賭事産業は1月31日、海外に事業拠点を持つブックメーカーが、事業の一部をジブラルタルなどに移転させて納税を逃れているとして、多国籍企業のスターバックスやアマゾンになぞらえられたことを受けて、納税実績を強調し反論した。
下院の文化・メディア・スポーツ委員会への提出文書において、ジブラルタル賭事ゲーミング協会(Gibraltar Betting and Gaming Association: GBGA)は、英国が海外賭事業者に課税するよう賭事法を改正するのであれば訴訟を起こすと威圧した。
文化・メディア・スポーツ省(Department for Culture, Media and Sport: DCMS)は、賭事法(免許&広告)案を通じて2014年12月までに15%の消費税を導入するとともに、すべての遠隔賭事業者に対する免許付与権限を規定することを望んでいる。
賭事法改正の下院委員会審議に先立つ事前ヒアリングにおいて、ジョン・ウィッティングデール(John Whittingdale)議長は、英国の大手賭事業者がインターネット賭事事業の一部の海外移転により行ったことは“納税逃れそのもの”ではないかと述べた。
そして、遠隔賭事協会(Remote Gambling Association)のCEOクライヴ・ホークスウッド(Clive Hawkswood)氏に向けて、「スターバックス、アマゾンなどの企業に関する論争があると思いますが、大手賭事業者も本質的に同じことを行っています」と発言した。
そして、「これらの企業に対しては、大勢の英国人消費者が多くのお金を支払っていますが、彼らは海外に拠点を置いているため税金を納める必要がないのです」と続けた。
スターバックス、アマゾン、グーグルなどの企業は昨年、法人納税額の開示で大衆の反感を買った。このうちコーヒーのチェーン店であるスターバックスは、2011年に英国で約4億ポンド(約560億円)を売上げたにも拘わらず、英国で事業を展開してきた14年間において860万ポンド(約12億400万円)の法人税しか支払っていなかった。
ウィリアムヒル社(William Hill)、ラドブロークス社(Ladbrokes)、コーラル社(Coral)およびベットフェア社(Betfair)などの大手賭事業者を代表する遠隔賭事協会のCEOホークスウッド氏は、「多国籍企業であれば、商業的に一番有利で、効果的に競争できる場所を拠点とするでしょう」と述べるとともに、「スターバックスが言っているのはそのことだと思います」とウィッティングデール議長のコメントに反論した。
しかしブックメーカーは、この多国籍企業との比較は“全く不適切”であると主張している。
遠隔賭事協会のビジネス担当理事であるブライアン・ライト(Brian Wright)氏は、次のように述べた。「簡単に言えば、現行制度の下で、遠隔賭事税率15%にさらに付加価値税および法人税が伴えば、英国拠点の賭事業が海外拠点の賭事業と競争することはほとんど不可能です」。
「英国の税率が妥当であれば、英国のインターネット賭事市場を支配している企業は、とっくに英国賭事委員会(Gambling Commission)に申請して運営免許を取得しているでしょう。それゆえ、これは納税義務回避という問題ではなく、政府が税制を正す必要性があるのです。初期調査のほとんどにおいて、賭事業者が経費を負担できる理想的な税率は5%であるとされていました」。
GBGAは、法案が通過してしまえば訴訟手続きを開始する以外に選択肢はほとんどないと主張した。そして、インターネット賭事産業および現行の英国法制度による消費者保護レベルのどんな客観的分析においても、法案を通過させることは見当違いで是認できないものであると述べた。
英国賭事委員会とDCMSは、次回2月12日の下院委員会で証言する予定である。
下院委員会のメンバーである保守党のフィリップ・デイヴィス(Philip Davies)議員は、「これまでの議論は税金と税率に重点が置かれているようです。私たちは規制という観点から法案がどうしても必要である理由をまだ聞いていません」と語った。
By Jon Lees
(1ポンド=約140円)
[Racing Post 2013年2月1日「Offshore bookies slam Starbucks comparison」]