映画監督であるサイモン・ウィンサー(Simon Wincer)氏は、メディアパズル(Media Puzzle)とその騎手ダミアン・オリヴァー(Damien Oliver)氏の2002年メルボルンカップ優勝までの道のりを描いた映画『ザ・カップ(The Cup)』の製作を開始するに当たって、5月15日に自身の競馬への情熱を語った。[訳注:ウィンサー監督は1993年、少年とイルカの交流を描いた『フリーウィリー(Free Willy)』を監督し大成功を収めた。また、オリヴァー騎手は2006年メルボルンカップで日本馬ポップロック(Pop Rock)に騎乗し日本馬デルタブルース(Delta Blues)の2着に入線した]。
映画は、ダーモット・ウェルド(Dermot Weld)調教師が、2001年シーズンに骨盤を痛めたメディアパズルの治療に努め競走に復帰させたことや、メルボルンカップ3日前に、フレミントン競馬場のチャンピオン騎手であるオリヴァー騎手の弟ジェイソンが、西オーストラリアのベルモントパーク競馬場の落馬事故で亡くなったことなどを描いている。弟が亡くなった時点でオリヴァー騎手には開催終了まで13鞍の騎乗が残されていたが、最後はメルボルンカップの感動的な優勝で飾った。
1983年に豪州の伝説の競走馬ファーラップ(Phar Lap)を映画化したウィンサー監督は、ウェルド調教師役の俳優ブレンダン・グリーソン(Brendan Gleeson)氏と会うために訪れていたダブリンで、“この作品は競馬に対して非常に好意的な内容になっています”と語った。
同監督は、「一般の人々にとって競馬といえばギャンブルというイメージが強いようですが、この映画は人間の勝利と死者への敬意についての物語です。競馬に非常に好意的な内容であり、競馬のシーンに取り掛かるのが待ち遠しいです」と語った。
「私は人生においてずっと馬のそばにおり、よくハンティングもします。しかし、サラブレッドが目の前を力強く走り過ぎて行くのを見ると、今でも心臓がドキドキします。私が競馬を愛するのはそのためであり、願わくば競馬に縁がなかった観客にもそれを味わって欲しいです」。
作家のエリック・オキーフ(Eric O’Keeffe)氏は、著書『ザ・カップ』を出版する前にウィンサー監督と共同で映画の脚本を執筆したが、資金が確保されたのはつい最近のことである。すでに、映画制作のために55頭からならサラブレッドの一団に調教が施されており、その中にはウィンサー監督が所有するハンター種も含まれている。
同監督は、「私たちは実際のところ、おっとりした競走馬を募集しました。私たちが必要としているのは、健康で安全なサラブレッドです。撮影の最中に手に負えなくなるオランウータンのような馬は使えません」と語った。
ウィンサー監督はメルボルン出身者なので、ウェルド調教師とは何度かフレミントン競馬場で顔を合わせており、同調教師を“魅力的な人”と表現し、「ウェルド調教師は私に一度、“この馬は本当によく走る”という言い方をしたことがありますが、そのことをこれから彼に実感させるのが私の仕事です」と付言した。
撮影は、11月に2002年メルボルンカップの再現をフィルムに収めることを最後に終了する予定である。オーストラリアのコメディアンで俳優であるスティーヴン・カリー(Stephen Curry)氏がオリヴァー騎手を演じる予定であるが、競馬シーンにおいてはオリヴァー騎手が自ら騎乗することになるだろう。
By Jessica Lamb
[Racing Post 2010年5月16日「Work starts on Weld Melbourne Cup film」]