リチャード・デュトロー(Richard Dutrow Jr.)調教師の弁護士によれば、同調教師がニューヨーク州で今後10年以上の調教師免許をはく奪される予定であった日の前日、州判事は、その罰則の一時差止めを言い渡した。
すなわちニューヨーク州競馬賭事委員会(New York State Racing and Wagering Board: NYSRWB)によりニューヨークおよび他州において長年にわたって調教師免許を悪用したかどで罰則を科されていたデュトロー調教師は、弁護士が州最高裁判所に訴える検討期間として30日間の猶予を与えられた。
リチャード・ジャルディノ(Richard Giardino)判事が10月17日に出した差止め命令は、法律に関する審理がNYSRWBから州立裁判所へと舞台が移るため、ケンタッキーダービーをビッグブラウン(Big Brown)で優勝したデュトロー調教師がニューヨークで調教活動を続けることを可能にするだろう。
デュトロー調教師の弁護士であるマイケル・コーニッグ(Michael Koenig)氏は、「私たちは本日の決定に大変満足しており、NYSRWBの処分が裁判所に持ち込まれることを楽しみにしています」と語った。
NYSRWBの役員は法廷審問の後、コメントすることを控えた。
数ヵ月あるいは数年続く訴訟に発展するかどうかを含め、30日間の差止め期間の最後に何が起こり得るかは定かでない。
NYSRWBは10月初め、デュトロー調教師の調教師免許を10月18日から10年間はく奪し、5万ドル(約450万円)の過怠金支払いを命じた。この過怠金は、2010年11月20日のアケダクト競馬場の第3レースの後、ファスタスカクタス(Fastus Cactus)の尿検体から鎮痛剤のブトルファノール(butorphanol)が検出されたこと、そして同調教師の厩舎から皮下注射の針が見つかったことから命じられた。ニューヨーク州のどの競馬場にも足を踏み入れてはならないことを含む厳しい免許はく奪は、長年にわたりさまざまな違反を犯した同調教師を罰することおよび競馬コミュニティーに広くメッセージを送ることがねらいである、とNYSRWBは語った。
このデュトロー調教師事案へのNYSRWBによる罰則は、審査官が勧告した生涯免許はく奪ほど厳しいものではなかった。
州検事総長事務局により判事に提出された差止め期間に反対する裁判書類のなかで、NYSRWBで弁護助手を務めるリック・グッデル(Rick Goodell)氏は、州立裁判所におけるデュトロー調教師の訴訟は36ヵ月もかかる可能性があるとしている。同氏はまた、差止め期間はデュトロー氏に恩恵を与えるというよりも、ファンと競馬賭事により大きな損害を与えるだろうと語った。
「本人が認めているとおり、デュトロー調教師には波乱にとんだ過去があり、非常に多くのルール違反も犯しました。その違反行為は深刻です。同調教師の管理馬の1頭は、モルヒネの10倍の作用がある規制薬物を投与されて出走しました。またつい何週間か前に、競馬場の同調教師の厩舎エリアにおいて机の引出しの中に何本もの注射器がありました。差止め命令は、18〜36ヵ月間の処分をどうするかに関わっているだけです。デュトロー調教師がそれよりも長い業務停止処分を言い渡されるのは間違いないでしょう」と州の訴状は述べている。
By Tom Precious
(1ドル=約90円)
(関連記事)海外競馬ニュース2011年No.9「2008年ダービー優勝のデュトロー調教師に90日間の業務停止処分(アメリカ)」
[bloodhorse.com 2011年10月17日「Dutrow Granted 30-Day Stay of New York Action」]