海外競馬ニュース 2008年02月28日 - No.8 - 2
イギリス競馬界の新設商業部門の無力さ(イギリス)[開催・運営]

 イギリス競馬界の商業部門として機能するために創設されたレーシング・エンタープライズ社(Racing Enterprises Ltd.: REL)の取締役でオーナー・ブリーダーでもあるロン・ハギンズ(Ron Huggins)氏は辞任することになった。同氏は辞任にあたり、RELは、“現在の組織ではまったく無力である”と述べた。

 RELは、英国競馬統括機構(British Horseracing Authority: BHA)が英国競馬公社(British Horseracing Board: BHB)の後継機関として創設されたことを受けて2007年に発足した。REL創設の当初の意図は、BHBから引き継いだデータ使用料収入を含め、収入源を管理しかつ拡大させる仕事を引き受けることであった。

 ハギンズ氏は、「問題なのは、私が取締役になってから8ヵ月の間にまったく何の変化も起きなかったことです」と述べた。

 「BHAの首脳部は、しっかりとした財務計画を立ててRELを支援していません。競馬界は新たな資金源を必要としていますが、RELの取締役会で新たな資金源について話し合ったことはおそらく一度もないと思います。話し合ったのは、政治のことや誰がRELを運営するべきであるかということだけでした」。

 「BHAと協力して事業運営方針を策定するべきであることは明らかでしたが、何も行われませんでした。RELが何に対して責任を負うかが明確でないときにどうやってREL専任の会長の募集広告ができるでしょうか」。

 RELには、競馬場協会(Racecourse Association: RCA)が指名した取締役3人、専任取締役2人および馬主協会(Racehorse Owners’ Association: ROA)を代表する取締役1人がいる。

 ROA評議会の元メンバーで、サラブレッド生産者協会(Thoroughbred Breeders’ Association)の評議員を務めているハギンズ氏は、同じくオーナー・ブリーダーのロバート・ウェーリー=コーヘン(Robert Waley-Cohen)氏とともに専任取締役として任命された。ROAは、RELの取締役として理事長のポール・ディクソン(Paul Dixon)氏を指名した。同氏はRELの会長(兼任)を務めている。

 RCAを代表してRELの取締役になっているのは、RCAのデーヴィッド・ソープ(David Thorpe)会長、ノーザン・レーシング・グループ(Northern Racing group)の元社長ロッド・ストリート(Rod Street)氏およびニューベリ競馬場の財務担当取締役サラ・ホーダーン(Sarah Hordern)氏である。RELの専任会長のポジションについては、最近、募集広告が行われたが、面接はまだ行われていない。

 ハギンズ氏は、「RELは、当初BHAの競馬データの販売業務を行うために設立されましたが、欧州司法裁判所(European Court of Justice: ECJ)の判決が下された結果、業務の範囲が制限されました。代替策として、私はスポンサーの勧誘といった新たな収入源の開拓を検討したいと思っていました。新たな収入源の開拓は、主として競馬場の責任ですが、中心的組織がないために全国規模で機能していません」と述べている。

 同氏は、次のように付け加えた。「RELは、賞金額を引き上げるために役立つべきです。これは重要な課題です。賞金額が最重要課題でないと考える人は、現実を直視していないのです」。

 「私はまた、ピーター・サヴィル(Peter Savill)氏の意見に沿って、RELはイギリス競馬界の財務計画に責任を負うべきであると主張してきました。この財務計画は、ECJの判決のために実現していませんが、同氏のビジョンはすばらしいものです」。

By Howard Wright

[Racing Post 2008年1月30日「Huggins walks out on commercial role」]