海外競馬ニュース 2012年02月23日 - No.9 - 3
レース中の騎手はなぜ鞭使用の正確な回数を認識できないのか?(イギリス)[その他]

 騎手は、競馬界の新しい鞭使用ルールを巡る戦いにおいて、優秀なスポーツ科学者という新たな支持者を見つけた。

 すなわち騎手協会(Professional Jockey Association)は現在、F1レースなど選り抜きのスポーツにおける“プレッシャー下での脳機能に関する最新の研究内容”を鞭使用ルールの議論に持ちこんだジョン・ピッツ(John Pitts)氏と共に取り組んでいる。

 ピッツ氏は、競走中に鞭使用回数を数えなければならなくなったことへの対応に苦労している騎手を弁護するため、100年前のヤーキーズ・ドッドソンの法則(Yerkes-Dodson law)を引き合いに出している。

 ピッツ氏はまた、BHA(英国競馬統轄機構)が何の訓練もなしに鞭使用回数の正確なカウントを騎手たちに求めるやり方について批判的であり、新ルール発効後に相次いで騎乗停止処分が生じたことには驚かなかった。

 ピッツ氏は、英国の総合馬術競技会の優秀な参加者であるウィリアム・フォックス・ピット(William Fox Pitt)氏と共に、英国競馬学校(British Racing School)の実習生たちに講義を行っている。また同氏はブリュネル大学のスポーツ科学科を卒業して以来、多くの優秀なスポーツ選手たちやサッカー協会(Football Association)とも連携してきている。


 ピッツ氏は、レースにおいて決勝線まで走り切るには認知能力が限定されるほどの生理的活動と感情的反応が必要になるという証拠をつかんでいる。また、レース騎乗後の騎手に対して鞭使用に関する徹底調査を始めており、ほとんどの場合騎手は鞭を何回使ったか認識していないことを確認した。

 ピッツ氏は、このことが騎手が新しい鞭使用ルールに反対する要因である可能性があるとする一方、他のスポーツ、とりわけF1レースにおける研究で発見されたパターンを指摘した。その研究によれば、認識機能を犠牲にして本能的な生存活動を優先させるよう脳は強制されることが示されている。

 ピッツ氏は、「私の経験で競馬と似通った分野について見てみると、総合馬術競技のクロスカントリーのような極度の緊張が伴う状況において、競技者は認識機能を部分的に喪失するのが普通です」と語った。

「私は現在、定期的にヘルメットカメラを使用して、騎手が騎乗ぶりを思い出し大きなプレッシャーの中での行動や決断を分析しています」。

 裁決委員はレースを審議する前に、鞭を何回使用したと思うか騎手たちに尋ねるべきであるとピッツ氏は述べた。

By Bruce Jackson

[Racing Post 2012年1月29日「Why riders may struggle to count whip strokes」]