シドニーで新たに創設された“ザ・チャンピオンシップス(The Championships)”は、ニューサウスウェールズ州政府から提起された資金調達に関する論争により、短命に終わるかもしれない。
クイーンエリザベスS(G1)を目玉とするG1競走8レースからなる“ザ・チャンピオンシップス”は、ランドウィック競馬場のシドニーオータムカーニバルの2回の土曜日(訳注:今年は4月12日と26日)に施行され、その開催にあたり、退陣したバリー・オファーレル(Barry O’Farrell)首相率いるニューサウスウェールズ州政府が1,000万豪ドル(約9億6,000円)の助成金を出していた。
しかし、後任のマイク・べアード(Mike Baird)首相が、今後4年間このイベントを運営するため競馬産業に(助成金ではなく)同額の貸付金として提供すると提案したことは、レーシングNSW社(Racing NSW)のCEOピーター・ヴランディス(Peter V’landys)氏を憤慨させた。
ヴランディス氏はこの新たな提案を断り、他州と同様の一般的な資金調達モデルがニューサウスウェールズ州に導入されなければ、賞金総額1,820万豪ドル(約17億4,700万円)を誇る看板競馬の開催はたった1年で危機に晒されると語った。
ヴランディス氏はシドニーモーニングヘラルド紙(Sydney Morning Herald)に対し、次のように語った。「これは私たちが半年前に断った提案です。私たちは前首相とは一緒に取り組む上で良い関係を築いていましたが、貸付金の提案は受け入れられません。貸付金を受け取れば返済しなければならず、タブコープ社(Tabcorp Holdings Ltd.)への分配金を削減しなければならないでしょう」。
「“ザ・チャンピオンシップス”では賭事売上げが増加したので、貸付金計画の下で州政府は1,000万豪ドル(約9億6,000万円)の返済金を受け取るだけでなく、このイベントの利益を共有することになります。これが公正であると言えるでしょうか?」
しかしヴランディス氏の主な目標は、賭事売上げに対する非常に高い控除金を減少させるようNSW州政府を説得することである。同氏は通信社(AAP)に対し次のように語った。「控除金は変更されなければなりません。この州の競馬の将来に関わることです。私たちが最初から訴えてきたことは他と同等の事業条件です」。
「私たちは州政府とともにタブコープ社の資金調達モデルについて1年以上取り組んできました。そして“ザ・チャンピオンシップス”はその一部に過ぎません。そして、州全体の賞金額増加に充てられる9,000万豪ドル(約86億4千万円)を私たちにもたらすタブコープ社への分配金モデルを検討しています」。
AAPによれば、NSW州の資金調達モデルは100豪ドルの賭金につき4.70豪ドルを競馬産業に、3.22豪ドルを州政府に与えている。一方、ヴィクトリア州の競馬産業は100豪ドルの賭金につき7.9豪ドルを受け取り、ヴィクトリア州政府は1.28豪ドルを受け取っている。
「今年“ザ・チャンピオンシップス”を運営するため使われた1,000万豪ドル(約9億6,000万円)は、もし私たちがヴィクトリア州と同じ資金調達モデルを持っていたとすれば、毎年受け取るであろう9,000万豪ドル(約86億4,000万円)の頭金程度に過ぎません」とヴランディス氏は語った。
そして、「この資金調達問題が解決するまで、将来の計画を練ることはできません。これはあらゆる段階において、競馬を阻害する問題です。NSW州政府は今では他の州よりも多くの控除金を受け取っており、私たちは公平な事業条件が得られるように交渉してきました」と付言した。
By Nicholas Godfrey
(1豪ドル=約96円)
(関連記事)海外競馬ニュース 2013年No.48「オーストラリア、シーズン終盤にチャンピオンシップ戦を開催(オーストラリア)」
[Racing Post 2014年5月21日「State funding row puts Sydney’s Championship meeting in doubt」]