海外競馬ニュース 2012年09月13日 - No.38 - 1
米国の大規模な生産・調教事業ヴァイナリー社が売却される予定(アメリカ)[生産]

 国際的なオーナーブリーダーであるトム・サイモン(Tom Simon)氏は8月28日、米国の大規模な生産・調教事業ヴァイナリー(Vinery)を売却すると発表した。

 サイモン氏はケンタッキーに有している生産・育成牧場とフロリダに有している調教センターを一括で売却したいと考えている。ヴァイナリーはニューヨーク州に、プークアッグ近郊のシュガーメープルファーム(Sugar Maple Farm)とニューハドソンのエンパイアスタッド(Empire Stud)も長期で借りているため、これらも同様に引き継がせることができる。かつてドイツで企業弁護士を務めていたサイモン氏は、1999年にケンタッキーのヴァイナリーを購買した。同氏はオーストラリアでも別のサラブレッド事業を共同で所有しているが、こちらは売却リストには入っていない。

 ヴァイナリーのトム・ルット(Tom Ludt)会長は、「サイモン氏は競馬産業を見捨てるわけではなく、この売却の主な理由は、同氏の子供が競馬事業に興味を示していないことです。競馬はサイモン氏の情熱ですが、子供には受け継がれませんでした。これは安売り処分とはならないでしょう。私たちはいつか新しいオーナーと今まで同様に運営し続けることだけを望んでいます。私たちは巨大な運営を行っていますが、最終的には採算が取れています」と語った。

 440エーカー(176 ha)のケンタッキーの牧場は、本格的な生産および育成牧場であり、セリ運営も行っている。同牧場は、モアザンレディー(More Than Ready)、コングラッツ(Congrats)、ピュアプライズ(Pure Prize)、ライムハウス(Limehouse)、パイオニアオブザナイル(Pioneerof the Nile)、コディアックカウボーイ(Kodiak Kowboy)およびストリートヒーロー(Street Hero)の7頭の種牡馬を繋養している。

 フロリダのサマーフィールド近郊にあるヴァイナリーの施設にも種牡馬部門があり、バックトーク(Backtalk)、ベニーザブル(Benny the Bull)、カンサロス(Kantharos)、マイモニデス(Maimonides)およびポメロイ(Pomeroy)を繋養している。230エーカー(92 ha)の施設には、1400 mのダート馬場と1200 mの芝馬場があり、馬をあらゆるスピードで泳がせ、怪我から回復させたり休養明けからレースに向かわせる目的に使われるプールもある。9月〜5月まで、約110頭の馬がこの施設を利用し、43人のスタッフが管理している。

 ニューヨーク州のシュガーメープル牧場は、ブルーグラスキャット(Bluegrass Cat)、ポッセ(Posse)、ディーファニーボーン(D’Funnybone)、フロストジャイアント(Frost Giant)、ジャイアントサプライズ(Giant Surprise)およびフレンドリーアイランド(Friendly Island)を繋養している。ヴァイナリー牧場はブルーグラスキャットとディーファニーボーンの株を所有している。

 ルット氏は110人を雇用し約600頭の馬を管理する事業体であるヴァイナリーについて次のように述べた。「生産シーズンより前に売却が行われるとは考えられません。ケンタッキー、フロリダおよびニューヨークの牧場にいる600頭の馬のうち、80頭〜100頭はヴァイナリーの所有です」。

 ルット氏は、「サイモン氏は牧場の馬については売却の意思はありません。同氏は第一に、米国における事業全体を引き継ぐ人に売却することを考えています。個々の牧場に対する申し出も考慮はしますが、ヴァイナリーの事業の真価はその活動範囲の広さにあるからです」と語った。

 そして次のように付言した。「サイモン氏は牧場の切り売りには興味がありません。現金化することが目的ではなく、情熱があるかどうかの問題ですから、それはまったく道理に適っています。自分の子供たちが興味を持っていないという理由での売却なので、彼らはサラブレッド事業を分断せずスタッフを危険に晒さない方法でこれに取り組むでしょう」。

By Eric Mitchell

[bloodhorse.com 2012年8月28日「Vinery to Sell U.S. Operations」]