海外競馬ニュース 2014年10月09日 - No.40 - 4
BHA、香港ジョッキークラブの“海外ラシックス使用禁止ルール”に倣わず(国際)[獣医・診療]

 香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club: HKJC)は香港の調教師が米国でラシックスを使用することを禁じたが、BHA(英国競馬統轄機構)では海外でのラシックス使用を禁ずる計画はないとのことである。(訳注:ラシックスはフロセミドの商品名。別名サリックス

 香港のマイケル・チャン(Michael Chang)調教師は、その管理馬のリッチタペストリー(Rich Tapestry)が10月と11月に米国でブリーダーズカップなど2レースに出走する際、HKJCから、たとえ同馬がこれまでに4回競走中に出血しているにしても、この抗出血剤(ラシックス)を投与してはならないと通告されていた。

 競馬を厳しく統制するHKJCは、免許を付与する関係者や競走馬の遠征に対して他の競馬統轄機関よりも大きな権限を持っており、チャン調教師はこの決定に交渉の余地はないものとして受け入れている。

 英ジョッキークラブが英国競馬を運営していた頃は、調教師に対してブリーダーズカップに管理馬を出走させる際にはラシックスを使用しないことを要求していたが、この勧告はほとんど聞き入れられなかった。欧州から定期的にブリーダーズカップに参戦する調教師の中ではアンドレ・ファーブル(Andre Fabre)調教師のみが、米国以外のすべての競馬統轄機関が事実上禁止するこの薬物の競走当日使用を行っていない。

 BHAのスポークスマンは次のように語った。「BHAの権限は英国内の競走においてのみ有効という立場です。BHAが免許を付与する騎手や調教師が海外の競走に参加する時は、彼らはBHAではなくその国・地域の競馬管轄機関のルールに制約されるというのが、BHAの見解です」。

 「ただし、アナボリック・ステロイドの使用については例外です。たとえ他の競馬統轄機関がアナボリック・ステロイドの使用を許容しても、BHAはこれを違反と見なし、英国拠点の調教師が海外の競馬管轄区でこの薬物を使用する場合は重大な罪であると見なします。そのような事案は、2015年から実施される予定の懲罰調査と懲戒処分の対象になるでしょう」。

 「アナボリック・ステロイドと、競走当日は禁止されているが調教中の使用は違反とならないラシックスのような薬物の間には著しい違いがあります」。

 全国調教師連合会(National Trainers' Federation)のCEOルパート・アーノルド(Rupert Arnold)氏は、調教師たちは米国で管理馬を出走させる際には、ラシックスの使用について自由に選択できることを望むだろうと語った。

 そして次のように付言した。「調教師たちは海外では対等に競走できるべきであると考えていると思います。もしHKJCのようなルールがあれば、彼らはおそらく米国に遠征しないでしょう」。
訳注:10月4日、香港調教馬リッチタペストリーはサンタアニタスプリントチャンピオンシップ(G1)鼻差で制し、予定通り11月1日のBCスプリント(G1)に向かうことになった

By Jon Lees

(関連記事)海外競馬ニュース2014年No.38「香港ジョッキークラブ、米国への遠征馬のラシックス使用を容認せず(香港)

[Racing Post 2014年9月10日「BHA will not follow strict HK Lasix rule」]