トート社(Tote)の馬券発売所540店の不動産の処理に伴い、イギリスとアイルランドの主要ブックメーカーたちは、入札手続きの準備をしている。
ゴールドマン・サックス社(Goldman Sachs)は政府の財務顧問として、トート社の不動産売却についての提案書を作成している。同社はトート社が所有する不動産を分割して大通りに面した馬券発売所を100〜150店づつ、いくつかにまとめて売却する案を提言すると見られている。
賭事産業のベテランの情報筋は5月30日、「ゴールドマン・サックス社の意図は職業柄、対象不動産の全体を最も高い価格で売却することにあるようです。最善策は、店舗を分割して売却することでしょうし、このことでさらに多くの入札者が購入機会を得るでしょう」と述べた。
政府は1年以上前、競馬コンソーシアム(Racing Consortium)とトート社の経営陣が、馬券発売所、電話・インターネット投票および賭金のプール運営権を含むトート社全体に対して提示した入札額の約4億ポンド(約960億円)を却下した。
その後、競馬コンソーシアムは今年の初め、経済情勢の悪化にかんがみ、提示価格を下方修正し、約3億2000万ポンド(約768億円)を最終提示した。
財務省は、この提示価格を受け入れず、結局ゴールドマン・サックス社のアドバイスにより公開市場で売却することになった。
馬券発売所を売却した場合に国庫収入の半分が“競馬”のために交付される。分割売却額は、一括売却額を上回るだろう。
ガラ・コーラル社(Gala-Coral)は昨年入札額を提示して以来関心を示してきた。政府は同社などのブックメーカーが1社で一人勝ちすることを恐れている。分割売却によってその恐れが和らぐだろう。
ラドブロークス社(Ladbrokes)などが1社でトート社の不動産全体を獲得することは、独占禁止法がらみの問題を引き起こすが、その問題もなくなるだろう。
他方、トート社の馬券発売所を近隣の賭事運営業者に売却すれば、地域独占が生じ、独占禁止法を所管する機関の注意をひくことになるだろう。
トート社の不動産の分割売却はまた、入札者にとっては既存店舗構成にトート社本社の行っている事業を組み入れることができるかもしれないので、その場合は買い得になるだろう。競馬産業の関係者筋は、このケースでは、電話投票事業を保持してトート社本社の雇用を一括して維持するという政治的なご都合主義が働くかもしれないと述べた。
約5分の1の店舗はそれほど大きな利益をもたらさないというのが事情通の見方であり、政府顧問のゴールドマン・サックス社は今もなお、トート社の不動産をどのように分割するかについて微妙な判断を迫られている。
競馬賭事産業の上級管理者の中には、次のように述べる者もいる。「もしベッティングショップの一群が全国レベルで広範な店舗網にまとめられたら、弱小ブックメーカーの中にはこれに立ち向かうことができず経営が行き詰るものが出てくるかもしれません。それは独占禁止法上の争いになるでしょう」。
「また分割案が地域別に出された場合には、大手の賭事業者の中には店舗の重複の問題が生じ、入札額に影響するかもしれません。財政顧問たちにとっては厄介な問題です」。
レーシングポスト紙は5月末、確かな政府筋からの情報として、公開市場での競売をイギリスの経済情勢が回復するまで延期することもあると報道した。
By Howard Wright
(1ポンド=約240円)
[Racing Post 2008年5月31日「Tote’s betting shop estate could be broken up for sale」]