経済解説サイトの“エコノミックス101”に、競馬場や電話投票賭事業者がリベート[訳注:配当の上積み]という有利な条件で賭事客を誘引している事実が例示されている。
リベートは常連客を優遇する仕組みである。2008年に馬券売上げが前年より10億ドル(約1000億円)以上減少したいま、大口顧客は特に大事にしなければならない。
競馬産業は既存顧客を全般的に満足させようとしており、かつてリベートという言葉は多く人々には禁句であったのだが、現在では受け入れられつつある。リベートは馬券購買活動が活発な顧客を優遇する仕組みである。
多くの顧客が他のギャンブルと比較して競馬の控除率が高いことに不満を抱いているなかで、リベートは顧客の購買意欲を沸かせる。
ホーソーン競馬場は自場のレースをリベート支払いの対象としてきたが、最近サイマルキャストのレースにまで拡大した。同競馬場のサイマルキャスト・コー ディネーターであるジョン・ウォルシュ(John Walsh)氏は、「競馬場は近隣の場外馬券売場との競争に直面していますが、顧客が競馬場と場外馬券売場のどちらに行くか、それを決める要因は時として 些細なことです」と述べた。
ウォルシュ氏は、「私たちの顧客のなかには、近いからとか、ピザが食べたいからという程度の理由で場外馬券売場へ足を運ぶ人がいます。ピザの味の比較は ともかく、顧客を呼び戻すための方策を検討した結果、昼間の投票についてはすべて4%をリベートとして配当に上積みすることにしました。オンラインや場外 で馬券を購入している顧客も、これによって競馬場に行こうと考えてくれるでしょう」と述べた。
リベートの支払い対象となる顧客は、過去30日間の馬券購入額が1,000ドル(約10万円)以上の顧客である。また、リベートの支払い率は、過去30 日間の馬券購買額により4段階に分けて、最低は2%、最高は馬券購入額1万5000ドル(約150万円)以上の顧客に対する4%である。顧客は馬券購入時 にカードを機械に通すので、購入記録が残り、競馬場はリベートの支払い状況をチェックできる。
ウォルシュ氏は、「この2年の間に顧客が何度競馬場へ足を運んだか把握しています。来場の増加を特に期待している顧客にはプラチナカードかゴールドカー ドを発行しています。これらの顧客がライブ競馬の時により頻繁に来場しているか、そしてより多く賭けているかを検証してみたいと思います。また、客足の落 ちるサイマルキャスト開催に彼らが来場しているかどうかも調査したいです。そしてどれだけのゴールド顧客がプラチナ顧客に昇格するか楽しみです」と述べ た。
2月にカリフォルニア州競馬委員会(California Horse Racing Board)は、リベートに対する州の規制の廃止を求める著名な馬主ジェリー・モス(Jerry Moss)氏の提案をを承認した。当初カリフォルニア州はこれとは全く逆のことを検討していた。すなわち、同州はサンタアニアパーク競馬場の顧客に対しリ ベートを支払っている電話投票賭事業者のエクスプレスベットコム社(Xperssbet.com)を取り締まることを検討していたが、結局規制を完全に撤 廃した。
デルマー競馬場のクレイグ・フラヴェル(Craig Fravel)取締役副社長は、リベートに対する規制が可決されたのは顧客が場外馬券売場に奪われることを競馬場が懸念していた時代であったと指摘する。現在では賭事の89%が場外で行われている。
それでもやはり、最近リベートショップのスキャンダルが多発している。2008年、サラブレッド競馬でかなりの賭事を取り扱っていたリベートショップの ヒンズデール・グレイハウンド競走協会(Hinsdale Greyhound Racing Association)が破産申請を行い、大勢の顧客の賭事口座の預かり金を危機に晒した。また、昨年ユーベットコム社(Youbet.com)は子会 社の海外リベートショップIRG(International Racing Group)の顧客が連邦当局の捜査を受け150万ドル(約1億5000万円)を押収されたことからIRGを閉鎖した。
2006年には、組織犯罪グループのユーヴァリ・ゲーミング・グループ(Uvari Gaming ring)の主要人物が違法な賭事運営を行ったとして実刑を受けた。この件で検察官は、同グループは受付けた賭金200万ドル(約2億円)を4年間にわた り5箇所のリベートショップへ注ぎ込んでいたと述べた。
それでもなお、カリフォルニア州のこの決定は、顧客から賞賛を浴びている。顧客の1人ビル・フィンリー(Bill Finley)氏は、アメリカのスポーツ専門テレビ局ESPNの公式ホームページにこの決定を賞賛するコラムを書いた。また、北米馬券購入者協会(The Horseplayers Association of North America)もこの決定を支持している。
(1ドル=約100円)
「Thoroughbred Times 2009年3月14日「Rebates becoming mainstream」」