フランケル(Frankel)は世界一の競走馬であるが、ロンドンのシティ街で良く知られた金融機関においては、馬体重分の金にも相当する評価額の高さが大きな頭痛の種となっている。
無敗で14連勝を果たしたフランケルが、チェヴァリーにあるカリド・アブドゥラ(Khalid Abdullah)殿下のバンステッドマナースタッド(Banstead Manor Stud)で種牡馬となるためサー・ヘンリー・セシル(Sir Henry Cecil)調教師の厩舎を離れるに当たって、ロイズ(Lloyd’s)の普通保険市場がフランケルのリスクを引き受けるには同馬の評価額が高すぎることが明らかとなった。
フランケルの推定評価額の1億ポンド(約130億円)は控えめに見た数字であり、その評価額はどう見てもロンドン市場のサラブレッド保険分野における保証能力をはるかに超えている、とサラブレッド売買仲介者のジョニー・マッキーヴァー(Johnny Mckeever)氏とバンステッドマナースタッドのフィリップ・ミッチェル(Philip Mitchell)場長は示唆した。
ポートフォリオ上の限度により、全体リスクのごく一部を引き受けている保険業者の保証総額は限定されており、今や海運業など他分野を専門とする保険代理店がフランケルの保険契約の一部を引き受けるよう提案を受けていると考えられる。
ある保険代理店はフランケルが国内保険市場にとって高額すぎるかどうか聞かれて、本紙に対し、「そういうことが言えるでしょう」と述べた。
そして次のように続けた。「ロンドンのサラブレッド保険市場における保証限度額は6,000万ドル(約48億円)です。しかし、かなり高額な保険料が要求されるものの世界的に見れば他に市場は存在するはずです」。
「フランケルにどれくらいの評価額が付けられるか、またどんな犠牲を払ってでもそれほど莫大な額の保証を設定することができるかどうか分かりません。分かっていることは、私たち保険業界の人間が他市場と交渉することとした場合、皆が同じように一斉に交渉を始めれば最終的にいくらで獲得できるか私には分からないということです」。
ジャドモント牧場(Juddmonte Farms)はフランケルの繁殖能力と死亡のいずれにも保険を掛けることを検討していると考えられている。同馬の種付料はまだ発表されていないが、10万ポンド(約1,300万円)を下らないと考えられている[訳注:後日12万5000ポンド(約1,625万円 )と発表された]。
アンブリンプラス(Amblin Plus)の優秀なサラブレッド保険引受人デヴィッド・アシュビー(David Ashby)氏は、「世界の一般のサラブレッド保険市場では、一頭当たりの保証限度額が約6,000万〜7,000万ドル(約48億〜56億円)でしょうが、国際的には1億〜2億ドル(約130億〜260億円)までの額を引き受ける再保険会社もあります。だだし、彼らは、既存の市場よりも高額の保険掛け金を徴収するでしょう」と語った。
By Graham Green
(1ドル=約80円、1ポンド=約130円)
[Racing Post 2012年11月9日「Champion’s pricetag puts market in spin」]