障害飛越はナショナルハント競走の真髄であり、それにより繰り広げられるスペクタクルに魅了されるファンの数が増え続けている。
英国の障害競走は非常に良好な状態にあると、英国競馬統括機構(British Horseracing Authority: BHA)はパンフレット『ジャンプレーシングフォーカス(Jump Racing Focus)』の序文で明言している。転倒落馬事故の大幅な減少がみられ、騎手・競走馬の福祉の面においても良好な状態にある。
障害競走は、以前よりも安全になっており、レーシングポスト紙の統計はここ12年で障害競走の転倒落馬事故の数は40%近く減少していることを示している。
1996年英国での障害競走の出走馬9981頭のうち、780件の転倒落馬事故が発生し、その比率は7.8%であった。この数字は年々目に見えて減少 し、2008年は12月8日現在、出走馬1万1151頭のうち、548件の転倒落馬事故が発生し、その比率は4.9%である。
BHAのシーズンごとの統計も、同様の傾向を示している。このことは騎手・競走馬の福祉のために、障害を飛越し易いものにして障害競走をより安全にする という方針がとられた結果であるという説を裏付けている。他方アイルランドでは転倒落馬事故は減少したものの、その比率は8%近くに留まっている。
多くの競馬関係者は間違いなく、障害が飛越しやすいものになっていると考えている。元リーディングジョッキーのピーター・スカッダモア(Peter Scudamore)氏は、「障害は私の父の時代よりも私の時代の方が易しくなりました。そして現在は、私が騎乗していた当時よりもさらに易しくなってい ます」と述べた。元騎手のアンドリュー・ソーントン(Andrew Thornton)氏はそれに同意し、「障害はすこし易しくなり、以前ほど手ごわくなくなりました」と語った。
しかし、ヘンリー・ダリー(Henry Daly)調教師は、安全性の重視に偏りすぎており、以前ならば未熟な馬が飛越ミスで転倒落馬というケースでも飛越できてしまうことが多くなっていると確信している。
[Racing Post 2008年12月11日「A fence too far?」]