王立動物虐待防止協会(Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals:RSPCA)は、騎手が逆鞭(フォアハンド)を使うことを禁止するよう8月にBHA(英国競馬統轄機構)に正式に問題提起する予定であると、RSPCAの馬担当コンサルタントであるデヴィッド・マー(David Muir)氏は述べた。
同氏は次のように語った。「数日前にRSPCAのグループ会議があり、鞭使用ルールの変更が必要であるという合意に至りました」。
「特に逆鞭はもはや受け入れることができません。私はすでにこのことをBHAに伝えており、8月に開催される福祉に関する会議において我々の見解を正式に伝えるつもりです」。
そして次のように付け足した。「私の感触としては、変更はなされることになると思います。このことはグランドナショナルやそれにまつわる出来事とは関係ありません。鞭使用法の変更はしばらく前から問題になっており、時期は今が適切です」。
「逆鞭は、容認しがたい強い力を馬に与えることを意味します。このような行為はいかなる場合でも受け入れることはできません。目抜き通りで馬をこのように打つ人がいたら、逮捕されるでしょう」。
「馬が望まないことをやるのは抑圧であり、順手で馬を鼓舞することとは異なります。BHAが騎手の逆鞭使用を禁止しないことはRSPCAとして受け入れられません。」
鞭の問題はグランドナショナルに関係するものではないと強調する一方で、マー氏は(グランドナショナルの3大難所の1つ)ビーチャーズ・ブルックは廃止すべきであるという個人としての見解を表明した。
そして、「数年来のビーチャーズ・ブルックでの馬の予後不良件数を考え、今後もこれを受け入れられるかと問われれば、私の答えはノーです」と述べた。
ビーチャーズ・ブルックは、4月にドゥーニーズゲイト(Dooneys Gate)の命を奪った。2000年以降グランドナショナルのコースでは全部で20頭の馬が予後不良となっている。そしてマー氏は、エイントリー競馬場がビーチャーズ・ブルックを含む多くの改善を行ってきたことを認めているものの、ビーチャーズ・ブルックの落馬を招く要素について引き続き懸念している。
オーネイス(Ornais)が予後不良となり、勝利騎手のジェイソン・マグワイア(Jason Maguire)騎手が鞭の濫用によって5日間の騎乗停止処分を受けた2011年グランドナショナルに対してBHAが行った見直し検討は、鞭使用ルールの見直しとは別に行われているものであるが、概ね同じスケジュールとなっている。いずれの検討結果も10月までに発表されることとなっている。
逆鞭(フォアハンド)と順手(バックハンド)の違い 騎手協会(Professional Jockey’s Association: PJA)で共同理事長を務めるスティーヴ・ドゥロウン(Steve Drowne)騎手は、逆鞭と順手の違い、そしてなぜ逆鞭の使用を禁止する必要がないと感じているかについて次のように説明する。 強調しておきたい主な違いは、逆鞭で鞭を振る“見せ鞭”は馬を鼓舞するために行われるということです。 “見せ鞭”は逆鞭の方がやりやすく、順手よりも逆鞭の方が馬をやや強く打てます。 しかし順手で鞭を持っていてもかなり強い力で馬は打てます。そして逆鞭と同様に順手で鞭を持っているときでも肩より高く鞭を振り上げて使うことは容易です。 私の考えでは、逆鞭と順手の間にはそれほど大きい違いはありません。元騎手のウィリー・カーソン(Willie Carson)氏は、ほとんど逆鞭に持ち替えなかった騎手の例です。鞭の持ち方を頻繁に変える騎手もいれば、変えない騎手もいます。 私はやや反応の悪い馬に騎乗した場合は、たぶん最終の1ハロンぐらいは逆鞭を使います。素早く鞭を入れるときには、私は鞭を順手で持ちます。 私は、逆鞭の使用が馬への鼓舞の域を超えているとするRSPCAには賛成できません。それは私にとっては馬への鼓舞なのです。 BHAが鞭使用ルールを見直すのであれば、彼らは鞭の使用回数について検討するでしょうが、私は現行のルールがほぼ適切であると感じており、鞭の問題によって競馬におけるすべての調和が吹き飛ばされているような感じがします。 大半の騎手は現行のルールに満足しており、このルールに大きく違反すれば長い騎乗停止処分が科されることになっています。 |
By Andrew Scutts
[Racing Post 2011年5月16日「RSPCA bid to ban whip in forehand」]