海外競馬ニュース 2012年11月01日 - No.45 - 2
ヴェルテメール兄弟が創り上げた凱旋門賞馬ソレミア(フランス)[生産]

 10月7日の凱旋門賞(G1)を制したソレミア(Solemia)は、優秀な繁殖成績を持つ父と母に比較的遅い初のG1勝利をもたらし、ヴェルテメール兄弟(Wertheimer)がはぐくんできた牝系ファミリーを素晴らしい一日に導いた。

 新しい種牡馬にばかり目が行って、高齢の繁殖牝馬からの生産を毛嫌いすることのある生産界にとって、1992年生まれの種牡馬と1988年生まれの繁殖牝馬の間に生まれた牝馬に出会うことは目を丸くするような出来事といえる。

 ソレミアはヴェルテメール兄弟によって徹底的に創られた馬である。同馬の父ポリグロット(Poliglote)は2歳時、ヴェルテメール兄弟の淡いブルーと白の勝負服を背負ってクリテリウムドサンクルー(G1)に優勝している。また4歳時には重馬場のロンシャン競馬場において、弾むような素晴らしい脚で凱旋門賞と同距離の準重賞のポルトドマドリッド賞を勝っている。

 ポリグロットはノルマンディー地方のエートルアム牧場(Haras d’Etreham)で種牡馬生活を続けており、一流の平地競走馬を送り出している。その中でもアイリッシュウェルズ(Irish Wells)とザインアルボルダン(Zain Al Boldan)が特に優秀である。しかし英国とアイルランドの競馬ファンにとって、ポリグリットはむしろアイリッシュナショナル勝馬バトラーズキャビン(Butler’s Cabin)、トルワースハードル勝馬リンゴ(Lingo)、および一流ハードル競走馬であるスピリットリバー(Spirit River)やスピリットサン(Sprit Son)を送り出したことによってよく知られているかもしれない。

 ソレミアは、ヴェルテメール兄弟が生産し所有している繁殖牝馬ブルックリンズダンス(Blooklyn’s Dance 父:シャーリーハイツ)の最後の産駒である。ブルックリンズダンスは、1991年に重馬場のエヴリ競馬場でクレオパトラ賞(G3)を制している。

 ブルックリンズダンスは、いずれもサドラーズウェルズ(Sadler’s Wells)を父とするフランスダービー(G1)2着馬プロスペクトパーク(Prospect Park)とグレフュール賞(G2)勝馬プロスペクトウェルズ(Prospect Wells)をはじめステークス競走勝馬を6頭生み、並外れた繁殖牝馬であることを証明した。なお、ポリグロットの父もサドラーズウェルズである。

 ブルックリンズダンスの別の牝駒ブルックリンズストーム(Brooklyn’s Storm)も勝馬になっているが、そのレースはブラックタイプではない。同馬は、凱旋門賞と同じ日に開催されたマルセルブーサック賞(G1)を制したシラソル(Silasol)の祖母であり、このことにより10月7日はヴェルテメール兄弟にとって更に素晴らしい日となった。

 シラソルはブルックリンズストームの仔で準重賞勝馬ストーミナ(Stormina)から生まれ、今年死亡したドイツの優良種牡馬モンズーン(Monsun)の15頭目のG1勝馬となった。モンズーンは凱旋門賞3着馬マスターストローク(Masterstroke)の父でもあり、そのマスターストロークは凱旋門賞勝馬で伝説に残る繁殖牝馬アーバンシー(Urban Sea)の娘を母とする。アーバンシーは、自身と同様に凱旋門賞を制したシーザスターズ(Sea The Stars)を送り出している。

 ブルックリンズダンスは、ヴェルテメール兄弟所有の仏2000ギニー勝馬グリーンダンサー(Green Dancer)の母馬グリーンバレー(Green Valley)の孫となる。そしてグリーンダンサーは1991年凱旋門賞勝馬スアーヴダンサー(Suave Dancer)の父である。

 グリーンバレーは、アルハース(Alhaarth)、オーソライズド(Authorized)、オカヴァンゴ(Okawango)、クィジャーノ(Quijano)など多くの一流馬の祖先として有名である。

 

ブルックリンズダンス

Blooklyn's Dance

(鹿毛1988年生、父:シャーリーハイツ母:ヴァレダンサント、母父:リファール)

 

競走成績:2歳〜3歳時に3勝(G3クレオパトラ賞含む)

産駒成績:

1993年 ウエストブルックリン(West Brooklyn牝)(父:ゴーンウエスト)

勝馬

1994年 ゴールドドジャー(Gold Dodger牝)(父:スルーオゴールド)

2勝(準重賞ペピニエール賞含む)

1995年 ブルックリンズゴールド(Brooklyn’s Gold牡)(父:シーキングザゴールド)

6勝(準重賞シュレーヌ賞含む)

1996年 ブルックリンズストーム(Brooklyn’s Storm牝)(父:ストームキャット)

勝馬

1997年 アウトオブコントロール(Out Of Control 牝)(父:ガルチ)

勝馬および準重賞入着

1998年 ブルックリングリーム(Brooklyn Gleam牝)(父:カーリアン)

勝馬

2001年 プロスペクトパーク(Prospect Park牡)(父:サドラーズウェルズ)

5勝(G3リス賞、G3ラクープ賞含む)

2002年 ルレヴュール(Le Reveur 牡)(父:マキャヴェリアン)

勝馬

2004年 ネヴァーグリーン(Never Green牝)(父:ホーリング)

3勝(準重賞オクシタニー賞含む)

2005年 プロスペクトウェルズ(Prospect Wells牡)(父:サドラーズウェルズ)

2勝(G2 グレフェール賞含む)

2006年 オールドウェイ(Old Way牡)(父:ゴールドアウェイ)

勝馬

2008年 ソレミア(Solemia牝)(父:ポリグロット)

5勝(G1凱旋門賞、G2コリダ賞含む)

 

By Martin Stevens
 
[Racing Post 2012年10月8日「Solemia tops sensational day for Wertheimer clan」]