ホースレーシング・アイルランド(Horse Racing Ireland: HRI)は11月20日、2009年賞金額を7%削減し、さらにその他の分野で一連の厳しい経費削減を行うと発表した。これは、10月のアイルランド政府の財政演説で競馬界への財政支援の削減が明らかになったことを受けて決断したものである。
ブライアン・レニハン(Brian Lenihan)財務大臣は、2009年の賞金額を420万ユーロ(約6億7200万円)削減し、同時にその他財政支援も削減すると発表した。それを受けてHRIは、競馬産業の関係諸団体への無償援助の凍結、HRIの職員賃金の据置きおよび競馬場開発計画の中断を余儀なくされたことを発表した。
HRIの最高経営責任者ブライアン・カヴァナー(Brian Kavanagh)氏は11月20日、平静を装い次のように語った。「アイルランドの競馬と競走馬生産は近年、一貫した成長を遂げてきました。この成長と成功を支えてきたのは、競馬・グレイハウンド基金(Horse and Greyhound Fund: HGF)からの長期間安定した資金提供でした」。
「聖域なき削減に努めました。賞金額は削減されましたが、まだ2006年の水準を上回っています。すべてのレースで賞金額は7500ユーロ(約120万円)を上回ります」。
「バランスを考慮し、賞金を適切な水準に維持することとしました。アイルランドのレースの賞金は、英国のよりもかなり高い水準です」。
(注)2007年1レースあたり賞金総額、アイルランド24,870ユーロ、英国20,649ユーロ
「過剰な出馬投票による除外を減らすための措置が実施されるので、馬主と調教師に対して、妥当な水準の賞金額を保つべきであると感じています」。
「HRIは引き続き政府と協議を続けます。HRIの来年の財源がどのくらいになるか分かっています。HGFからHRIへの資金拠出が毎年度行われていることは大きな利点だと思います」。
1,200人の馬主の代表組織であるアイルランド馬主協会(Association of Irish Racehorse Owners)の事務局長エイダン・バーンズ(Aidan Burns)氏は、次のように語った。「長い年月を掛けて賞金水準を向上させてきたので、今回の引き下げには失望しています。競馬産業は現役馬の頭数が増えたことで、利益を得てきたのです」。
「質の高いレースの一部について賞金額を削減することを望んでいます。ダウンロイヤル競馬場のチャンピオンチェイス競走の出走馬は少数でした。この種のレースでは出走馬の多くが賞金にありつくことができます」。
「HRIがこのようなレースの賞金を少し削って、下級のレースに配分することが望まれます」。
バーンズ氏は、「それは下級のレースに出走する馬を調教するのにも同じように経費が掛かることを踏まえれば妥当です。いくつかの種類のレースを対象とするよりも、賞金額を一律に削減するほうが公平だと思います」と語った。
アイルランド騎手協会(Irish Jockeys’ Association)の最高経営責任者アンドリュー・ クーナン(Andrew Coonan)氏は、「残念なことではありますが、予想外のことではありません。すでに騎乗料の凍結の問題が起きていますが、賞金削減からの連鎖反応が大きいのです。現役騎手だけではなく、引退騎手に支給される年金額やアイルランド騎手信託基金(Irish Jockeys’ Trust Fund)からの受益額にも影響が出るでしょう」と語った。
アイルランド調教師協会(Irish Racehorse Trainers Association: IRTA)もまた、今回の削減について“失望したが避けられない”と表現している。
IRTAの最高責任者ジム・カヴァナー(Jim Kavanagh)氏は、「高水準の賞金は調教師が最善を尽くす1つの動機となります」と述べた。
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2008年9月4日海外競馬ニュース No.35 「出走資格レーティングを厳格化(アイルランド)」
By Dave Keena
[Racing Post 2008年11月21日「Prize-money is slashed as HRI seeks major cuts」]