け止めています。できる限り早急に作業を進めており、いかなるフィードバックも受け入れています」。
土曜日にバンガー競馬場で騎乗する騎手たちは、エアロバイク問題への取り組みを目の当たりにするだろう。ギブソン氏やターナー元騎手と同様に、オファレル騎手もBHAは許容レベルに達していない競馬場に対してより厳しい姿勢で臨むべきだと考えている。
オファレル騎手は次のように述べた。「プロのレベルという点において、我々は他のスポーツに大きく遅れをとっています。一般の人々が私たちにプロスポーツ選手並みのクオリティを求めているのに、競馬界が私たちをプロスポーツ選手として扱っていないのは、不公平だと思います」。
「結局は、誰が責任を負うかということに尽きると思います。BHAは、競馬場がアスリートにとって許容できる水準を満たすことを保証すべきです。競馬場が期日までに設定された水準に達しない場合は、その競馬場の免許は取り消されるべきです」。
By Lee Mottershead
[Racing Post 2025年4月9日
「'All you can think about is that smell' - the shocking conditions inside Britain's weighing rooms revealed」]