国境を越えて活動する新しい機関の欧州馬ネットワーク(European Horse Network: EHN)が欧州議会の議員に配信した調査によれば、1年間における欧州の競馬産業を含む馬関連産業の経済的影響力は、アイルランドに対するEUの850億ユーロ(約10兆2,000億円)の救済額を上回ることが明らかになった。
EHNによりブリュッセルのセミナーにおいて発表された数字は、他の部門の雇用が限られている農村地域を中心に馬関連産業によって40万件以上の雇用が生み出され、経済的影響は年間1,000億ユーロ(約12兆円)以上であると見積もった。
欧州サラブレッド生産者協会連盟(European Federation of Thoroughbred Breeders’ Associations)、欧州パリミューチュエル協会(European Pari-Mutuel Association)およびIFHA(国際競馬統轄機関連盟)をメンバーに含んでいるEHNは、欧州における馬関連部門の経済規模を見積もるために多くの調査からデータを集めた。
今回の調査によって、馬関連の活動は、競馬から農業まで、また脆弱な生態系に放牧されている在来馬から数千人もの観客を惹きつける大規模な競馬開催まで、欧州のあらゆる地域に及んでいることがわかった。
欧州の馬関連産業の総合的な影響力は、2005年にアメリカン・ホース・カウンシル(American Horse Council)が割り出した米国の馬関連産業の数値である年間約1,000億ドル(約10兆円)に比肩される。
セミナーでの発言者には、英国南西部とジブラルタル選出の欧州議会議員であるジュリー・ガーリング(Julie Girling)氏が含まれていたが、同氏は、「馬関連部門は、現在の経済不況下において、事業や雇用の増大だけではなく、現在議論になっている共通農業政策(Common Agricultural Policy)においても、欧州の政策立案者に伝えるべき説得力のある物語を持っています」と述べた。
ニューマーケットにおける雇用の約3分の1が競馬産業に関連し、ランボーンにおいてはそれ以上の割合であることが示され、ニューマーケットとランボーンが競馬に強く依存していることが挙げられている。
この調査は、英国の馬関連部門全体を取り上げ、馬関連産業が、競馬および乗馬における雇用として正規職員7万人分を擁する英国最大のスポーツ関連雇用主であると述べた。
調査は次のように付け加えている。「間接的雇用を含めれば、英国における馬関連部門の雇用全体は22万人ないし27万人に達しており、農業部門の雇用人口に匹敵する」。
「農村地域の他の多くの産業からの収入が減少している一方で、馬関連産業は引き続き成長し発展してきている」。
調査の結果は、インターネットで閲覧することができる(europeanhorsenetwork.eu)。
(1ユーロ=約120円、1ドル=約100円)
[Racing Post 2010年12月5日「Study values Europe’s horse industry at € 100bn per year」]