英国競馬統括機構(British Horseracing Authority: BHA)は、見習い騎手のマイケル・オコネル(Michael O’Connell)騎手が1月27日ケルソ競馬場で、騎乗馬に鞭痕をつけ、ルール違反と宣告されたことを受けて、騎手たちに責任ある鞭の使用をするよう改めて要請した。
ジェフ・ハーカー(Geoff Harker)調教師は、オコネル騎手をロンドンのシャフツベリー通りにあるBHAまで呼び出したことは過剰反応だと批判した。一方、この一件で、馬を虐待した騎手への処置について、BHAにまたもや圧力が加わった。
競馬における鞭の使用を禁ずるべきだと主張する下院議員マイク・ハンコック(Mike Hancock)氏が下院に質問状を提出してこの問題を取り上げたことで、議論が展開された。
ファーディ・マーフィー(Ferdy Murphy)厩舎専属のオコネル騎手は、必要以上に強く、頻繁に、また禁止されている馬体の部位に鞭を使ったと見なされた。同騎手は、スコットランドの競馬場の障害競走においてハーカー調教師の管理する牝馬ザフィーパーソン(Zaffie Parson)に騎乗し、3着に入線した際、同馬に鞭痕をつけた。
長い騎乗停止処分を課されたオコネル騎手は、意見聴取の前には何も語ろうとはしなかった。元騎手であるハーカー調教師は、「オコネル騎手は、この牝馬に鞭痕をつけ、禁止されている馬体の部位に鞭を入れました。獣医師が裁決委員に注意を促したのは公正な措置でしたが、ロンドンにおいて彼から意見を聴取するのは少し行きすぎだと思います」と述べた。
「私はVTRを見ましたが、彼は決して自分の頭の上まで鞭を振り上げてはいません」。
「ザフィーパーソンは最終コーナーに達するまでに速度が低下していたので、当然のこととしてオコネル騎手は2、3回鞭を入れ、同馬は気合を取り戻しました。同馬に乗るのは難しく、自分から走りたがらないので、私の知る限り、彼は最善の着順を確保したと思います」。
「公平に見て、オコネル騎手は利益のために手段を選ばない様なことはありません。彼は善良な若者であり、ホースマンです。残酷な人間ではありません」。
BHAは声明で、次の点を強調した。? 衝撃吸収型の鞭の使用を義務づけていること、? 年間9万5,000頭近い出走馬に対し鞭の不正使用の発生率は0.5%であり、その頻度は1人の騎手が1年に1回違反を犯すのに相当すること、? 騎手に対する過怠金は1回500ポンド(約12万円)以上であること。
BHAの広報担当ポール・ストラサーズ(Paul Struthers)氏は、「鞭の使用に関して、騎手たちが勝つための“努力の行き過ぎ”と“努力不足”の板ばさみになるのではないかという意見もあります。しかし、騎手が勝つために少しばかり行き過ぎてしまって鞭痕を残す結果となったのは不可抗力と主張することがあったとしましょう。そんな場合に、裁決委員から見ればあまりに酷い鞭の使用から、最大7日間の騎乗停止処分では不十分であると感じることすらあるのです。努力の行き過ぎと努力不足には大きな開きがあります」と述べた。
「私たちは騎手たちが責任を持って鞭を使うことを期待していますし、実際ほとんどの騎手がそうしています。しかし、そうしていない騎手たちもおり、彼らは罰則を課されるべきで、そのためにルールがあるのです。イギリス競馬は馬と関係者の福祉を重要視していますし、競馬はいつも人々の厳しい監視に耐えるものでなければなりません」。
「競馬においてはいかなる場合でも鞭の過剰使用は許されておらず、私たちはそれを寛大に扱うことはありませんし、それらのことを隠蔽することもないでしょう」。
「競馬は国会において党派を超えた支援を得ています。私たちはハンコック氏と接触し同氏の懸念と見解について話し合おうと思います」。
「私たちは競馬において鞭の使用を擁護し続けるでしょう。騎手は責任を持って使い続けることで競馬が広い評判を得ていることを肝に銘じるべきでしょう」。
By Graham Green
[Racing Post 2008年1月29日「‘We expect jockeys to use the whip responsibly’」]