IFHA(国際競馬統轄機関連盟)は12月19日、サラブレッド生産における人工授精禁止を維持する豪州の連邦裁判所の決定を“素晴らしい帰結”と賞賛した。
シドニーターフクラブ(Sydney Turf Club)の元会長ブルース・マッキュー(Bruce McHugh)氏は、馬の生産事業を立ち上げようとしていたことから、国際的な人工授精の禁止は貿易制限であると主張してサラブレッド競馬統轄機関を相手に訴訟を起こしていた。
同氏は、種牡馬が授精のために肉体的に牝馬に種付けを行わなければならないとすることは、費用が掛かり危険を伴うと主張した。
しかし12月19日、連邦裁判所のシドニーオフィスの裁判官であるアラン・ロバートソン(Alan Robertson)判事は、豪州をサラブレッドの人工授精を容認する世界で最初の国にしようとするマッキュー氏の訴えを棄却し、4ヵ月続いていた訴訟を終わらせた。
IFHAのルイ・ロマネ(Louis Romanet)会長は、「この訴えを棄却したことは素晴らしい帰結であり、歓迎します。サラブレッドの定義は、生産、競馬、賭事に関する国際協定で明確に規定されており、世界中のIFHAメンバー国すべてが適用しています。その定義では人工授精等によらない自然交配を要求しています」と語った。
ロマネ会長は、自然交配に賛成する証言を行い、豪州の生産当局の主張を支持し、IFHAの副会長で香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club)のCEOウィンフリード・エンゲルブレヒト-ブレスケス(Winfried Engelbrecht-Bresges)氏も同様に支持した。
豪州が単独で人工授精を容認する決定をしたならば、他の68のIFHAメンバー国において豪州馬の出走が認められなくなるため、深刻な結果がもたらされていただろう。
人工授精に反対する人々は、人工授精が導入されれば、ごくわずかな種牡馬が非常に多くの牝馬に授精する結果になるだろうと警戒している。
しかし人工授精の支持者は、種付頭数には上限を設けることができ、また人工授精は生産者が利用できる種牡馬の地理的領域を広げ、性病の蔓延を無くし、種牡馬の牧場への牝馬の輸送費を節減することができるなどと主張している。
オーストラリア血統書(Australian Stud Book)の管理者マイケル・フォード(Michael Ford)氏は、裁判所の決定は豪州競馬界の品位を守ったと語った。
そして、「この判決は、現在豪州経済の重要な原動力となっているサラブレッド競馬産業で生計を立てている数十万のオーストラリア人にとって完全な勝利です」と付言した。
By Martin Stevens
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[Racing Post 2012年12月20日「Sydney court dismisses bid to overturn AI ban」]