内部情報セミナーへの出席義務を果たしたニューマーケットのリーディング調教師たちは9月9日、英国競馬統括機構(British Horseracing Authority: BHA)の保安担当理事ポール・スコットニー(Paul Scotney)氏が欠席したことを厳しく非難した。
スコットニー氏から文書で、セミナーに参加せず、またはセミナーに代わる研修を修了しない調教師は、懲戒処分や免許取消しを受ける場合があるという警告を受けて、全体で32人の調教師たちがニューマーケットで開催された2つのセミナーに参加した。
そのなかには、マイケル・スタウト(Sir Michael Stoute)調教師、ルカ・クマーニ(Luca Cumani)調教師、マーク・プレスコット(Sir Mark Prescott)調教師、マイケル・ジャーヴィス(Michael Jarvis)調教師、ウィリアム・ハガス(William Haggas)調教師、デーヴィッド・エルスウォース(David Elsworth)調教師およびクライブ・ブリテン(Clive Brittain)調教師が含まれていた。しかし、多くの出席者が参加すると予想していたスコットニー氏は姿を現さなかった。
BHAは参加人数に満足しているが、他方調教師たちは8月に警告文書を出していたBHAの保安・免許担当理事であるスコットニー氏が欠席したことに不満が残る。というのは、先月スコットニー氏の指示で送付された文書の中には、“全国調教師連合会(National Trainers’ Federation: NTF)は敵意に満ち、不必要に挑発的である”という表現があったからだ。
クマーニ調教師は、「スコットニー氏は今回の紛糾をひき起こしたのだから、本人がセミナーに出席して私たちに説明する責任を果たさなかったのはおかしな話しです。私たちは時間の無駄をさせられたのです」と述べた。
スコットニー氏の出席を望んでいると表明していたハガス調教師は、「スコットニー氏が参加しなかったことには、私だけでなくニューマーケットの古参調教師のほとんどが失望しました。内部情報の取扱いに関する行動規範を作成しておきながら、本人は出席せず他人に説明を任せたのは情けないことです」と述べた。
同調教師は次のように付言した。「調教師の大多数は誠実でクリーンな人々であり、ベッティング・エクスチェンジの複雑性と危険性を十分に承知していますし、それと真正面から取り組もうと思っています。しかし、それを不正なものとして分類しようとは思いません。セミナールームにいた全員は、厩舎関係者が内部情報を悪用して管理馬が負ける方に賭けることに関するすべての行為は競馬において不正であることを承知していますし、私たちは内部情報に関するBHAの姿勢には少しばかり行き過ぎがあると感じました」。
NTFのクリス・ウォール(Chris Wall)会長は、次のように述べた。「スコットニー氏が自ら真意を説明するために姿を現していたら、納得が得られたかも知れません。参加すれば良かったのにと思います」。
「議題をよく把握していない可能性があり、BHAのメッセンジャーのような人は、今回の会議のような場にふさわしくありません。競馬界で経験豊かな人たちに来てほしかったのです」。
すでにセミナーに代わる研修を修了したウォール会長は、「今回の紛糾は、行動規範に問題があるからではなく、出席要請の警告じみた伝え方に問題があったから生じたのです」と述べた。
スコットニー氏が議長を務める内部情報問題の調査委員会では、NTFが調教師たちを代表している。現在BHAはこの委員会の決定を一連のセミナーにおいて説明しようしている。
9月9日のスコットニー氏が出席しないと決定したこのセミナーは、BHAの警備業務、プロジェクトマネージャーのヨギタ・ポパット(Yogita Popat)氏および学習・発達マネージャーのティム・ハースト(Time Hirst)氏が講師を務めた。
スコットニー氏は、「今日のセミナーの目的は、内部情報に関する研修であり、課題を討議することではありません。私たちのスタッフが講義すべき内容でした」と述べた。
同氏は、「この研修の趣旨は、多くの騎手と調教師が気づかないうちにこの領域(内部情報)の問題に関係しているということに気づいてもらう機会を持つためでした」と付言した。
[関連情報:海外競馬情報2007年No.7]
By Jon Lees
[Racing Post 2008年9月10日「Trainers upset after security chief misses seminar」]