これから数週間のうちに、ニューマーケットのバンステッドマナースタッド(Banstead Manor Stud)に繋養されているフランケル(Frankel)と交配される予定の、傑出したG1牝馬や優良馬を生む繁殖牝馬のリストに目を通すと、北米の名牝の多いことが目立つ。
米国の芝G1競走で優勝したアルワジーハ(Alwajeeha)、ダイナフォース(Dynaforce)およびアイコンプロジェクト(Icon Project)だけではなく、バランス(Balance)およびエデンズムーン(Eden’s Moon)、そしてエデンズムーンの 母エデンズコーズウェイ(Eden’s Causeway)もこのリストに入っている。ダート、ポリトラックおよびクッション馬場で優秀な成績を収めたインランジェリー(In Lingerie)やミスエノ(Mi Sueno)も同様である。またG1勝馬のベラミーロード(Bellamy Road)、ララー(Laragh)、シャックルフォード(Shackleford)の母馬も、英国に渡りフランケルと交配される予定である。
こうしたフランケルに対する支持は、昨年の大きな流れの1つであり、米国の生産者はフランケルとその父ガリレオ(Galileo)という流れに乗り遅れないようにしているのだ。
愛ダービーを制したガリレオ産駒のケープブランコ(Cape Blanco)は、昨年の繁殖シーズンで220頭に種付けした北米で最も人気のある種牡馬であった。間違いなくこのデータに促されて、ケンタッキーの牧場は最近、フランケルの3/4兄弟ブレットトレイン(Bullet Train 父サドラーズウェルズ)や英ダービー2着のガリレオ産駒ミダースタッチ(Midas Touch)の購入契約に署名した。
ガリレオ産駒は現在米国および欧州の生産者から高く評価されており、このことは他の種牡馬に影響を与え、昨年の現役馬セールでは、米国人エージェントがバニンパイア(Banimpire 父ホーリーローマンエンペラー)やヘーゼルラヴァリー(Hazel Lavery 父エクセレントアート)のような馬を先を争って購買した。
ケンタッキーダービーとプリークネスSの優勝馬アイルハヴアナザー(I’ll Have Another)と2着馬ボードマイスター(Bodemeister)、およびベルモントSの優勝馬ユニオンラグズ(Union Rags)がいずれも故障のため競走後すぐに引退したために、米国の競馬関係者は、2歳、3歳、4歳にわたり無敗を誇ったフランケルに注目し称賛するようになったと考えたくなる。
ガリレオとフランケルへの熱が北米へ伝播した要因は、それに違いない。しかし、昨年の米国のクラシック勝馬の早い引退が米国の競走馬生産を低下させるとするのは当たらないだろう。昨年欧州で活躍した2歳馬のドーンアプローチ(Dawn Approach)とレックレスアバンダン(Reckless Abandon)のうち、ドーンアプローチは米国生産牝馬から生まれ、レックレスアバンダンはベルモント競馬場のG2優勝で種牡馬の地位を手に入れたエクスチェンジレート(Exchange Rate)の産駒であるということを忘れてはならない。
しかし、感じ方は極めて重要であり、フランケルの3年間の黄金時代と、米国が数シーズン続けて素晴らしいパフォーマンスを見せるスター馬の不在に苦しんだ時期とが一致していたという事実が、欧州の生産界を少し後押ししたようだ。
ジャドモントファーム(Juddmonte Farms)のフィリップ・ミッチェル(Philip Mitchell)場長は今週、種牡馬フランケルの交配予定リストの国際性について、「世界全体が競走馬としてのフランケルの能力と安定性に畏敬の念を抱いていると思います」と総括した。
By Martin Stevens
[Racing Post 2013年2月17日「US support of Frankel looks a sound decision」]