複数の調教師は2月20日、厩舎内における馬の咳は教室内の子供たちの間と同じようにたちまち蔓延すると語った。
獣医師免許を持つジェームズ・ギヴン(James Given)調教師と今年に入って厩舎内感染に悩まされているティム・ヴォーガン(Tim Vaughan)調教師は、ポール・ニコルス(Paul Nicholls)調教師が厩舎内の咳の蔓延を明らかにした際、厩舎の環境を学校のそれに例えて話題にした。
ギヴン調教師は、「馬は人間と同じです。咳をすることは、気管と肺にある痰への反応です。馬がひどく咳をすれば、それは呼吸器系に痰が溜まっているということです」と語った。
そして次のように続けた。「ほこりのような環境上の理由による“感染以外の原因”と、真菌感染症のような“感染による原因”とがあります。咳がどのくらい長引くのか、一回咳が出ると何回くらい続くのか言い当てるのは難しいです」。
「馬同士が互いに接する機会があることは競馬の特質です。馬はさまざまな場所から一定の場所に集まって過ごし、またその後馬運車に何時間も乗って厩舎に戻る際壁に向かって咳をしたり呼吸をしますので、こうしたことが感染を広げる可能性があります。競馬は国中に感染を広める格好の手段となってしまうのです」。
「皆が感染を減らすために最善を尽くしても咳は否応なしに広まるものであり、1人の子供が咳を教室にもたらせばそれはたちまち蔓延します。厩舎にいる競走馬も同じことです」。
咳が出るときに馬にはどのような調教をすればよいのか、また治療方法および薬品や抗生物質の体内残留期間について尋ねられ、ギヴン調教師は、「馬が呼吸器系の疾病に罹っている場合、ベストの走りは不可能です」と語った。
そしてつぎのように続けた。「私たちが咳の出るときに不快な思いをするのと同じように、馬も元気をなくします。私たちはそのようなときに何とか30分間フットサルはできるかもしれませんが、90分間のサッカーをすることはできないでしょう」。
「馬がどれぐらいひどく咳をしているかによります。もし1時間に5回程度ならば、キャンターをさせることができます。症状がそれほどひどくないのであれば、運動は体内から粘液を排出するのに役立つでしょう。しかし、それは紙一重です。症状がひどいのであれば、運動中に馬は肺を痛めてしまいます」。
「咳の治療には、体内残留期間のない抗生物質を投与するなど様々な方法があります。ベンチプルミン(Ventipulmin)のような薬物は粘液を緩和したり取り除くのに役立ちますが、2週間という長い残留期間があります」。
今年58頭を出走させて1勝しているヴォーガン調教師は次のように語った。「1月には体調の悪い馬が1、2頭おり、鼻水を流し咳をする馬も数頭いました。そのうちの1、2頭に抗生物質を投与した結果、この2週間で治った様子を見せています」。
「そのような状況においても出走できた馬が他におり、その大半の馬は良く走りました。どこの厩舎もいずれにせよ咳に感染します。学校における子供と同じだと私はいつも言いますが、ある時点で必ず感染し、あっという間に蔓延します」。
「寒い気候なので咳を治すのにやや時間がかかっており、少し手こずっています」。
「咳を一掃するにはおそらく2〜3週間かかるので、ただ見守っていくしかないでしょう。チェルトナムゴールドカップに向けて十分な時間があるので、ニコルス調教師は厩舎を正常な状態に戻せるだろうと確信しています」。
By Andrew Scutts
[Racing Post 2012年2月21日「Inevitable that a cough will spread among horses」]