海外競馬ニュース 2013年08月29日 - No.35 - 3
ペナンターフクラブの参加で、英国のセリは活性化するか(イギリス)[生産]

 ペナンターフクラブ(Penang Turf Club:PTC)が約30年ぶりに英国から馬を輸入する予定であるというニュースが出たが、英国のマイナーなセリ業界はこの重要な新規購買者から利益を得ることになるだろう。

 PTC理事会メンバーのダトーセリ・テ・チュン・ベン(Dato’ Seri Teh Choon Beng)氏(74歳)はマレーシア競馬サークルのカリスマ的人物であり(“ダトー・セリ”は英国の爵位に相当するマレーシアの称号)、ペナンにとってふさわしい馬を見つけるためにホーシズファーストレーシング社(Horses First Racing:HFR)と連携する構えである。

 PTCは、HFRのイーモン・ウィルモット(Eamonn Wilmott)氏のパートナーであるジェレミー・ガスク(Jeremy Gask)調教師が管理する2歳馬フライングベア(Flying Bear)に関心を持っている。

 テ・チュン・ベン氏は、「輸送費が魅力的であることを条件に、英国のセリに再び参加し馬を購買したいと思っています。英国での馬の価格は今や再び魅力的で、輸入し馬主にリースできる馬の購買が可能だと考えています。新規馬主の獲得を考えており、英国での購買はそれを実現する1つの手段となるかもしれません」と語った。

 ウィルモット氏は次のように付言した。「マレーシア競馬界の最高位にあるベン氏と緊密な協力関係を構築することに期待しています。購買馬のうちの数頭はおそらく、マレーシアへの輸送前の2〜3週間を私たちの元で過ごすでしょう。そして、他の馬は英国でしばらく調教し、最初の勝鞍を挙げさせるよう努めるでしょう」。

 1995年の引退までに1,825頭の勝馬を管理し、マレーシア競馬史上最も成功した調教師であるテ氏は、英国の競馬界と生産界においてもよく知られている。

 テ氏は1970年代の全盛期に、主にマイケル・ジャーヴィス(Michael Jarvis)調教師に現役馬を預けていた馬主のジェリー・サング(Jerry Sung)氏のオリックステーブル(Auric Stables)とともに、購買者として知られた顔であった。テ氏が購買し所有した馬の中で、英ダービー(G1)の最後の直線で先頭に立ったもののニジンスキー(Nijinsky)の4着となったグレートウォール(Great Wall)はスコビー・ブリーズリー(Scobie Breasley)調教師が調教し、またイースターS勝馬マンオブビジョン(Man Of Vision)はジャーヴィス調教師が管理していた。

 調教師初のPTC理事会入りを果たす前、テ氏はマレーシアと 界における支配者的存在で、リーディングトレーナーとなったのは13回を下らない。

 テ氏の成功には英国の生産馬あるいは調教馬が大きく寄与し、シンガポールダービーとシンガポールゴールドカップにおけるそれぞれ5度の優勝などビッグレースの優勝のほとんどをもたらした。たとえば、1971年にテ氏の最初のダービー勝馬フォレストジム(Forest Jim)は英国生産馬であり、1995年のテ氏の最後のダービー勝馬となったコートラインジェスター(Courtline Jester)はジャーヴィス調教師に管理されて英国ヘイドック競馬場で優勝している。

 香港ドバイのほかやや規模の小さいシンガポールなどアジアのいくつかの競馬地域は、すでに英国調教馬にとって良い市場になっている。テ氏は、1973年に25頭をマレーシアに持ち込み、英国からの馬輸入の先駆者となったが、1986年以降その輸入活動は活発ではなかった。同氏や他のマレーシア競馬関係者はいずれも海外から馬を輸入し続けてきているが、その輸入先は英国ほど遠くなくより安い国であった。

 テ氏は次のように説明した。「率直に言って、英国の市場は高すぎて手が出ず、このところはニュージーランドやオーストラリアから馬を輸入してきました。それらの国で優良馬を獲得し価値ある契約を結ぶこともできますが、昨今は英国の市場価格が再び手頃な水準になりました。英国がずっと好きで、娘がバースに住んでいるので年2回は渡英しています」。

 「一流のセリで購買できるかどうか分かりませんが、ブリーズアップセールなどを検討するつもりです。そこで先ず6頭ほどを購買し、そこから英国調教馬を増やして行ければと思っていますが、輸送費の問題が決定的に重要です」。

By Nicholas Godfrey

[Racing Post 2013年7月25日「Penang Turf Club could boost second-tier sales」]