海外競馬ニュース 2009年03月05日 - No.9 - 4
ストームキャット、クォーターホースの 種牡馬として供用(アメリカ)[生産]

 近年の世界的な優良種牡馬であるストームキャット(Storm Cat)に新たな活躍の機会が訪れようとしている。テキサス農工大学獣医学部・生物医科学研究所(Texas A&M University College of Veterinary Medicine and Biomedical Sciences)が開発した先端的な人工授精技術と特殊な繁殖能力強化処置によって、ストームキャットは2009年、クォーターホース(Quarter Horse)の繁殖牝馬に種付を行う予定である。

 レキシントンにあるオーバーブルック牧場(Overbrook Farm)は5月に受胎率が低下したストームキャットを引退させた。繁殖能力強化処置はテキサス農工大学教授で構内のピンオーク牧場(Pin Oak Stud)で種牡馬の繁殖研究の統轄責任者を務めるディクソン・ヴァーナー(Dickson Varner, D.V.M.)博士の監督下で行われた。この処置によって人工授精に使用するための高品質の精子が分離される。アメリカ・クォーターホース協会(American Quarter Horse Association)は人工授精を認めている。

 ストームキャットの種付料はクォーターホース界では最高額である産駒1頭につき2万ドル(約200万円)となるが、同馬の2008年の種付料30万ドル(約3000万円)に比べればはるかに安価となる。なお、2007年以前の6年間、ストームキャットの種付料は50万ドル(約5000万円)であった。

 ストームキャットの産駒ヘネシー(Hennessy 2007年死亡)は、5頭のクォーターホース産駒を生産し、そのうち2頭がステークス勝馬となった。ヘネシーの産駒サラブレッド種牡馬アップタウンマイアミ(Uptown Miami コロラドで繋養中)は2008年、種付料1万ドル(約100万円)でクォーターホース繁殖牝馬に種付けした。

 オーバーブルック牧場でのストームキャットの種付活動を管理してきたアドバイザーのリック・ワルドマン(Ric Waldman)氏は、「2008年にストームキャットの繁殖能力についてヴァーナー博士と相談し、彼の提案により同馬の精子を採取し保存しました。同博士はクォーターホース界にストームキャットの需要があると考えています。私たちはそんなに多くの牝馬に授精させるつもりはなく、それが動機であるといえるほど多額の収入が見込めるわけではありません。しかし、それはクォーターホース界にこの馬の血統を広めようとする場合にやむを得ない対価であると考えています」。

 そして同氏は、「ストームキャットがクォーターホースの血統において重要な種牡馬となることを強く望んでいます。クォーターホース界は異系交配種を必要としています。クォーターホース界に注入するサラブレッド血統としてストームキャットが最も良質です」と述べた。

 ワイドマン氏は種付料の一部はテキサス農工大学の研究費に充当される予定であると付言した。

 クォーターホース界のサイト(www.stallionesearch.com)によれば、ストームキャットはすでに、ユアファーストムーン[Your First Moon 父:ファーストダウンダッシュ(First Down Dash)]を受胎させている。ユアファーストムーンのオーナーは、フランク・スクープ・ヴェッセルズ3世(Frank Scoop Vessels III)とシンガーソング・ライターのライル・ラヴェット(Lyle Lovett)氏である。

 ヴァーナー氏は、「この新技術は多くのアメリカ・クォーターホースの種牡馬に利用され成功を収めています。しかしサラブレッド種牡馬で試みるのは初めてです。ジョッキークラブは人工授精を利用して生産したサラブレッドを登録することを禁止していますが、サラブレッド種牡馬から採取し、この方法で処理された精子をアメリカ・クォーターホースの繁殖牝馬に使用することはできます。これは、老化の過程で繁殖能力が低下した種牡馬の繁殖期間を延ばすための一手段となります」と語った。

By Jeff Lowe
(1ドル=約100円)

[Thoroughbred Times 2009年1月31日「Storm Cat offered as Quarter Horse stallion」]