ダグラス・アースキン-クラム(Douglas Erskine-Crum)氏は、約5年間CEOを務めた競馬賭事賦課公社(Levy Board: 賦課公社)を去り、カリド・アブドゥラ(Khalid Abdullah)殿下のジャドモントファームグループ(Juddmonte Farms)の競馬・生産事業における新ポストに就任する。
同氏は、アブドゥラ殿下がより多くの時間をビジネスに充てるため英国と欧州で過ごす時間を減らす予定であることから、ジャドモントグループのCEOに選任された。
同氏の後任者は、年が明けて賦課公社の言う“前進する最適な経営構造を提案するための見直し”がスタートした後に任命されることとなっている。
20年以上英国軍の近衛歩兵連隊(Scots Guards)に勤務したアースキン-クラム氏は、トリストラム・リケッツ卿(Sir Tristram Ricketts)の逝去を受けて、2008年2月に賦課公社に加わった。
それ以前は競馬場の再開発論争で2006年に辞職するまで13年間アスコット競馬場のCEOを務めていた。
12月20日に賦課公社のポール・リー(Paul Lee)会長に辞職を願い出たアースキン-クラム氏は、多くの優秀馬の中で特にフランケル(Frankel)を生産した事業体で働く機会を得なければ、競馬界最大の資金調達機関のポストを去ることはなかっただろうと述べた。
アースキン-クラム氏は12月21日、「賦課公社は経営および人材配置の点でますます強力になってきており、非常に力強いチームです。私が賦課公社を去る理由は、単にこの素晴らしい役職が新たに与えられたからです」と語った。
賦課公社のCOOも兼務するアースキン-クラム氏は、これから辞職までの6ヵ月間に賦課公社を、できる限り費用効率が高く効果的な競馬界と賭事産業との橋渡し役とするための検討に関わる予定である。
同氏は次のように語った。「会長と理事会がどう進むべきかを決定できるよう、私たちは年が明けて2013年になったら適切な経営構造の見直しを実施するつもりです」。
そして自身の新たな役割について、「すでに力強いチームであり、今後6ヵ月の間どのように進めるか検討するため一緒になって取り組まなければなりません」と付け足した。
リー会長は、アースキン-クラム氏の賦課公社での業績に敬意を払い、「彼を失うのは非常に悲しいですが、英国競馬の将来にとって重要な組織で有力な地位を得たことと、引き続き最高レベルで競馬界への貢献を続けてもらえることはとてもうれしいことです」と語った。
そして次のように付言した。「彼が賦課公社で成し遂げた仕事と彼が仕立て上げたチームはとても強力であり、どのような将来に対しても良好な基盤となるものと確信しています。私たち皆の限りない感謝と私の個人的な祈りを捧げます」。
ジャドモントファームの声明は、アースキン-クラム氏のCEO就任後、他の上級管理職の職務と責任に変更はないと述べている。
サウジアラビアのアブドゥラ国王のいとこで75歳のアブドゥラ殿下は、テレビ、衛星電話、ケータリング、電子機器、保険およびセメントの分野に4人の息子が関わって運営されている複合企業体マワーリド社(Mawarid)の監督から半ば引退していると考えられている。英国に6つの拠点を持ち米国に3つの生産牧場を持つジャドモントファームの今回の経営陣再編成によっても、同殿下の競馬および生産事業への関与には直接の変化はないと考えられている。
同殿下は昨シーズン、英国の平地競走に延べ113頭を出走させ、また米国では350頭のうち100頭の繁殖牝馬を繋養し、9月にセリへの参加を再開し、ボブ・バファート(Bob Baffert)調教師に預ける予定の1歳馬を購買した。そしてボビー・フランケル(Bobby Frankel)調教師の死後セリへの参加を中止していたカリフォルニアでの活動を再開させた。
アブドゥラ殿下のレーシングマネージャーであるテディ・グリムソープ(Teddy Grimthorpe)氏は、「私たちはアースキン-クラム氏と共に仕事をすることを楽しみにしており、同氏がジャドモント牧場にとって素晴らしい財産となることを望んでいます」と語った。
By Bill Barber
[Racing Post 2012年12月22日「Erskine-Crum to leave levy post for Juddmonte」]