海外競馬ニュース 2008年12月04日 - No.48 - 3
2009年から馬場状態測定器を全面採用(イギリス)[その他]

 英国の芝競馬場58場は2009年1月1日から施行するすべての開催でゴーイングスティック(GoingStick:馬場状態測定器の商品名)の測定値を使うことが義務付けられる。ところが11月12日、英国競馬統括機構(British Horseracing Authority: BHA)がゴーイングスティックを奨励するために開催したセミナーで、有名な馬場取締委員の1人が提示された馬場状態の正確性に疑問を投げかけた。

 BHAのセミナーは馬主、調教師および一般市民にゴーイングスティックについてより多くの情報を与えるために3回開催される予定であり、第1回目はケンプトン競馬場で開催された。グッドウッド競馬場の馬場取締委員であるシェーマス・バックリー(Seamus Buckley)氏は第1回目のセミナーで、ゴーイングスティックの利用についてはもっとデータを集め、賭事客と競馬関係者の双方の満足が得られるようなものにすることが望ましいと発言した。

 バックリー氏は長年、馬場状態を評価するためのさまざまな道具を用いることを支持してきた。同氏は、「私は仲間の悪口を言うつもりはありません。しかし仲間の一部に、計測結果を重視しすぎる人たちがいるように思います。ゴーイングスティックの精度は問題ないですが、関係者は計測結果だけに縛られたくないかもしれません」と語った。

 同様のセミナーが、11月13日にはラドロー競馬場で、14日にはニューキャッスル競馬場で開催される。BHAの代表者たちはその後、15日までにマイケル・スタウト(Sir Michael Stoute)調教師、ルカ・クマーニ(Luca Cumani)調教師およびウィリアム・ハガス(William Haggas)調教師と会合し、17日にランボーンで調教師全国連合会(National Trainer’s Federation)の会合において調教師たちと話し合う。

 BHAは11月10日、セミナーの出席者数とその反応に満足していたが、12日に出席した調教師は、チャーリー・モーロック(Charlie Morlock)氏とジェレミー・ネイラー(Jeremy Naylor)氏の2人だけであった。程度の差はあるが、2人とも不安を示した。

 モーロック調教師は、「最も重要なのはレースの前週あるいはレース前の48時間の降雨量です。馬場が硬いときに、表面に水を撒くことで何とでも好きな数値を作り出すことが出来るでしょう」と述べた。

 ネイラー調教師は、「馬場取締委員の助言は有益です。どこが良ないし稍重かを親切に説明してくれます。他方、ところどころ良ないし稍重であるとあまり役に立たないことしか言わない競馬場もあります」と述べた。

 同調教師は、「馬場取締委員によって馬場状態の報告に大きな違いがあります。ゴーイングスティックによって馬場状態の評価がより正確になれば良いのですが」と付言した。

 同調教師は、集められたデータは全競馬場で比較することができないと疑問を投げかけた。BHAの競馬場管理責任者であるフレイザー・ギャリティー(Fraser Garrity)氏は、「私が馬場取締委員だったころ、馬場状態の問い合わせに、良ないし稍重であると答えると、良ないし稍重であった先週と同じ状態かさらに問いかけてきたものです。私がその通りだと答えると、彼らはようやく満足したのです」と述べた。

 同氏は、「人々は馬場状態を知りたがるので、ゴーイングスティックの導入はそのニーズに対応できます」と付言した。

 25から30の競馬場は2009年の初めから、各地点における馬場状態を、コース図に表示して発表することを予定している。そしてターフトラックス社(TurfTrax)でゴーイングスティックを開発したマイク・マー(Mike Maher)氏は、「私たちはすべての競馬場で馬場状態を詳しく示したコース図が作られることを強く望んでおりますが、一部の小規模な競馬場は、当面それに投資する余裕がないでしょう」と述べた。

 BHAの競馬場計画担当理事であるティム・ニュートン(Tim Newton)氏は、「すでにデータベースの中には数十もの開催日のデータが入っており、ゴーイングスティックの使用開始に自信をもっています。10年後には数千のデータが蓄積され、その価値を強く確信できるでしょう。制度変更の趣旨は、ゴーイングスティックの客観的な計測結果によって馬場取締委員の主観的見解を補足することです」と語った。

By Paul Eacott

[Racing Post 2008年11月13日「GoingStick ‘tells the truth’ says Goodwood clerk」]