経営不振にあえぐマグナ・エンターテイメント社(Magna Entertainment Corp.: MEC)は、筆頭株主である親会社MIディベロップメンツ社(MI Developments Inc.: MIDI)からの追加融資を当然のものとして期待することはできないだろう。
3月5日、アナリストや投資家との電話会議で、MIDIの最高経営責任者ジョン・シモネッティ(John Simonetti)氏は、MECは5月31日が支払期限となっている借入金2件が返済不能となるおそれがあると述べた。その借入金とは、ガルフストリームパーク競馬場の建築資金の1億ドル(約110億円)と、MIDIからのつなぎ融資8,000万ドル(約88億円)である。同氏は、MECは競馬場の不動産を数ヵ所売却することによって負債の解消を試みているので、MIDIとしては追加資金の提供を検討すると述べたが、追加融資の確約はしなかった。
MECは独自の取締役会を持ち、MIDIとは別会社であるが、MIDIはMECの発行済み株式(議決権付き)の約96%、株式全体の59%を保有している。不動産会社MIDIは、自動車部品メーカーのマグナ・インターナショナル社(Magna International)に工場と事務所スペースを貸している。フランク・ストロナーク(Frank Stronach)氏は全3社の創設者であり会長である。
シモネッティ氏はMECが重大な局面にあることは認めたものの、競馬場の不動産は価値があるとした。
同氏は、次のように語った。「経営陣は、現在MECが難しい局面にさしかかっており、膨大な借入金による経営圧迫が容認できない段階になっていると考えています。MIDIは、支配株主として、また担保付き債権者として、MECの業績回復を望んでいます。業績回復がうまくいけば、MIDIをはじめ、MECの株主にとってまだチャンスはあると思っています。前にも述べたように、MECの保有する不動産は膨大であり、大半は大都市中心部にある立地の良い土地区画です。米国の不動産不況はご案内のとおりですが、MECの不動産は依然として極めて高い価値があり、特に都市計画が継続的に実施されているため価値があります」。
MECは資産売却の目標を6億ドル(約660億円)から7億ドル(約770億円)に引き上げたが、昨今の米国不動産市場の不況が逆風となっている。MECはディクソン、カリフォルニアおよびオカラにある資産をはじめ、ミシガン州にあるグレートレイクスダウンズ競馬場、オレゴン州にあるポートランドメドウズ競馬場、オクラホマ州にあるレミントンパーク競馬場、オハイオ州にあるシスルダウン競馬場の売却を計画している。
シモネッティ氏は、「MECにとって、ここ数年は大量の不動産を売却するには最悪のタイミングだったかもしれません。MECの不動産はまだ非常に価値があると思っていますが、市場でそれを売却するには、2007年9月につなぎ融資を決定した時に予想した以上に長くかかるでしょう」と述べた。
マイケル・ニューマン(Michael Neumann)氏が2007年6月に辞任して以来、ストロナーク氏はMECの暫定CEOとしての役目を果たしてきた。2000年以降、最高経営責任者の席にはストロナーク氏をはじめ5人が就任したが、ニューマン氏の在任期間は4ヵ月に満たなかった。
シモネッティ氏は、「競馬産業はユニークな事業であり、分かりやすい産業ではありません。本当の意味でビジネスを展開できるほど競馬産業の知識を持っている競馬関係者はほとんどいません。競馬だけの問題ではないのです。それはスロットでも、賭事でも、エンターテインメントでも同様です。競馬産業は賭客のニーズを理解しようと努めているのです。それに、ビジネスの技術的側面もあります。MECにとってそのような幅広い知識をもつ人物を見つけることは至難の技です」と述べた。
シモネッティ氏は、差し当たりMECは事態を素早く正常化できる人物を必要としている、と指摘した。
MECの損失にもかかわらず、MIDIは2007年に3,950万9,000ドル(約43億4,600万円)の純利益を計上した。それでも、MECでの事業継続は、2007年にMIDIに1,540万ドル(約16億9,400万円)の出費を強いたため、純利益は2006年と比較して2,000万ドル(約22億円)以上減少した。
By Frank Angst
(1ドル=約110円)
[thoroughbredtimes.com 2008年3月5日「Parent may not help fund Magna」]