海外競馬ニュース 2012年09月27日 - No.40 - 2
エーピーインディの最後の1歳産駒が9月セールに上場(アメリカ)[生産]

 エーピーインディ(A.P. Indy)の最後の1歳産駒がセリに上場され、サラブレッド市場における同馬の一時代に終わりが告げられようとしている。偉大な競走馬で種牡馬であった同馬は、種付け最後の年に36頭を送り出し、ケンタッキー州レキシントンで9月15日に開幕するキーンランド9月1歳セールのカタログにそのうち15頭が掲載されている。

 そのうち9頭はカタログのブック1に掲載されており、その他はブック2。キーンランド協会ウェブサイト(www.keeneland.com)によれば、9月9日現在で2頭が上場取消となっている。

 ミルリッジセールス&ニコマブラッドストック社(Mill Ridge Sales and Nicoma Bloodstock)のヘッドリー・ベル(Headley Bell)氏は、「エーピーインディは素晴らしい競馬界の大使でした。同馬は、血統表の牡系と牝系双方に考え得る最高の貢献をし、間違いなく大きな影響を与えました」と語った。

 レーンズエンド牧場(Lane’s End Farm)のウィル・ファリッシュ(Will Farish)氏とW・S・キルロイ(W.S. Kilroy)氏によって生産されたエーピーインディは、1990年のキーンランド7月1歳セレクトセールで290万ドル(約2億3,200万円)の値が付き、最高落札馬となった。同馬はBBAアイルランド社(BBA Ireland Ltd.)が落札し、鶴巻智徳氏をオーナーとして競走生活を開始した。

 シアトルスルー(Seattle Slew)産駒であるエーピーインディは、ベルモントS(G2)、BCクラシック(G2)、サンタアニタダービー(G2)、ピーターパンS(G2)およびサンラフィールS(G2)を制した1992年に、年度代表馬および最優秀3歳牡馬となった。ファリッシュ氏とキルロイ氏は、エーピーインディの共同馬主のメンバーで、競走生活後半においては彼らが主導的立場をとって出走させていた。

 ケンタッキー州レーンズエンド牧場に種牡馬入りした後、エーピーインディは2003年・2006年に産駒獲得賞金で北米のトップ種牡馬となった。2007年、2010年および2011年では北米の1歳セールにおいて産駒の平均価格でリーディングサイアーとなり、2004年、2005年および2008年には2位となった。2005年には22頭の産駒の平均価格が92万5,773ドル(約7,406万円)となり、種牡馬生活において最も充実期となった。

 ベル氏は次のように語った。「エーピーインディ産駒は常に魅力的だったわけではありませんが、良く走るので人気がありました。同じことがダイナフォーマー(Dynaformer)や他の多くの優良種牡馬の産駒にも言えますが、エーピーインディ産駒にも良く当てはまります。エーピーインディ産駒は競走で健闘し、身体のコンディションにあまり左右されないため、人々は徐々に好むようになります。全体から見れば、エーピーインディ産駒は良質馬ですが、時には背中が凹み(凹背)前膝の後ろが曲がって(彎膝)います。産駒は身体構造的に完璧ではありませんが、一貫して素晴らしい競走馬です」。

 エーピーインディは2年前に受精能力の低下により、22歳で種牡馬を引退した。

 レーンズエンド牧場のビル・ファリッシュ(Bill Farish)氏は、「これがエーピーインディ産駒の最後の1歳馬だからといって、まだがっかりすることはありません。同馬の牡駒が我々の牧場に多くいるので、どういうわけかこれで終わりだという気持ちにはなりません。こういう時が来ることは明らかに分かっていました。残念ながらこれはいつか起こることです。しかし同馬のような優良種牡馬を失うということは、めったにないことです」と語った。

 エーピーインディは大成功した種牡馬だが、ファリッシュ氏は同馬の最後の産駒グループの価格が高騰するとは予想しなかった。しかしこれらの産駒の人気が出ると考えていたことは疑いない。

 ファリッシュ氏は、「最後の産駒グループに大きな活況が訪れるだろうと思っても、通常はありません。エーピーインディの場合、買い手はすでに長年にわたって同馬の産駒を見てきました。しかし、エーピーインディ産駒を買う最後のチャンスだと分かっている購買者がいることも確かです。エーピーインディは、購買者がその産駒を1頭手に入れればあらゆるチャンスが与えられると考えるほど、良いブラッドメアサイアーであり良い種牡馬の父でした」と語った。

 イートンセールズ社(Eaton Sales)のライリー・マクドナルド(Reiley McDonald)氏は、「エーピーインディは間違いなく米国の偉大なクラシック種牡馬の1頭です。来年からは同馬の1歳産駒は上場されないので、今年が最後のチャンスです」と語った。

 他の有名種牡馬のをめぐる動きとしては、米国でのエンパイアメーカー(Empire Maker)最後の1歳馬産駒が今年9月のキーンランドセールで上場される。同馬は、カリド・アブドゥラ殿下(Prince Khalid Abdullah)のジャドモントファーム(Juddmonte Farms)が2010年後半に日本軽種馬協会に売却した。なお、同馬はアンブライドルド(Unbridled)産駒で2003年にベルモントS(G1)を制している。

 マクドナルド氏は、「これは非常に悲しい事です。当時エンパイアメーカーが種牡馬としてやや不振だったことから、ジャドモントファームが売却したことは理解しますが、そのころから彼は成功し始めました。同馬は、あのまま米国にいたならば、私たちがこれまでみた数々の名馬と同様に米国の優良種牡馬となったでしょう。私自身は、私の顧客がエンパイアメーカーの牝駒を多く生産したので運が良いと思っています」と語った。

By Deirdre B. Biles

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[bloodhorse.com 2012年9月9日「Last A.P. Indys on Offer at September Sale」]