馬主協会(Racehorse Owners' Association: ROA)の理事長ポール・ディクソン(Paul Dixon)氏は6月25日、英国競馬は年間の賦課金額が2500万〜3000万ポンド(約42億5000万〜51億円)減少し、それにより年間の賞金額 がスポンサー賞金も併せて2500万ポンド(約42億5000万円)削減され、政府は競馬からの税収入が4000万〜4500万ポンド(約68億〜76億 5000万円)減少する危機が迫っていると警告し、馬の細い毛で頭上に剣が吊り下がっている玉座に座っているようなものだと、その状態を比喩した。
同氏は3大ブックメーカーがインターネットおよび電話投票事業を海外に移転させることで生じうる悪影響に言及し、「ウィリアムヒル社(William Hill)が事業の一部を海外に移すことを憂慮している」と名指しで批判した。
ウィリアムヒルズ社の最高経営責任者ラルフ・トッピング(Ralph Topping)氏が6月下旬に本紙(レーシングポスト紙)に対して包み隠さず意見を述べたにもかかわらず、ディクソン氏はロンドンでのROAの年次総会 において、ROAメンバーと招待客を前に、「ウィリアムヒルズ社は間違いなく海外事業移転を準備しています。それが実行された場合、ラドブロークス社 (Ladbrokes)とコーラル社(Coral)はどのように反応するでしょうか」と語った。
ディクソン氏は、最悪の事態が起きた場合には、競馬界としては被害拡大防止がとり得る唯一の措置となるだろうと述べた。
同氏は次のように付言した。「資金難で低レベルの競馬を行うのさえ困難なほど、賦課金制度はきしみが生じているのが現状です。もし海外事業移転が起きれば、競馬産業の維持は不可能となることは言うまでもありません」。
「ブックメーカーがビジネスチャンスを得ようとすることは非難すべきことではないと主張する人々もいます。しかし、もしこれが競馬産業に甚大な不利益をもたらすのであれば、政府は対策を講じるべきです。さもなければ悲惨な結果を受け容れるしかなくなるでしょう」。
ディクソン氏は、“報復的措置も政府の裁量の範囲内であること”を念頭において、「ベッティングショップから固定オッズ発売端末(Fixed Odds Betting Terminals)を撤去させ、あるいはその数を減らすという行政措置は、海外への事業移転を考えているブックメーカーをぎりぎりのところで翻意させる 手段になります」と語った。
同氏は、「政府は海外賭事業者に対して、税金と賦課金を支払わずに英国人に賭事を提供することを違法とすることができるでしょう。政府はまた、税金と賦課金を支払わずに英国で賭事広告を出すことを違法とすることもできるでしょう」と付言した。
ディクソン氏は、この劇的なシナリオが現実とならなくても、現行の賦課金の水準は“競馬にとっては不十分である”とし、「2009年の賦課金収入は前年 を大きく下回るでしょう。競馬の賭事収入を増やし、賦課金制度において競馬界に不利ないくつかの事柄を改変しない限り、賦課金収入の減少傾向が続くでしょ う」と付け加えた。
ディクソン氏は詳細を語らなかったが、2008-2009年度の賦課金収入は2007-2008年度の1億1600万ポンド(約197億2000万円)から9300万ポンド(約158億1000万円)にまで減少すると考えられている。
同氏は“賦課金の徴収漏れ”の他の例として、英国のベッティングショップの半数以上が、ある一定額以下の賦課金を支払うのを免れていることと、賭事運営 免許を持たず、税金や賦課金を支払わずにベッティング・エクスチェンジを運営している者が非常に多くいることを指摘した。
By Howard Wright
(1ポンド=約170円)
[Racing Post 2009年6月26日「Dixon warns of big levy cuts if bookmakers go offshore」]