キーレン・ファロン(Kieren Fallon)騎手は、引退するどころか、18ヵ月間の国際的な騎乗停止処分をものともせず、レスター・ピゴット(Lester Piggott)元騎手が数年間の騎乗停止のあと驚くべきカムバックを果たした例を励みにしようとしている。
ファロン騎手は1月25日、2008年1月26日から2009年7月まで世界中のどこにおいても騎乗を禁止されるというフランスギャロ(France Galop)の裁定に対して、「これはちょっとした痛手にすぎません」と述べた。
ファロン騎手の顧問弁護士たちは、抜き打ち検査でコカインが出たという宿命的な失敗を犯した2007年8月19日を騎乗停止期間の開始日とするように申立てた。
騎乗停止処分を受ければ彼の素晴らしいキャリアは終わりだと一般に受け止められているのに、1月25日夜、42歳のファロン騎手は著しく楽天的に見えた。
彼は、イギリスとアイルランドにおいて、ダービーに3回、クラシックレースに21回優勝し、チャンピオンジョッキーに6度選ばれた栄光の騎手生命が終ったというそぶりは見せなかった。
ファロン騎手は、「これは悲劇ではありません。それどころか、私は間違いなく復帰します。人々が引退について語るのは大変ばかげています。私は気が若いですし、まだまだこの先多くの年数が残っています」と述べた。
クールモア牧場(Coolmore)が1月25日、短い声明の中で、多くの輝かしい成功をともにしたファロン騎手と距離を置くことを示唆したため、同騎手がアイルランドに調教のために戻ってくるとは今のところ考えにくい。
ファロン騎手は昨日、騎乗停止期間の長さは関係者に衝撃を与えるだろうとほのめかしていた。彼は顧問弁護士の上記の申立が成果をもたらすことを望んでいる。
ファロン騎手は、「競馬に復帰するために騎乗停止期間を有効に過ごすつもりです。復帰の際は、心身ともに強くなっているでしょう」と付言した。
ファロン騎手は、ピゴット元騎手と同様、その名が競馬界の外でも知られている数少ない騎手の1人である。そして、彼が抱いている野心は、ピゴット元騎手が1990年に刑務所から出所した後、54歳でロイヤルアカデミー(Royal Academy)に騎乗して1990年ブリーダーズカップ・マイルを優勝したような復活劇を果たすことだ。
「18ヵ月以上競馬から離れていた騎手は大勢います。彼らはもっと年長になってから復帰し、ブリーダーズカップなどの大レースに優勝しました」。
ファロン騎手は、裁定による騎乗停止期間が明けるときには44歳である。
1月25日夜には、ファロン騎手が最もその管理馬に騎乗し優勝しているエイダン・オブライエン(Aidan O’Brien)調教師からのコメントはなかったが、他の調教師たちからの応援の声はあった。
2006年6月に薬物検査でコカイン代謝物(metabolite of cocaine)の陽性反応が出たためにすでに2006年11月〜2007年6月の騎乗停止処分に服していたファロン騎手は、2008年1月23日、新たな長期の騎乗停止期間が課される可能性を懸念しながらフランスの競馬統括機関に姿を現した。
フランスギャロの規定・裁決委員部門のアンリ・プレ(Henri Pouret)課長は1月25日、次のように発表した。「キーレン・ファロン騎手に18ヵ月間の騎乗停止処分が課せられました。しかし、彼はすでに不服を申立てており、フランスギャロの裁定委員会は、不服申立に対応し調査します」。
「しかし、今のところ裁定委員会がいつ開かれるか決まっていません。通常騎乗停止処分は発表されてから9日後に始まります。当事者がすでに不服申立てしているので、処分内容は変更されるかもしれません」。
プレ氏は、「フランスでは裁決は個別に下されます。施行規程には薬物検査で2度陽性となった騎手には18ヵ月の騎乗停止処分が課せられるとは明記されていません」と付言した。
クールモア牧場は、ファロン騎手が約6ヵ月間の騎乗停止処分で打撃を受けたが、同騎手は2007年6月に復帰した際、月末にカラー競馬場で開催されたプリティポリー・ステークス(G1)にピーピングフォーン(Peeping Faun)に騎乗して優勝した。
しかし同騎手は、その時期八百長疑惑のためにイギリスで騎乗できなかった。ファロン騎手はディラントーマス(Dylan Thomas)を凱旋門賞で優勝に導くことができたものの、イギリスでの騎乗停止処分(最終的には無罪となった)により同騎手はキングジョージなどの名誉あるレースにおいて同馬に騎乗することができなかった。
ファロン騎手はアイルランドでの騎乗免許も保持しているが、フランスの騎乗停止処分は世界中で適用される。
英国競馬統括機構(British Horseracing Authority)の広報担当ポール・ストラサーズ(Paul Struthers)氏は、「私たちはこの問題についていっさいコメントするつもりはありません」と述べた。
ブックメーカーたちは早速、2008年4月1日現在のオブライエン厩舎の主戦騎手としてジョニー・ムルタ(Johnny Murtagh)騎手を予想のトップにあげる賭けを始めている。
ウィリアムヒル社(William Hill)の広報担当デーヴィッド・フッド(David Hood)氏は、次のように述べた。「オブライエン調教師は、ファロン騎手が騎乗できない期間にしたように、できるかぎり最高の騎手を使い続けるでしょうし、しばしば特定の騎手に騎乗依頼します。私たちはこの1年、多くのレースに優勝しているジョニー・ムルタ騎手が主戦騎手となることに3.5倍のオッズを付けています」。
By Tony Smurthwaite and Desmond Stoneham
[Racing Post 2008年1月26日「Fallon vows to return after landing 18-month drug ban」]
ジョニー・ムルタ騎手はキーレン・ファロン騎手に替わり、オブライエン厩舎とチームを組む馬主のジョン・マグナイアー(John Magnier)氏、マイケル・テイバー(Michael Tabor)氏およびデリック・スミス(Derrick Smith)氏の2008年の主戦騎手となるだろう。
キーレン・ファロン騎手は1月25日、フランスの薬物検査においてコカインの陽性反応が出たために18ヵ月間の騎乗停止処分を受けた。
ムルタ騎手は、ファロン騎手が八百長疑惑が理由でイギリスで騎乗停止になっている間、定期的にマグナイア氏とそのチームの馬に騎乗していた。
ムルタ騎手は2007年、マグナイア氏、テイバー氏、スミス氏のためにディラントーマスをキングジョージで優勝に導き、ピーピングフォーンを3度G1レースの優勝に導いた。
エイダン・オブライエン調教師は、「ムルタ騎手は、我が厩舎の一員としてすでに勝利を満喫しており、私たちは彼を迎えることを大変嬉しく思っています」と述べた。
[thoroughbredtimes.com 2008年1月29日「Murtagh to replace Fallon as jockey for Magnier, partners」]