今回のジャックルマロワ賞(G1)において、今後の多くの活躍をイメージさせるようなレース展開の中で、ムーンライトクラウド(Moonlight Cloud)とオリンピックグローリー(Olympic Glory)はスリルに富んだ競り合いを演じたが、長い写真判定の末フレディ・ヘッド(Freddy Head)調教師の歴史的牝馬ムーンライトクラウドの勝利となった。
ムーンライトクラウドは現役生活の最終段階に入りつつあるが、オリンピックグローリーは同じリチャード・ハノン(Richard Hannon)厩舎のトロナード(Toronado)と並んでこれから波に乗ろうとしている。仏オークス勝馬トレヴ(Treve)を加えれば、この3頭は、今秋の競馬をカタールのジョアン殿下(Sheikh Joaan Al Thani)の服色であるグレーと海老茶色の一色に染めるおそれがある。
フランキー・デットーリ(Frankie Dettori)騎手にとって、新天地でのG1勝利にあと一息だったこのレースについて、「敗れて疲れましたが、全体的に納得の行く内容でした。オリンピックグローリーはベストの状態に戻ってきており、この走りなら言うことはありません」とまとめた。
ムーンライトクラウドはこのレースでゴルディコヴァ(Goldikova)の勝ちタイムを上回り、牝馬で初めてドーヴィル競馬場のモーリスドゲスト賞(G1)とジャックルマロワ賞(G1)両レースの勝馬となった瞬間、ヘッド調教師とティエリー・ジャルネ(Thierry Jarnet)騎手は喜びを露わにしたが、着差が短アタマ差にまで詰め寄られたレースだったことから、その表情にはかなりの安堵感が混じっていた。
レース前の大方の予想において、たった1回マイル競走を制しただけのムーンライトクラウドが残り3ハロンの地点で他馬を大きく引き離す展開は、ほとんど起こりそうにないと思われていた。
ヘッド調教師は次のように語った。「ティエリー(ジャルネ騎手)は、先行馬をかわすために仕掛けた際、馬はリラックスしていたと言い、わずかに失速したがまだ限界だとは考えていませんでした。また、有り余るほどの持久力があったと言い、ムーンライトクラウドは実際懸命に走りきり、トップでゴールしました」。
もしオリンピックグローリーがムーンライトクラウドをとらえていたなら、間違いなくジャルネ騎手の早仕掛けだったと激しく非難されていただろう。しかし彼は栄光を手にした。それと同時に、期待外れだったドーンアプローチ(Dawn Approach)を話題から外し、デットーリ騎手とオリンピックグローリーから勢いを失わせた。
ヘッド調教師は次のように続けた。「騎手としてジャックルマロワを6回制しましたが、どの勝利も非常に思い出深いです。ゴルディコヴァで調教師としての勝利、それも素晴らしい瞬間でした。ムーンライトクラウドはこの勝利でドーヴィルの伝説ミエスク(Miesque)やゴルディコヴァの仲間入りをしたと思います」。
競馬ファンがこの特別な牝馬の活躍を満喫するには、あと1度の機会しかない。それは、凱旋門賞ウィークエンドにロンシャン競馬場で施行される、カーテンコールとなりそうなフォレ賞(1400m G1)である。
ヘッド調教師は、「馬主のジョージ・ストローブリッジ(George Strawbridge)氏は最高潮でキャリアを終わらせたいと思っています。昨年のサンタアニタ競馬場での成績は芳しくなかったので、おそらくフォレ賞で終わらせると思います」と語った。
ムーンライトクラウドが最後に向かう一方、オリンピックグローリーは俄然トップクラスの仲間入りをした。またデットーリ騎手(42歳)は、ジョアン殿下との新たな契約によって優良馬に騎乗し、今シーズンを華々しく終えることを確実にした。
5月のロンシャン競馬場で期待外れの結果に終わって以来の出走であったオリンピックグローリーは、19-1(20倍)のオッズという人気薄だった。
調教助手のリチャード・ハノン・ジュニア(Richard Hannon jnr)氏は、「オリンピックグローリーはフランス遠征から戻った後良い状態ではなかったので、調教に多くの時間を掛けたところ、それに応えてくれました。非常に良い馬で、ムーランドロンシャン賞(1600m G1)、クイーンエリザベス2世S(1600m G1)などを今後の目標とします」と語った。
ハノン厩舎には同じくジョアン殿下所有のサセックスS(G1)勝馬トロナードがいるため、厩舎スタッフは現在羨ましいほどの贅沢な悩みを抱えている。
ハノン氏は次のように語った。「2頭が同じ馬主で生じる問題はありません。共に大きな仕事をするかもしれませんが、欧州でどれぐらい優れているかは問題ではありません。両馬ともブリーダーズカップに向かう可能性があります。また、マイルが絶対的な適正距離です」。
ドーヴィル競馬場での悔しい敗戦にも拘わらず、デットーリ騎手は最も幸せな男だったかもしれない。なぜなら、ジョアン殿下の馬新帝国は途切れなく優良馬を送ってくるからだ。
デットーリ騎手は、オリンピックグローリーについて次のよう語った。「7月に調教で乗った時、素晴らしい走りぶりだと感じました」。
「ジョアン殿下には今後この馬はビッグレースで良い勝負になると言いましたが、長期休養後がこのようなタフなレースだったので、“勝つ”という言葉は控えました。しかし、この馬は相応の走りを見せたので満足しています」。
「オリンピックグローリーもトロナードもまだ3歳で、傑出したマイルホースが同時に出現しました。同じレースを走ることはないでしょうが、私たちはハノン調教師がどのように使うのか見守るのみです」。
2013年ジャックルマロワ賞(G1)の結果 | |||
1着 | ムーンライトクラウド(Moonlight Cloud) | オッズ11-4(3.75倍) | |
2着 | オリンピックグローリー(Olympic Glory) | オッズ18-1(19倍) | |
3着 | アンテロ(Intello) | オッズ5-2(3.5倍) | |
馬主・生産者: ジョージ・ストローブリッジ (George Strawbridge) |
調教師: フレディ・ヘッド(Freddy Head) | ||
騎手: ティエリー・ジャルネ(Thierry Jarnet) | 着差: 短アタマ、アタマ、1馬身3/4 |
By Scott Burton
[Racing Post 2013年8月12日「Moonlight magic as Glory takes her to wire」]