2月16日にライトニングS(G1 芝1000 m)で見事な優勝を果たし、豪州・アジアの最高記録となる23勝の無敗記録を達成した豪州のスター馬ブラックキャビア(Black Caviar)は、キングズスタンドS(G1 芝5ハロン)に出走するため、この夏ロイヤルアスコット開催への劇的復帰を果たす可能性がある。
同馬は、コースレコードの走りで勝利のカムバックを果たした。すなわち、昨年6月にダイヤモンドジュビリーS(G1 芝6ハロン)で僅差の勝利を収めて以来8ヵ月ぶりのフレミントンパーク競馬場での出走で、ライバル馬を情け容赦なく退け、この馬の功績を称え“ブラックキャビア”が冠名となっているG1レースを3年連続で制した。
アスコット競馬場の国際関係担当理事であるニック・スミス(Nick Smith)氏は、同馬がオッズ1-10(1.1倍)で余裕の勝利を飾るのをメルボルンで目の当たりにした。そして夜の馬主パーティーに出席したあと、3度のワールドチャンピオンに輝いた同馬が再び英国で出走することを大いに期待しつつ帰国した。
「ご想像の通り、ライトニングS後の祝賀会での最大のトピックは“次はどのレースに出るのか”でした。あらゆる選択肢があり、現役最後のシーズンを豪州で出走することは皆にとって重要でしょうが、馬主たちは明らかにロイヤルアスコット開催、とりわけキングズスタンドSに出走することを選択肢に入れていました」。
ライトニングSは、2013年グローバルスプリントチャレンジ(Global Sprint Challenge)対象競走の最初のレースで、ロイヤルアスコット開催の勝馬を送り出してきた伝統があり、これまでにショワジール(Choisir)、テイクオーバーターゲット(Take Over Target)、ミスアンドレッティ(Miss Andretti)およびシニックブラスト(Scenic Blast)がアスコット競馬場で勝利を挙げている。
ピーター・ムーディー(Peter Moody)調教師は、ブラックキャビアがカムバックを勝利で飾ったあといつになく心情を吐露し、2012年は目標とするレースを間違えたと述べたことが報道された。同調教師は今週、同馬のシンジケート馬主と今後の予定について話し合う予定である。
スミス氏は、コックスプレートの1着馬オーシャンパーク(Ocean Park)と2着馬オールトゥーハード(All Too Hard)を今年のロイヤルアスコット開催に送るとの確約を取り付けた上で、次のように語った。「ブラックキャビアの関係者が昨年のロイヤルアスコット開催で素晴らしい時を過ごしたことは皆が知っています。彼らはブラックキャビアを新たな観客に披露することを楽しんでいました。今年どのような決定がされようと、昨年どこにでも遠征でき豪州に留まることもできたのに、ロイヤルアスコットに出走してくれたことに感謝しなければなりません」。
「数ヵ月前はブラックキャビアをロイヤルアスコットで見られる可能性は無いと思われましたが、今は真剣に検討されています。このことは非常に喜ばしい事ですが、まだ本格的な話し合いはなされていないので、私たちも有頂天にならず現実的にならなけれなりません」。
アスコット競馬場での辛勝後ボロボロの傷ついた状態で豪州に帰国したために無理だと思われた6歳シーズンのスタート時には、ブラックキャビアはほとんど強い印象を与えなかった。
ブラックキャビアは道中ずっと先行し、同厩のG1馬モーメントオブチェンジ(Moment Of Change)に優に2馬身半差を付けて勝利した。3着はゴールデンアーチャー(Golden Archer)であり、ムーディー調教師の管理馬が1着〜3着を占めたことになる。
ムーディー調教師は、「本当に彼女のことを誇りに思います。初めて少し感情的になりました。私たちはもうだめかと思っていました。カムバックを果たしたことに満足しています」と語った。
同馬は5ハロンを55秒42で駆け抜け、スペシャル(Special)が長く保持してきたコースレコードを0.08秒更新した。
同調教師は次のように続けた。「こんなに神経質になったのは非常に久しぶりです。今回の彼女の勝利はまさに朗報であり、誰とでもこれを分かち合おうとする馬主たちにとても感謝しています。このような素晴らしい結果となり、それを豪州の仲間すべてと分かち合うことを想像してみてください。彼らこそ本当のオーストラリア人だと思いませんか?」。
「彼女を再出走させる見込みはないと思っていました。調教の仕事は終わったと考えていましたが、カムバックレースで勝利を成し遂げ、コースレコードを打ち立てました。私は言葉を失いました。近くに寄れば、涙が見えるかもしれません」。
ルーク・ノレン(Luke Nolen)騎手は、最終1ハロンでの“放心状態”で危うく勝利を取り逃がしそうになったアスコットでのトラウマについてやっと冗談を言うことができた。
そして、「今日は手を下げず、彼女をギュッと握っていました。確実にゴールさせるために、手綱をしごきました。23勝ということに自己満足したくはありませんでした」と語った。
By Nicholas Godfrey
[Racing Post 2013年2月17日「Ascot back on menu as Black Caviar shines」]