1月18日のサンタアニタ競馬場での競走が土砂降りの雨と馬場不良のために中止されたことをうけて、ロン・チャールズ(Ron Charles)場長は驚くべき発表を行った。「人工馬場のプロライド馬場は冬開催終了後に撤去され、ダート馬場に戻されるでしょう。このことは、“非常 に真剣に熟考されています”」と述べた。
チャールズ場長は、「決定的な変更を行なう時がきました」と付け足した。
サンタアニタ競馬場は2006年、カリフォルニア州競馬委員会(California Horse Racing Board: CHRB)の指令により、ダート馬場を撤廃し、人工馬場を敷設することが要請された。しかし、アルカディアにある同競馬場は2007年の人工馬場“クッ ショントラック”の敷設後に度重なる水はけ問題に苦しめられ、その後異なる人工馬場“プロライド”に交換した。
1月18日の開催中止は、サンタアニタ競馬場がダート馬場に回帰することを考えているという内々の議論をチャールズ場長が公にするきっかけとなった。
CHRBはすでに、ダート馬場に戻す意向のある競馬場を阻止することはないと示唆していた。新たにCHRBの委員長に就任したキース・ブラックプール(Keith Brackpool)氏は、「私たちはどのような議論も受け入れるでしょう」と語った。
チャールズ場長は、「馬場の再敷設工事は冬開催が4月に終了した後に始められるでしょう」と述べた。
人工馬場を辛辣に批判しているジョン・シレッフス(John Shirreffs)調教師は、サンタアニタ競馬場の計画を知って大喜びした。同調教師は、「このことを聞いて喜んでいます。カリフォルニア州の競馬場の 1つがダート馬場になることは素晴らしいことです」と述べた。
しかしバリー・エイブラムズ(Barry Abrams)調教師は、ダート馬場に対する安全性の懸念から4年前にCHRBが出した指令に思いをめぐらし、懸念を表明した。
同調教師は、「サンタアニタ競馬場でなされようとしていることはすべて間違った後戻りの取組みです。2006年当時、彼らはダート馬場のままにしておく 選択肢はなかったのです。彼らが人工馬場に投資した理由は、安全性が確保されていないダート馬場のままではカリフォルニア州に誰も競馬をしに来たがらない からでした。再びダート馬場に戻すことで、また問題が出てくるでしょう。サンタアニタ競馬場は1競走に5頭しか出走馬を集められなかったり、競馬を週3日 しか開催できなくなるでしょう。馬場の表層材が問題なのではなく、表層材の基盤の水はけに問題があるのです。人工馬場の基盤を直せば済むことです」と語っ た。
カリフォルニア州の競馬は、すでにサンタアニタ競馬場のオーナーのマグナエンターテイメント社(Magna Entertainment Corp.)が民事再生手続きを申し立てたことにより不確かな将来に直面している。
またハリウッドパーク競馬場は2010年に限っては競馬を施行することを表明しているが、同競馬場は取り壊されて土地開発が行われる予定である。
デルマー競馬場のジョー・ハーパー(Joe Harper)場長は、「私たちはどのような展望になるのか知る必要があります。現在は流動的段階なのです。私たちはサンタアニタおよびデルマー競馬場が 1年を通して競走を施行できる競馬場になると推測することができます。私はなぜ人工馬場がうまくいかなかったのか分かりません。この競馬場で走る馬に最も 安全な馬場を提供しようと取り組んでいます。ダート馬場か人工馬場かに関わらず、馬に優しい馬場を求めているのです」と語った。
ハーパー場長はデルマー競馬場に敷設されている人工馬場“ポリトラック”については満足していると主張し、「私たちの安全性に関する記録は良好です」と述べた。
早い時期からの人工馬場の提唱者によれば、全天候型であり一貫しており安全であると思われていた人工馬場への信頼を失う調教師の数は増えつつある。
カリフォルニア州の主要なサラブレッド競馬場は、人工馬場を敷設するのに4000万ドル(約40億円)近くを支出した。サンタアニタ競馬場は、新たに馬場を敷設することになれば少なくとも800万ドル(約8億円)を注ぎ込むことになるだろう。
それまでの間、サンタアニタ競馬場での競馬は1月21日に再開されることが予定されているが、それもさらなる降雨により脅かされている。1月18日に施行される予定であったサンマルコスHは1月24日に変更された。
[thoroughbredtimes.com 2010年1月19日「Santa Anita to remove Pro-Ride, may return to dirt」]