海外競馬ニュース 2011年03月31日 - No.13 - 1
NTRAの安全・公正に関する同盟、参加競馬場の増加に取り組む(アメリカ)[開催・運営]

 NTRA(全米サラブレッド協会)の安全・公正に関する同盟(Safety and Integrity Alliance: SIA)は2回目の年次報告の中で、競馬の公正確保のための認定プログラムにできるだけ多くの競馬場を参加させて目的を達成する方法について、SIAはアドバイスを必要としていると述べた。

 NTRAの理事によれば、2008年秋に立ち上げられたSIAは2009年に競馬場への認定付与を開始した。しかし現在までに実際に認定を受けている競馬場は、当初この認定プログラムへの支持を誓約した55競馬場のうち20場にとどまっている。

 以前ウィスコンシン州知事および米国保健社会福祉大臣を務めた独立監視員のトミー・トンプソン(Tommy Thompson)氏は、2010年にはたった5場しか新たに認定されなかったことに失望を表明した。

 トンプソン氏は、非認定の競馬場に否定的なイメージを与えるのを避けたいとする一方で、SIAへのより多くの参加を促す方法としてそれら5競馬場を引き合いに出すことを検討したと述べた。そして、競馬場に対して認定を得る動機を与えることおよびアメリカグレード競走委員会(American Graded Stakes Committee: AGSC)に対してSIAへの関与を要請することをほのめかした。

そして次のように語った。「AGSCは、グレード競走は認定を受けた競馬場でしか開催されないとすべての競馬場に表明することで、素晴らしい役割を果たすことができるでしょう。このことはすべての競馬場が認定を得ようとする動きに貢献するでしょう」。

 これはひとつの挑戦である。サラブレッド馬主・生産者協会(Thoroughbred Owners and Breeders' Association:TOBA)の傘下にあるAGSCは、グレード競走のみに薬物ルールを適用しているが、おそらくそこまでが限度でしょう、とSIAの報告が発表された後で関係者たちは述べた。

 AGSCは2010年、競馬場の認定プロセスにどのように関与できるかについて話し合ったが、AGSCと一緒に取り組んでいるTOBAの産業関係・開発担当理事であるアンディ・シュワイガルド(Andy Schweigardt)氏は、「認定に関与したいという欲求は全くAGSCの中にはありませんでした」と述べた。

 TOBAのダン・メツガー(Dan Metzger)理事長は、これが命令ということになれば、AGSCはレースにおける競走馬の競走成績に直接関係する公正問題に焦点を合わせることになるが、それを超えることは問題を生むことになるだろうと述べた。そして、「そうなれば私たちの全米レベルでの信頼性を傷つけることになるでしょう」と付言した。

 SIAのマイク・ジーグラー(Mike Ziegler)専務理事は、2011年に8ないし10の競馬場が新たに認定を受けることを期待していると述べた。財政的な限度のためにこのプロセスを2011年に延期するよう要求した競馬場もいくつかあった。さらに2009年に認定を受けた14場は、2011年にそのメンバーシップの更新を要求されるだろう。そしてその更新のためには、2010年に書き込まれた賭事セキュリティ要件を含む新しく強化された基準コードの下で実施される検査プロセスを通過しなければならない。

 ジーグラー専務理事は、「これまでプレレーステスト(競走前薬物検査)は場合によっては認定を受けるに当たっての障害でしたが、競馬場が獣医師を雇用してプレレーステストを行うまで待ってSIAが完全な認定を与えた、ニューメキシコ州のサンランドパーク競馬場の例もあります。競馬場が認定プロセスを通過できるよう、獣医の雇用に取り組んでいる州があと1、2州あります。競馬場が認定を望む結果として、出走馬全頭にプレレーステストを実施することになるのを私は望んでいます」と語った。

 ジーグラー理事長はまた、冬期に競馬を施行し3冠競走の重要なステップレースを開催しているもののSIAの認定を受けていない、ガルフストリームパーク、オークローンパーク、タンパベイダウンズの各競馬場とともに認定に向けての取組みを待っていると述べた。そして、「これは時間の問題であり、また競馬場の経営陣にとって、認定競馬場の仲間入りをすることが彼ら自身、ファン、ホースマンに利益となることを訴えているのです」と述べた。

 トンプソン氏は自身の報告書において、2011年にSIAがより多くのスタッフを雇用し、そのPR技術を向上させることがいかに必要かを述べた。同氏はまた、大衆に対して認定プロセスを回避する競馬場に圧力をかけるよう呼びかけるべきだと語った。

 厳しい経済環境において参加を促すために、SIAはNTRAのメンバーかどうかを基にした段階的な手数料設定の骨組みを構築した。たとえば、総賞金額が1,000万ドル(約10億円)を下回るNTRAのメンバー競馬場に対しては、課される手数料は7,500ドル(約75万円)であり、メンバーではない競馬場の総賞金額が2,500万ドル(約25億円)を上回る場合、手数料は4万ドル(約400万円)である。

 SIAの役員は、現在認定を受けている20の競馬場は米国全体のパリミューチュエル賭事売上げの約70%を占めるとしている。

By Esther Marr
(1ドル=約100円)

(関連記事)海外競馬情報2010年No.7「NTRAの安全・公正に関する同盟、新たな規約を追加(アメリカ)」

[The Blood-Horse 2011年2月12日「Safety Alliance Must Increase Participation by Racetracks, Annual Report Says」]