この週末カリフォルニア州で英国馬が目覚ましい活躍をしたことにより、BHA(英国競馬統轄機構)のCEOポール・ビター(Paul Bittar)氏は、平地シーズン開幕時の気分とは全く異なり競馬の現状にかなり手応えを感じている。
この春には、管理馬へのステロイド投与でマームード・アル・ザルーニ(Mahmood Al Zarooni)調教師に8年間の調教停止処分が科されたことで、競馬に対する否定的な報道と議論のみとなったが、最近における競馬界と賭事産業、競馬場とホースマンの間の協調関係の醸成や、ブリーダーズカップでの英国調教馬4頭の優勝は、ビター氏の考え方を変化させた。
第30回ブリーダーズカップでの大収穫は、BCにおける英国調教馬の最高記録に並ぶもので、一方オーストラリアでの競馬でもサイドグランス(Side Glance)とルシェロ(Ruscello)が英国に素晴らしい勝利をもたらした。
ビター氏は次のように語った。「平地シーズンが始まったばかりの頃、一連のステロイド問題が発生しました。いまシーズン終了に向かいつつありますが、これらの問題の大半は片付いています」。
「また他国の統轄機関がアナボリック・ステロイドの不使用に向けて最低基準のハードルを上げるために抜本的措置を採る動きがあり、これは前向きな成果と言えます。英国でステロイド問題が発生した時は、この問題を世論に訴えて基準を変える機会だと考えました」。
「この問題の収束と海外での英国馬の素晴らしいパフォーマンスで、英国競馬の現状についてかなり良い雰囲気を感じながら年を越せそうです」。
「それに加え、賞金額の合意、ブックメーカーとの4年間の賦課金の契約も結べたので、状況はそう悪くはないと感じています」。
「英国の競馬はその統轄と振興において真に指導的役割を果たしています。競馬がうまく管理されていると見られているからこそ、関係者は馬を遠征させてくるのです。世界の競馬の先頭に立っています。そのことは私たちにとってかなり大きな責任も伴います」。
「英国競馬は質と多様性にかけては世界一だと思います。その活躍は主として国内に限られていますが、この週末には、ブリーダーズカップでの素晴らしいパフォーマンス、およびオーストラリアの最大の競馬開催メルボルンカップデーのマッキノンS(G1)でサイドグランスに騎乗したジェイミー・スペンサー(Jamie Spencer)騎手の素晴らしい騎乗ぶりもあり、国内外にまたがる特別なものとなりました」。
「ブリーダーズカップへの遠征は数としては多くありませんでしたが、質の面では非常に優れていたことを結果が示しています」。
「私のオーストラリア時代には、豪州スプリンターがロイヤルアスコット開催に遠征し、英国の地で英国馬を破ることだけが望みでした」。
「それは、競馬ファンを、世界最大のレースで自国の馬を応援する気持ちにさせるということなのです。また個々の馬と競馬全体の注目度を上昇させます。ブリーダーズカップの4レースに優勝したことは、競馬への注目度と一般的な興味のアップにつながります」。
「これはまったく特別なことで、本当に誇りを感じました。私は、長く英国競馬に従事している人々と同じくらい英国馬のパフォーマンスに興奮を覚えました。世界の舞台における英国騎手と調教師の振る舞い方には、誇るべき何かがあります」。
また、ビター氏は、サンタアニタ競馬場での2日間からいくつかの教訓を英国に持ち帰り、ブリーダーズカップと比べて英国競馬が取り組むべき分野として、競馬開催の盛上げ手法、来場者に対する良質なサービスの提供および技術の活用を挙げた。
ビター氏が挙げるサンタアニタ競馬場から学ぶべき点 > > 開催の盛上げに向けての手法
ビッグレース開催日前の数日間の朝食付き調教やクロッカーズコーナー(競馬ファンが無料で提供される朝食ビュッフェを楽しむことができるコース沿いのダイニングスペース)のようなイベントは、来たる日に向けてファンに感心を向けさせるのに良い方法です。メルボルンカップの公開調教と同じことは他のどの競馬場も行っていませんが、ブリーダーズカップはその期待感を作り出そうとしており、そこに英国にとっての教訓があります。 > > 来場者に対する良質なサービスの提供
実況やレースに先立つ情報が聞き取れないほど音響サービスがひどく粗末な競馬場がたくさんあります。しかし、サンタアニタ競馬場の音響は素晴らしく、大きな歓声が沸きあがるビッグレースの終盤でも実況を聞くことができました。Wi-Fiは途切れること無く、高速で、観客は自分のアイパッドやアイフォンを使ってネット上で馬券を購入することが可能でした。 > > データ表示の方法 統計とデータを多用するアメリカのスポーツ一般と同じく、統計、時計、その他のデータの表示方法は卓越しており、英国よりずっと優れていました。米国競馬は非常にタイム重視なので無理からぬことであり、英国で賭事の大きな後押しとなるかどうかは分かりませんが、それは顧客へのサービス向上となるでしょう。 |
ブリーダーズカップでの欧州馬の成績 | |||
開催年 | 開催競馬場 | 出走頭数 | 勝馬頭数 |
2008 | サンタアニタ競馬場 | 24頭 | 5頭 |
2009 | サンタアニタ競馬場 | 30頭 | 6頭 |
2010 | チャーチルダウンズ競馬場 | 20頭 | 2頭 |
2011 | チャーチルダウンズ競馬場 | 27頭 | 2頭 |
2012 | サンタアニタ競馬場 | 24頭 | 2頭 |
2013 | サンタアニタ競馬場 | 16頭 | 5頭 |
By Jon Lees
[Racing Post 2013年11月5日「Bittar pride over British success at Santa Anita」]