海外競馬ニュース 2011年03月24日 - No.12 - 2
アヴィオリ氏、ブリーダーズカップ社を退職しストロナック氏と協力(アメリカ)[その他]

 ブリーダーズカップ社(Breeders’ Cup Ltd.: BCL)と数人の競馬関係者によれば、グレッグ・アヴィオリ(Greg Avioli)氏は3月4日、フランク・ストロナック(Frank Stronach)氏が3月末までに立ち上げる予定の競馬関連企業を経営する新しい地位に就くため、BCLの社長およびCEOの職を退いた。

 ストロナック氏が代表を務め管理するMIディベロップメンツ社(MI Developments Inc.: MIDI)の多議決権株式(訳注)を、サンタアニタパーク競馬場やガルフストリームパーク競馬場を含む同社のすべての競馬資産および賭事資産と交換することを可能にする複雑な契約を株主が承認すれば、5年間BCLのトップであったアヴィオリ氏は、ストロナック氏が設立を計画している企業のCEOに任命される予定である。株主がこの計画を承認するのは3月29日と見込まれている。
  (訳注)多議決権株式: 通常1株につき1つの議決権が与えられるところ、1株につき複数の議決権が与えられる株式

 MIDIは3月4日午後、アヴィオリ氏がMIDIの競馬および賭事部門の社長兼CEOに就任する雇用契約に署名したことを伝える声明を出した。

 アヴィオリ氏は声明において、「私はストロナック氏の構想を実現することを楽しみにしています。競馬産業の偉大なリーダーの1人であるフランク・ストロナック氏とともに働く機会を得られたことを光栄に感じています」と語った。

 アヴィオリ氏の突然の退職により、同氏の後任者の指名をめぐっては混戦を招くと考えられている。現在3派に分かれている13名からなるBCL理事会は、後任者を指名する戦略を考え出すために3月中旬に会合を開く予定である。そして理事会メンバーを良く知る競馬関係者によれば、3派とも多彩な経歴と見識を持つ候補者を望んでいるようだ。

 BCLのビル・ファリッシュ(Bill Farish)会長は声明の中で、BCL理事会は会合において、暫定的なリーダーの選出および後任のCEOを見つけ出すために取られるべき方策について話し合うことになると述べた。競馬関係者たちによれば、候補者探しには少なくも3ヵ月を要するだろう。

 ファリッシュ氏は、「理事会は、競馬資産を引き続き成長させ、生産者と競馬産業を支援するという使命を全うすることのできる新しいCEOを見つけ出すことを期待しています」と述べた。

 BCLの入手できる最新の納税申告書によれば、アヴィオリ氏は2007年におよそ83万2,000ドル(約8,320万円)の年俸を支払われていた。

 アヴィオリ氏は、ゴルフのPGAツアー、米国テニス協会(United States Tennis Association)および国際オリンピック委員会(International Olympic Committee)のマーケティングに関わった後、1990年代後半に競馬の全国規模のマーケティング機関を設立する取組みが行われていた中で初めて競馬産業の一員となった。同氏はその後、設立されたNTRA(全米サラブレッド競馬協会)の副理事長に任命され、2006年にBCLの事業がNTRAの事業と提携されたときにBCLの上級職に就いた。提携事業はその後、BCLの理事たちがその契約に批判的になったことから解散された。

 アヴィオリ氏がBCLで過ごした5年間において最も注目すべき事柄は、ブリーダーズカップが8レースから14レースに拡大され、2日にわたって開催されるようになったことである。これらのレースへの総賞金額は、毎年3月に行われるドバイワールドカップ開催で提供される賞金額に足並みを揃えようとするBCLの努力によって、1,500万ドル(約15億円)から2,550万ドル(約25億5,000万円)に増加した。

 デイリーレーシングフォーム紙が入手した内部文書によれば、アヴィオリ氏が就任していた期間におけるブリーダーズカップの全体収入は、2006年チャーチルダウンズ競馬場での開催において2,850万ドル(約28億5,000万円)、初の2日間開催となった2007年モンマスパーク競馬場での開催において2,930万ドル(約29億3,000万円)、2008年と2009年のサンタアニタ競馬場のオークツリー協会の開催においてそれぞれ2,870万ドル(約28億7,000万円)と2,570万ドル(約25億7,000万円)、2010年チャーチルダウンズ競馬場での開催において3,360万ドル(約33億6,000万円)であった。2011年のブリーダーズカップもまたチャーチルダウンズ競馬場での開催が予定されている。

 MIDIにおいて株式交換に関する契約が承認されれば、アヴィオリ氏はカリフォルニア州のサンタアニタおよびゴールデンゲートフィールズ競馬場、フロリダ州のガルフストリームパーク競馬場とそのカジノ施設、メリーランド州のローレルパークおよびピムリコ競馬場、会員制賭事業者のエクスプレスベット社(XpressBet)、賭事処理業者のアムトート社(AmTote)、そして半分の株式を有しているホースレーシング・テレビジョン社(Horse Racing Television)を含むグループ全体を統率することとなる。デイリーレーシングフォーム紙は最近、エクスプレスベット社の運営を通じて提供する賭事サービスを発足させた。

 ストロナック氏が所有する資産と競馬施設は、この10年間に数億ドル(数百億円)の損失を出し、2009年にはマグナエンターテインメント社(Magna Entertainment Corp.: MEC)が破産に追い込まれた。MECの親会社であるMIDIは、2010年初めにMECの資産を引き受け、MECは解散した。

 サンタアニタ競馬場は過去に5回ブリーダーズカップを開催しており、最近では2009年に開催した。またガルフストリームパーク競馬場は過去に3回ブリーダーズカップを開催したが、最近の改築によりに大きなイベントを開催する競馬場としての機能が低下し、もはや選出可能な候補の対象とはなっていない。

By Matt Hegarty
(1ドル=約100円)

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[rdf.com 2011年3月4日「Avioli resigns from Breeders' Cup; to work for Stronach」]